アメリカのブロックチェーン分析企業、チェイナリシスによると、2021年7月から2022年6月までの間の日本の暗号資産市場での取引量は前期比113.2%増加したということです。チェイナリシスは日本の暗号資産市場の成長について、DEX(Decentralized Exchange、分散型取引所)の伸びを指摘しています。
政府規制で中国市場は31.1%縮小
チェイナリシスがこのほど発表した「The 2022 Geography of Cryptocurrency Report」によると、2021年7月から2022年6月までの1年間に東アジアで取引された暗号資産がもっとも多かった国・地域は中国、次いで韓国、日本、香港、モンゴル、マカオの順番でした。東アジア全体の取引量は世界の取引量の13%弱にとどまり、前期比からの伸びは4%となり、前期は世界で3番目に大きい暗号資産市場だった東アジアですが、今期は4番目へと後退したということです。
こうした背景には韓国や中国での市場が縮小したことがあり、特に中国は31.1%も縮小したということです。中国での暗号資産の取引が減ったのは、中国政府が2021年5月にマイニングを禁止し、さらにすべての暗号資産取引を禁止したことが要因です。中国人民銀行(PBOC)は声明で、暗号資産関連の事業活動は違法な金融活動だと明言しています。
そうした中、日本市場は前期比113.2%と大きく伸びたということです。日本市場の成長の要因としてチェイナリシスは、中国政府による暗号資産の取り締まりにより中国市場から日本市場に取引が移ったことに加え、日本でDeFi(分散型金融)が受け入れられていることを指摘しています。チェイナリシスによると、東アジア市場全体でのDeFiの取引量は全体の28% を占めるにとどまっており、他地域と比べて低いということですが、日本市場では DeFiトランザクション量が韓国の 567 億ドルのほぼ 2 倍あり、中国の 676 億ドルに近いということです。日本でDeFiが受け入れられている理由についてチェイナリシスは、NFTの人気と今後の成長の可能性、さらに質の高いアニメやコミック、ビデオゲームなどの存在をあげ、今後の日本でのDeFiの動向に注目しています。
一方、政府の規制により大きく減少した中国での暗号資産取引ですが、チェイナリシスによると、中国での取引量は依然として世界第10位を占め、政府による規制後に減少したマイニングも再び行われるようになっていて、暗号資産の取引も回復しつつあるということです。
もっとも暗号資産が使われているのはベトナム
さらにチェイナリシスの調査によると、世界でもっとも暗号資産が使われている国はベトナムだということです。2020年に実施された調査ではベトナムでは消費者の21%が暗号資産を使用または所有していると報告されているということです。
東南アジアの国々ではブロックチェーンベースのゲームが人気を博しており、中でもトップの収益をあけでいるP2EゲームのAxie Infinityはホーチミン市を拠点としており、その成功によりベトナムではブロックチェーンゲームのスタートアップ企業が増えているということです。一方で今年3月にはAxie InfinityのサイドチェーンであるRonin Networkがハッキングされイーサリアム17万3600EH(5億9460万米ドル)が盗まれる事件も発生、FBI(米連邦捜査局)は北朝鮮のハッキンググループ、LazarusやAPT38が関与している可能性を指摘しています。
■出典
https://blog.chainalysis.com/reports/2022-global-crypto-adoption-index/