ランサムウェアは、企業や個人にとって非常に深刻な脅威です。感染すると業務が停止したり、データが漏洩したり、金銭的な損失を招く可能性があり、大きな影響を及ぼします。特に最近では攻撃手法が高度化し、従来のセキュリティ対策では防ぎきれないケースも増えてきています。
本記事では、ランサムウェアの主な感染経路と最新の攻撃傾向を解説し、効果的な防止策についても紹介します。
また、万が一感染してしまった場合には、専門のフォレンジック調査会社への相談がおすすめです。
本ページには広告が含まれています。本コンテンツ経由で商品・サービスの申込みがあった場合、企業から送客手数料を受け取ることがあります。 |
ランサムウェアの主な感染経路
ランサムウェアはさまざまな手段で侵入し、被害を引き起こします。
主な感染経路として、以下の方法が挙げられます。
- VPNの脆弱性を狙った感染
- リモートデスクトップ(RDP)経由の感染
- フィッシングメールやAIを活用した標的型攻撃
- 悪意のあるWebサイトを経由したランサムウェア感染
- USBメモリや外部デバイスを介した感染
- ソフトウェアやファイルのダウンロード通じた感染
VPNの脆弱性を狙った感染
VPN機器の脆弱性を悪用した攻撃は依然として多く報告されています。2024年のデータによると、ランサムウェア感染の約55%がVPN機器の脆弱性を突かれた攻撃で、2023年の63%から減少したものの、依然として重要な感染経路です。

VPNは、外部から企業ネットワークに安全に接続する技術で、リモートワークや拠点間の通信に活用されています。しかし、VPN機器の脆弱性や設定ミスが原因で攻撃者に侵入を許してしまうケースが多発しています。VPNやRDPを介したランサムウェア感染は、脆弱な認証情報やセキュリティ設定の不備が主な要因です。
攻撃者は、未修正の脆弱性や弱いパスワードを悪用してネットワークに侵入します。ネットワークからの侵入を防ぐためには、定期的な脆弱性スキャンの実施、強固なパスワードの使用、多要素認証(MFA)の導入が不可欠です。
リモートデスクトップ(RDP)経由の感染
RDPを介した感染は、警察庁のデータによると2024年は31%を占めており、2023年に比べて13%増加しています。テレワーク機器の脆弱性や弱い認証情報を悪用した攻撃が多発しています。
RDPは、遠隔地にあるPCをインターネット経由で操作する技術で、リモートワークに広く利用されていますが、攻撃者に狙われやすい経路の一つです。
攻撃者は、RDPの脆弱性や盗まれた認証情報を悪用し、遠隔操作を通じてランサムウェアを拡散させます。特に、設定が不十分で認証情報が弱い場合、侵入されるリスクが高まります。侵入を防ぐためには、強固なパスワードの使用、多要素認証(MFA)の導入、アクセス制御の強化、定期的な脆弱性スキャンの実施が不可欠です。
フィッシングメールやAIを活用した標的型攻撃
フィッシングメールは、ランサムウェア感染の代表的な手口の一つです。攻撃者は、配送通知や請求書を装ったメールを無差別に送信し、受信者に違和感なく悪意のあるリンクをクリックさせたり、添付ファイルを開かせたりすることで感染を引き起こします。
さらに、近年ではAIを活用した標的型攻撃が増加しています。攻撃者は特定の個人や企業の情報を収集し、対象ごとに最適化されたフィッシングメールを作成することで、より高い確率で標的を欺こうとします。従来の手法よりも見分けがつきにくく、通常のセキュリティ対策だけでは防ぎきれないケースも増えているため、慎重な対応が求められます。
悪意のあるWebサイトを経由したランサムウェア感染
攻撃者は、不正なサイト上で偽のダウンロードボタンやソフトウェア更新メッセージを表示し、利用者に悪意のあるファイルをダウンロードさせようとします。結果、ランサムウェアが意図せずインストールされ、感染するリスクが高まります。
特に、不正な広告やポップアップをクリックすると、ランサムウェアが自動的にダウンロードされる可能性があります。また、P2Pファイル共有サイトや違法ダウンロードサイトでは、正規のソフトウェアやアプリケーションに見せかけたランサムウェアが配布されていることがあり、注意が必要です。
