ランサムウェアによる暗号通貨支払いが昨年は35%減少―チェイナリシス分析

 アメリカのブロックチェーン調査会社チェイナリシスによると、昨年2024年のランサムウエアによる暗号通貨支払いは約35%減少、2023年の記録的な12億5,000万ドルから8億1,355万ドルに減少し、2022年以来初のマイナスになったということです。

暗号通貨の盗難被害額は21%増加

 ランサムウエアによる違法収奪が減少した要因についてチェイナリシスは、①被害者自身がバックアップによってデータを復元するケースが増えており支払いに至ったケースが全体の約30%にとどまったこと②ランサムウェア・アズ・ア・サービス(RaaS)で犯罪市場を支配していたLockBitのインフラがNCA(英国家犯罪対策庁)とFBI(米連邦捜査局)によって破壊され、LockBitランサムウェアへの支払いが急落したこと➂サイバー犯罪者側の戦術の変化を上げています。

 チェイナリシスによると、2024年にブロックチェーン上の不正なアドレスが受け取った暗号通貨の総額は速報値で409億ドルで、最終的には510億ドル程度になると予測しています。これはブロックチェーン上での取引全体の0.14%ということです。ランサムウェアによる不正取引が減少する一方、暗号通貨の盗難は22億ドルに達し前年比で約21%増加したということです。被害の多くは分散型金融(DeFi)サービスで、秘密鍵の侵害が43.8%を占めているということです。北朝鮮ハッカーによる盗難額は13億4000万ドルにのぼり盗難額全体の61%を占めているということです。

 国際的な犯罪グループが暗号通貨を使用するケースが増えているということです。サイバー詐欺の温床となっているオンラインマーケットプレイスのHuione Guaranteeとそのベンダーは2021年以来、700億ドルを超える暗号通貨取引を行ってきたということです。チェイナリシスは、サイバーにかかるハッキングや恐喝、人身売買、詐欺などの犯罪を実行する個人やサービスのウォレットとそれら犯罪を支えるインフラの運営やツールの販売、資金洗浄を含むサービスを提供している人のウオレットの背景を総称して違法行為組織(illcit-actor org)と呼んでいるということなのですが、2024年に不正なアドレスが受け取った409億ドルのうち少なくとも108億ドルはこれら違法行為組織に流れているということです。中でもHuione Guaranteeは犯罪にかかわるさまざまな取引の場として成長し、その中には豚の屠殺詐欺などの詐欺、制裁の対象になっているロシアの取引所Garantexなどの組織、児童ポルノ、中国語のギャンブルサイトやカジノなどのオンチェーン取引が含まれるということです。

不正取引の63%はステーブルコインを使用

 チェイナリシスによるとブロックチェーン上の不正取引でBTC(ビットコイン)が主に使われていたのは2021年ころまでで、最近はステーブルコインが主流となっていて不正取引の63%はステーブルコインが使われているということです。これは、ステーブルコインがとりわけ不正な取引に使われているというわけではなく、最近の暗号通貨取引の傾向としてステーブルコインが主流となっていることから犯罪の場においてもステーブルコインを使うケースが増えたという環境の変化を反映したもののようです。一方でランサムウェアでの身代金要求やダークネットにおける取引においては依然としてBTCが使われるケースが多いということです。

 チェイナリシスは、以前はブロックチェーン上の違法取引はサイバー犯罪がメインだったが、現在は国家安全保障から消費者保護に至るまであらゆる種類の脅威の資金源として暗号通貨が使われているとし、「暗号通貨を使用する違法行為組織やネットワークの範囲は広がっており、その活動はますます複雑になっている」と指摘しています。

■出典

https://www.chainalysis.com/blog/2025-crypto-crime-report-introduction/

 

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