最大のアングラ(闇)市場と言われ犯罪の温床となったHydra(ヒドラ)は2022年に閉鎖されましたが、Hydraを上回る巨大な犯罪市場がアジアで成長を続けているようです。イギリスを拠点とするブロックチェーン分析企業のEllipticによるとHuione Guaranteeというテレグラムペースのオンラインマーケットでは犯罪にかかる取引が行われており、取引総額は少なくとも240億ドルにのぼり最大の違法マーケットだということです。
暗号資産の流通、Hydraを上回る
このマーケットは昨年7月にEllipticのレポートが出た後、Huione GuaranteeからHaowang Guaranteeに名称を変更したようですが、Ellipticによると実態は何も変わっていないようです。Hydraと若干異なるのは、表向きは正規なオンラインマーケットとして存在しており、実態としてサイバーを含む犯罪にかかる取引の場になっているということのようです。オンラインギャンブルで使用されるテレグラムボットを通じてマネーロンダリングとみられる約60億ドルの暗号資産が流通しており、これはHydraの50億ドルを上回るということです。Huione Guaranteeとそのベンダーが使用する暗号資産のウォレットには総計240億ドルが入金されており、毎月の流入額は増加しており市場のユーザー数は90万人以上にのぼっているということです。
Hydraは不正薬物売買の違法マーケットとして成長した経緯がありましたが、EllipticによるとHuione Guaranteeが違法マーケットとして成長を続けている背景にはこのマーケットがサイバー詐欺の温床になっている実態があるようです。この違法マーケットでは「豚の屠殺詐欺」を行うための様々なサービスが得られ、東南アジアの犯罪者たちが多く利用していることから市場規模が拡大しているということです。豚の屠殺詐欺とはソーシャルエンジニアを使った暗号資産詐欺で、最初はSNSなどで知り合い、関係を深める中で暗号資産への投資を持ち掛けて金銭をだまし取る手法のようです。こうした詐欺行為は中国で「杀猪盘(さっちょんばん Sha Zhu Pan)」と呼ばれて盛んに行われていたものが東南アジアの犯罪組織に拡大してきた経緯があるようです。
人身売買被害者にサイバー詐欺行為を強要か
さらに深刻なのが、豚の屠殺詐欺を実際に行っているのは人身売買の被害者だとみられていることです。中国と接するミャンマーやラオス、さらにタイやカンボジアなどに人身売買の被害者を監禁している刑務所のような監禁施設があると言われ、そうした施設の中から被害者たちが犯罪グループの指示を受けてサイバー詐欺行為を行っていると言われています。少し前に日本でもネットにおける投資詐欺が問題化しましたが、暗号資産投資詐欺にはアジアの犯罪グループが関与している実態があり、それがHuione Guaranteeの拡大につながっているということです。
Google Cloud Securityの2025年のサイバーセキュリティ予測「Cybersecurity Forecast2025」は「アジアの犯罪組織は現在、マルウェア、ジェネレーションAI、ディープフェイクなどのテクノロジーを取り入れて、マネーロンダリングのニーズに応える新しいビジネスモデルを確立しています」と指摘しています。Ellipticの最近のレポートによると、Huione Guaranteeは米ドル建てステーブルコイン、ブロックチェーン、暗号資産取引所、メッセージングアプリなど、さまざまな暗号資産関連の製品・サービスをリリースしているということです。
■出典
https://www.elliptic.co/blog/cyber-scam-marketplace
https://www.elliptic.co/blog/huione-largest-ever-illicit-online-marketplace-stablecoin