さらに、フリーソフトを装った不正プログラムが拡散されるケースも確認されています。正規のソフトウェアに見せかけた悪意のあるプログラムは、利用者が気づかないうちに実行されることが多く、被害が拡大する原因となります。
USBメモリや外部デバイスを介した感染
USBメモリや外付けハードディスクなどの外部記録メディアを介して、ランサムウェアが拡散するリスクがあります。ランサムウェアに感染した端末に感染ファイルが保存されている場合、接続した端末でマルウェアが自動的に実行され、他のシステムにも被害が広がる可能性があります。
特に、WindowsのAutoRun(外部デバイス接続時に自動でプログラムを実行する機能)の自動実行が有効になっていると、使用者が意図せずに感染ファイルを開いてしまうリスクが高まります。また、企業内の共有ストレージに接続することで、ネットワーク全体に感染が拡大するケースも報告されています。
ソフトウェアやファイルのダウンロード通じた感染
ソフトウェアやファイルのダウンロードを通じたランサムウェア感染も主要な感染経路の一つです。特に、正規ソフトを装った偽アプリや、改ざんされた配布サイト、さらには偽のアップデート通知などを使った手口が増加傾向にあります。
主な感染手口
- 無料の画像編集ソフト等を装ったマルウェアの配布…無料の偽ソフトのファイルを実行させ、ランサムウェアを感染させる
- 正規サイトや配布元の改ざん…サイトの脆弱性(CMSの脆弱性やFTPの乗っ取りなど)を突かれて改ざんされ、ランサムウェア入りのインストーラーが配置される
- 偽アップデート通知による誘導…「Chromeのアップデートが必要です」などの偽ポップアップでユーザーを騙し、ランサムウェアが含まれたアップデートファイルをインストールさせる
攻撃者は、ユーザーが「安全だ」と思い込むポイントを突き、意図的にマルウェアをダウンロード・実行させます。
以上がランサムウェアの主な感染経路です。ランサムウェアは感染してもしばらくはシステム内に潜伏していることもあります。セキュリティソフトで不正アクセスを検知したといった些細な異常から感染が発覚することがあるので、心配な場合は専門家に相談しましょう。
ランサムウェア感染経路を特定するには
ランサムウェアの感染の原因を特定することで、再発防止や被害の最小化が可能になります。以下では、感染経路を特定するための具体的な調査方法を解説します。
- システムログを分析する
- 外部記録メディアを調べる
- メールを調査する
システムログを分析する
感染の痕跡や異常動作を示すログ情報を確認することで、どの経路から侵入されたのかを把握できます。OSのイベントログやセキュリティソフトの記録が有効です。
システムログの確認手順
- Windowsの「イベントビューア」を開く
- 「Windowsログ」→「セキュリティ」を選択
- 不審なログオンやアクセス試行を確認する
外部記録メディアを調べる
USBや外付けHDDなどの記録媒体を通じてランサムウェアが持ち込まれることがあります。使用履歴や接続時間を調査することで、感染経路の特定に繋がります。
外部記録メディアの調査手順
- 「デバイスマネージャー」から接続履歴を確認
- Windowsの「レジストリ」でUSB接続の記録を確認
- 接続タイミングと感染発生時間の関係を調べる
メールを調査する
感染の多くはフィッシングメールや不正添付ファイルが原因です。送受信履歴や添付ファイルの種類を確認し、感染元を特定します。
メール調査手順
- メールサーバで送信元IPや添付ファイルの種類を確認
- 該当メールを開いた時間と感染時間を照合
- 類似メールの受信履歴を全社的に確認
【解説】ランサムウェアの感染確認方法は?被害と初動対応を紹介>
最新のランサムウェア感染経路の傾向
ランサムウェアの感染経路は年々変化しており、攻撃手法も巧妙化しています。
以下は、現在確認されている最新の感染経路です。
- クラウドストレージを狙うサイバー攻撃
- インフォスティーラーマルウェアの活用
- ゼロデイ攻撃から再現性の高い侵入手法への移行
