切断機・溶接機などを手がける小池酸素工業(証券コード6137)は10月15日、10月5日に認識したサイバー攻撃について第3報を公表し、社内環境から流出した疑いのある情報の電子ファイルが、インターネット上で公開されていることを確認したと明らかにした。被害を受けたサーバーの一部には個人情報も保管されていたため、個人情報保護委員会に情報漏えいのおそれがある事案として報告した。
事案の詳細
同社は10月5日にサイバー攻撃を受けた可能性を認識し、翌6日に第1報を公表していた。第1報の時点では、被害拡大を防ぐ措置を取ったうえで、外部の専門家や警察と連携して影響範囲を調べているとしていた。
第3報によると、同社は社内ネットワークの接続制限を実施しており、その影響で一部のシステムに障害が生じ、一部の業務に支障が出ている。外部専門家の協力を得て進めていた原因と影響範囲の特定調査は完了し、現在は障害が発生しているシステムの復旧作業を進めている。
流出した疑いのある情報の具体的な内容と範囲は、引き続き調査中とされる。個人情報についても、漏えいの有無や範囲を調べている段階で、対象となる人数や項目は公表されていない。
連結業績への影響は軽微と見込んでいるが、2027年3月期第2四半期の決算発表日程への影響については精査中としている。攻撃の種類(ランサムウェアかどうか)や攻撃者については、同社の発表では明らかにされていない。
影響と背景
盗み出したデータをインターネット上(いわゆるリークサイトなど)で公開するのは、ランサムウェア攻撃グループが身代金の支払いを迫る際によく使う手口である。「暗号化による業務停止」と「データ公開の脅し」を組み合わせる二重脅迫と呼ばれるもので、データが公開された段階では、取引先や顧客の情報が第三者の手に渡っている前提で対応を考える必要がある。
製造業では、図面や見積もり、取引先とのやり取りなど、自社だけでなく取引先にも関わる情報を多く扱う。2026年秋は国内企業の情報漏えいの公表が相次いでおり、一社への侵入が取引先にも波及する構造については「一つの侵入が何十社にも波及する――サプライチェーン経由の情報漏洩が急増する理由」で解説している。
対策・今後の展望
- 取引先・関係者の立場で:同社からの今後の発表を確認するとともに、同社を名乗る不審なメールや、振込先の変更を求める連絡などには注意したい。流出した取引情報を悪用したなりすましメールは、情報公開の後に増えやすい。
- 同業の製造業の立場で:リモート接続機器(VPN装置など)の脆弱性対応と多要素認証、サーバーのバックアップをネットワークから切り離して保管しているかを点検する。
- 「公開された」後の対応を決めておく:データが公開された場合に、誰が内容を確認し、どの取引先・個人へ、どの順番で連絡するかを、事前に手順として決めておく。
企業が見直すべき対策の全体像は「情報漏洩ラッシュで企業が今すぐ見直すべき7つのセキュリティ対策」で整理している。
CSRIからの現場アドバイス
【現場で何が起きているか】CSRIが支援する中小の製造業でも、侵入の入口がVPN装置やリモートデスクトップだった例は多く、気付いた時にはファイルサーバーのデータがすでに持ち出されていた、というケースが目立ちます。暗号化される前の「持ち出し」の段階で気付けるかどうかが、被害の大きさを分けます。
【平易な解説】今回は「盗まれたかもしれない」から一歩進み、「盗まれたとみられるファイルが実際にネット上に出ている」ことが確認された段階です。何が含まれているかの確認には時間がかかるため、関係する可能性のある人は、続報が出るまでの間も不審な連絡に注意する必要があります。
【今週中にできること】自社のVPN装置やファイアウォールのファームウェアが最新か、管理者アカウントに多要素認証がかかっているかを確認してください。あわせて、ファイルサーバーから外部への大量のデータ送信を検知できる仕組み(EDRやネットワーク監視)があるかを点検します。仕組みがない場合は、少なくとも夜間・休日の大量通信をログで確認できるようにしておくと、早期発見につながります。
参照: 小池酸素工業「当社に対するサイバー攻撃に関するお知らせ(第3報)」(2026年10月15日) / 日経会社情報DIGITAL(適時開示) / セキュリティ対策Lab