認証局eMudhraの中間証明書8件、秘密鍵が1秒未満で復元可能 GoogleやMozillaなどが緊急遮断

インドのデジタルトラストサービス企業eMudhraが運営する認証局(CA)の中間証明書8件について、署名に使う秘密鍵が第三者でも公開証明書から容易に復元できる状態にあったことが判明した。Mozillaが2026年10月20日(現地時間)に公式ブログで公表し、Google、Apple、Microsoft、Cloudflareなども対応を明らかにした。

事案の詳細

問題となったのは、eMudhraが発行した中間CA証明書8件の秘密鍵だ。これらの鍵は暗号学的に十分な乱数ではなく、値が256未満の整数になっていたため、公開証明書から最大256通りを試すだけで復元できる状態だった。セキュリティ研究者のScott Helme氏は、8件すべての秘密鍵をノートPC上で復元し、8件すべてを1秒もかからずに復元できたと報告している。

影響を受けた8件は、eMudhraの「B」および「C」シリーズに属するP-384の中間証明書で、Webサイト向けTLS証明書を発行するものが6件、コード署名に使われるものが2件含まれる。証明書名は、EM-OV-TLS-CA-G3C、EM-EV-TLS-CA-G3C、EM-OV-CS-CA-G3B、EM-EV-TLS-CA-G3B、EM-OV-TLS-CA-G3B、EM-DV-TLS-CA-G3B、EM-DV-TLS-CA-G3C、EM-OV-CS-CA-G3Cとされている。

これらの中間証明書の秘密鍵を悪用すれば、正規の認証局から発行されたように見えるWebサイト証明書やコード署名用証明書を作成し、任意のWebサイトへのなりすましや不正なソフトウェアの署名につなげられる可能性がある。

eMudhraは2026年10月20日に声明を出し、影響は2025年4月の鍵生成作業で作成された特定の中間証明書8件に限られると説明した。ルート証明書の秘密鍵や、その他の中間証明書には影響しないとしている。現時点で、これらの鍵を使って不正な証明書が実際に発行・悪用されたかどうかの詳細は不明だ。

報告を受けたMozillaは、3時間足らずで失効証明書リスト「OneCRL」を通じ、通常設定のFirefoxで該当証明書を遮断した。Google Chromeは10月17日から8件のブロックを開始し、Appleは10月19日、Microsoftは10月20日に対応した。主要ブラウザでは既に遮断が進んでいる一方、ブラウザ以外のソフトウェアでは更新や個別対応が必要になる場合がある。

影響と背景

中間証明書は、ルート証明書とWebサーバー証明書やコード署名証明書をつなぐ信頼の連鎖の一部だ。中間証明書の秘密鍵が第三者に復元されれば、その中間CAが発行できる証明書を不正に作成できるため、Webサイトのなりすましやソフトウェアの真正性確認に影響する。

今回の問題は、暗号アルゴリズムそのものの破綻ではなく、2025年4月の鍵生成時に極端に弱い秘密鍵が作成されたことに起因する。eMudhraによれば、同じ作業では本来の強い鍵に加えて弱い鍵が生成されていた。対象となる8件は、1件の鍵が4、その他も237以下の整数で、通常想定される秘密鍵の強度を大きく下回っていた。

Google、Mozilla、Apple、Microsoftなどが相次いで遮断したのは、証明書チェーンを信頼する利用者を個別に保護するためだ。ブラウザの信頼ストアや失効リストによる対応が進んでいるが、独自の証明書検証機能を持つアプリケーション、組み込み機器、サーバー製品などでは、製品側の更新状況によって影響が残る可能性がある。

対策・今後の展望

企業や組織は、eMudhraの中間証明書8件を含む証明書チェーンを自社のWebサイト、VPN、メール、API、業務システム、コード署名環境で使用していないか確認する必要がある。該当する場合は、証明書の失効・再発行や、製品ベンダーが示す更新手順を速やかに適用する。

  • 自社のWebサイト、VPN、メール、API、業務システムで利用する証明書の発行元と中間証明書を確認し、対象8件に該当する場合は証明書を更新・差し替えする。
  • ブラウザ、OS、サーバー、セキュリティ製品、組み込み機器を最新状態に保ち、証明書の失効情報や信頼ストアの変更を反映させる。
  • コード署名を利用している場合は、対象の中間証明書で署名されたソフトウェアや更新パッケージがないかを確認し、必要に応じて署名のやり直しや検証を行う。
  • 外部サービスや委託先について、対象証明書の利用有無、影響範囲、証明書更新の完了状況、復旧手順を確認し、社内の問い合わせ窓口と対応手順を一本化する。
  • 独自の証明書検証を行うアプリケーションや機器では、ブラウザとは別に失効処理や信頼ストア更新への対応が必要か確認する。

CSRIからの現場アドバイス

【現場で何が起きているか】証明書の有効期限を管理していても、どの中間証明書から発行されたかまで把握できていない企業は少なくありません。今回のような失効や遮断が発生すると、対象サービスへの接続失敗やコード署名の検証エラーが突然発生する可能性があります。MDRを利用している場合も、検知後に証明書チェーンを確認できる台帳や監視体制がなければ、原因の切り分けに時間がかかります。

【平易な解説】会社の身分証を作る発行元の印鑑が、公開情報から誰でも短時間で再現できる状態に近い問題です。その印鑑で作られた身分証を信用できなくなるため、ブラウザやOSの提供元が該当する発行元を信頼の連鎖から外しました。

【今週中にできること】まず、自社サイト、VPN、メール、API、コード署名環境で使う証明書の発行元と中間証明書を確認し、運用台帳を更新してください。次に、保守会社やクラウド事業者へ、eMudhraの対象8件の利用有無と証明書更新状況を問い合わせます。最後に、端末、サーバー、ブラウザ、セキュリティ製品の更新が滞っていないか点検し、接続障害や署名検証エラーが発生した場合の連絡先と切り分け手順を整理してください。

参照: 認証局eMudhraの中間証明書、秘密鍵が「数ミリ秒」で復元可能な脆弱性 大手各社が緊急遮断

認証局eMudhraの中間証明書8件、秘密鍵が数ミリ秒で復元可能 GoogleやMozillaなどが緊急遮断
最新情報をチェックしよう!