クラウドストレージを狙うサイバー攻撃
近年、クラウドストレージがランサムウェアの主要な標的となっています。特にAmazon Web Services (AWS) S3 や Microsoft Azure Blob Storage などのクラウドストレージは、大規模なデータを簡単に管理できる反面、攻撃者に狙われやすい状況にあります。
攻撃者の手口には以下のようなものがあります。
- S3 バケットの過剰な権限を悪用し、データを暗号化・窃取
- AWS KMS のキー削除猶予期間(7日間)を利用し、データ削除をネタに脅迫
- Azure Storage Explorer など正規ツールを使い、クラウドからデータを盗み出す
インフォスティーラーマルウェアの活用
SpyCloudの研究者によると、ランサムウェア攻撃の増加は、インフォスティーラー(情報窃取型)マルウェアや「デジタルアイデンティティの露出」によって引き起こされています。
また、ランサムウェアの運営者はインフォスティーラーによって流出したセッションクッキーなどのデータを悪用するケースが増加しており、従来の防御策だけではもはや十分ではないことが明らかになっています。
ゼロデイ攻撃から再現性の高い侵入手法への移行
2024年には、単一の脆弱性を悪用した大規模なランサムウェア攻撃は確認されませんでした。代わりに、MFA未導入のVPNやゲートウェイアカウントの脆弱な認証情報を標的とする攻撃が急増しています。攻撃者は、一度成功した手法を繰り返し利用できる「再現性の高い侵入手法」を採用する傾向が強まっており、ゼロデイ攻撃に依存せず、侵入成功率の高い手法へ移行しています。
もしランサムウェア感染の疑いがある場合、早急に専門の調査会社に相談することがおすすめです。
ランサムウェアに感染したら企業が行うべき対処法
ランサムウェアに感染した場合は、冷静に対応することが重要です。
まずはネットワークを切断し、不審な動作や暗号化されたファイルがないかを確認し、感染範囲を特定します。社内での対応が難しい場合は、サイバー専門家に相談し、感染経路の特定や被害範囲の調査を依頼することをおすすめします。
以下に、ランサムウェア感染時に企業が取るべき対処法を紹介します。
- ネットワークを遮断する
感染端末を即座にネットワークから切断する。 - 警察や行政へ通報する
サイバー犯罪として警察や行政機関へ迅速に報告し、適切な指示を受ける。 - 社内で対応策を実施する
感染端末の特定を行い、影響範囲の初期調査を実施する。 - 感染範囲を確認する
ランサムウェア感染を受けたファイルが復旧可能かも含めて確認する - 復号ツールを探す
公的機関やセキュリティ企業の提供ツールで復旧を検討。 - バックアップをもとにシステムを復旧する
バックアップがあればクリーン環境へ戻す。 - 専門家へ相談する
フォレンジック調査を依頼し、再発防止策を立てる。
さらに詳しい対処方法については、以下の記事をご参考ください。
編集部おすすめ調査会社:デジタルデータフォレンジック(おすすめ度)
ランサムウェアを感染を疑いがある場合、調査してくれる専門会社をご紹介します。
こちらの業者は、対応件数が39,000件を超え、民間の調査会社でありながら官公庁や大手企業との取引実績も多く信頼できるため、幅広い調査に対応していておすすめです。
まずは無料で相談・見積りまで行ってくれるようなので、不安な方は一度相談してみるとよいでしょう。

費用 | ★見積り無料 まずはご相談ください |
---|---|
調査対象 | PC、スマートフォン、サーバ、外付けHDD、USBメモリ、SDカード、タブレット など |
サービス | ハッキング・不正アクセス調査、マルウェア・ランサムウェア感染調査、サイバー攻撃被害調査、退職者調査、労働問題調査、社内不正調査、情報持出し調査、横領着服調査、パスワード解除、データ改ざん調査、データ復元、デジタル遺品、離婚問題・浮気調査 など |
特長 | ✓累積ご相談件数39,000件以上 |
デジタルデータフォレンジックは、国内トップクラスの調査力を有しており、累計3万9千件以上の豊富な実績があります。
規模が大きな調査会社でありながら、ハッキング調査などの実績もあるようですし、24時間365日の相談体制、ニーズに合わせたプランのカスタマイズなど、サービスの利用しやすさも嬉しいポイントです。
相談・見積りを“無料“で行っているので、まずは電話かメールで問合せをしてみることをおすすめします。
↓調査項目・プラン・料金などは公式サイトへ↓
ランサムウェア感染を防ぐための予防策
ランサムウェアは企業にとって深刻な脅威ですが、適切な対策を取ることで未然に防ぐことが可能です。以下の予防策を徹底しましょう。
最新のセキュリティソフトの導入
信頼性の高いセキュリティソフトを導入することで、リアルタイムでの脅威検知とブロックが可能になります。自動スキャンや脅威定義ファイルの自動更新機能が備わった製品を選定しましょう。
導入手順
- 業務環境に対応したセキュリティソフトを選定
- 正規サイトから最新版をダウンロード
- インストール後、リアルタイム保護を有効化
OSやVPNを最新版へアップデートする
OSやVPNソフトに存在する脆弱性は、攻撃者に悪用されるリスクがあります。常に最新の状態に保つことで、既知の脆弱性をふさぎます。
アップデート手順
- Windowsの「設定」→「更新とセキュリティ」を開く
- 「更新プログラムのチェック」で最新状態を確認
- VPNクライアントソフトも開発元公式サイトからアップデート
定期的なバックアップを取得する
ランサムウェアに感染すると、重要データが暗号化されてアクセス不能になります。バックアップがあれば、感染後でも業務の継続や復旧が可能です。クラウドや外付けHDDなど、複数の方法を併用するとより安全です。
バックアップ取得手順
- 重要データを分類・整理
- クラウドストレージや外付けHDDを用意
- 定期的にスケジュールを決めて自動バックアップを設定
多要素認証を設定する
IDとパスワードだけでは不正アクセスのリスクがあります。多要素認証(MFA)を導入すれば、認証のセキュリティが飛躍的に向上し、攻撃者による侵入を防ぐ効果があります。
MFA設定手順
- Google AuthenticatorやMicrosoft Authenticatorをインストール
- 各アカウントの「セキュリティ設定」から多要素認証を有効化
- QRコードをスキャンし、確認コードを入力して設定完了
USB・Bluetoothを無効化する
外部デバイス経由での感染やデータ流出リスクを低減するため、USBポートやBluetoothの制限が有効です。特に社内PCでは使用を制限し、必要時のみ一時的に許可する運用が望ましいです。
USB・Bluetoothを無効化する手順
- Windowsの「デバイスマネージャー」を開く
- 「ユニバーサル シリアル バス コントローラー」→使用しないポートを右クリックして「無効にする」
- Bluetoothも同様にデバイス一覧から無効化
メールやWebサイトのフィルタリング機能を導入
不正リンクや危険な添付ファイルを含むメールは、フィルタリング機能により事前にブロック可能です。安全でないWebサイトの閲覧も制限され、感染リスクを低減できます。
フィルタリング設定手順
- 法人向けメールセキュリティソフトを導入
- 迷惑メールや危険URLを自動検知・隔離する設定を有効に
- Webフィルタリングサービスを社内ネットワークに適用
従業員にセキュリティ教育を行う
技術的対策だけでなく、人的ミスの防止も重要です。定期的な社内研修やフィッシング訓練により、従業員のセキュリティ意識を高め、インシデントの発生を抑制できます。
教育手順
- 月1回の定期研修を実施し、最新の攻撃手口を共有
- 実際のフィッシングメールを用いた演習を行う
- ITリテラシー向上のためのEラーニングを導入
まとめ
ランサムウェアは日々進化しており、企業や個人に深刻な影響を与えます。感染を防ぐためには、基本的なセキュリティ対策を徹底し、定期的な監視と対策を行うことが重要です。もし感染が疑われる場合は、速やかに専門の調査会社に相談し、適切な対応を取るようにしましょう。