社内での不正行為やコンプライアンス違反が疑われたとき、最も重要なのは証拠の確保です。しかし、調査の進め方を誤ると、証拠が失われたり、法的に無効とされてしまうリスクもあります。そこで注目されているのが、専門的な手法でデジタルデータを解析する「フォレンジック調査」です。
本記事では、法務・コンプライアンス担当者が押さえておくべき証拠の種類や収集の基本、調査手順、注意点までを詳しく解説します。
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コンプライアンス違反の主な証拠と収集手法
コンプライアンス違反を立証するためには、確実かつ信頼性の高い証拠が求められます。この章では、法的に有効とされる主な証拠の種類と、実際の収集手法について解説します。
主な証拠の種類(書類・デジタルデータ・録音・映像など)
コンプライアンス違反の立証には、さまざまな種類の証拠が活用されます。以下はその代表的な例です。
- 業務日報や帳票、電子メール、チャットログなどの文書記録
- パソコンやスマートフォン内のファイルや操作履歴
- 会議中の会話などを録音した音声データ
- 監視カメラ映像や画面録画といった映像記録
これらの証拠は、それぞれ取得方法や保全方法に注意点があります。適切に取得しないと、裁判などで証拠能力を否定されることもあるため、専門的な知識が不可欠です。
証拠収集の基本手順とポイント
証拠収集では、「改ざんされていないこと」と「取得経路が正当であること」が重要です。そのため、次のような基本手順を踏む必要があります。
- 問題が発覚した段階で、対象端末や書類の使用を停止させる
- 原本には一切手を加えず、フォレンジックイメージ(セクタ単位の完全コピー)を取得し、保全用の媒体に厳重に保管する
- 収集日・収集者・収集方法などを記録したログを必ず残す
- 必要に応じて、第三者機関(フォレンジック専門会社)に調査を依頼する
特にUSBメモリやパソコン内のファイル、ログ情報などのデジタル証拠は簡単に削除・改ざんされやすいため、慎重な取り扱いが求められます。
証拠保全で失敗しないための注意点
フォレンジック調査において、証拠となるデータの完全性(改ざんされていないこと)と信頼性(真正性があること)を確保することは極めて重要です。
以下のような行為は、第三者から「証拠の改ざん・破壊」と受け取られる可能性があり、訴訟や社内調査において証拠能力(証拠としての有効性)を損なうおそれがあります。
- USBメモリ等の外部メディアによるデータ移動
- オリジナルファイルの直接閲覧や編集
- タイムスタンプ(ファイルの更新日時)の変更行為
このようなリスクを防ぐためには、技術的対策が必須です。たとえば、Write Blocker(書き込み防止装置)を使用することで、調査対象のストレージに対する意図しない書き込みを物理的に防止できます。
また、データ取得時にはハッシュ値(SHA-256等)を記録し、後の改ざん有無の確認ができるようにしておくことが望ましいです。
証拠性のある状態でデータを保持・解析するためには、手順・機材・技術において正しい方法を選ぶ必要があることを、法務部門としても理解しておくことが重要です。
関連法規への配慮と適法性の確保
証拠保全や社内調査を行う際には、単に技術的に可能であるというだけでなく、法的に許される範囲で実施されるべきです。特に、以下の法律に関連するリスクに注意する必要があります。
- 個人情報保護法…調査対象に個人情報が含まれる場合、目的外利用や不必要な収集は違法となる可能性があります。
- 不正アクセス禁止法…アクセス権限のない端末・アカウントへの侵入は処罰対象となります。
- 労働法・労働契約法…従業員の私物機器や私的通信に関する調査は、過度な監視と見なされるおそれがあります
- 刑法(電磁的記録不正作出罪等)…データ改変が不正な意図を伴う場合、刑事責任を問われる可能性があります。
たとえば、従業員の私物スマートフォンに保存されている業務関連データを、本人の同意なく取得・分析した場合、プライバシー権の侵害や不正アクセスに該当する可能性があります。
このようなリスクを避けるためには、就業規則や個人情報取扱方針の中で、調査対象・範囲・方法を明文化し、従業員の事前同意を得ておくことが重要です。
また、調査の必要性・相当性を法的に説明できるよう、記録の保全や、社内の承認プロセスを経た上での実施が望まれます。
フォレンジック調査とは
フォレンジック調査とは、パソコンやスマートフォンなどのデジタル機器に残る操作履歴やログ情報を科学的に解析し、不正の痕跡や証拠を発見する専門的な調査手法です。
主に以下のコンプライアンス違反などにおいて実施されます。
- 退職者や従業員による機密情報の持ち出し
- 従業員による横領・着服などの不正行為
- 社内不正に伴うログの削除やアクセス履歴の証拠隠滅
- 上司・同僚によるパワハラや内部告発の証拠確保
従来の証拠収集は、物理的な書類や人の証言などが中心でしたが、フォレンジック調査ではメールの削除履歴やログイン記録の分析や、削除されたファイルの復元などを行い「デジタル上の見えない証拠」を正確に洗い出すことが可能です。
こうした高度な証拠分析は、専門的な設備とスキルが必要となるため、社内対応には限界があります。
内部対処の限界と外部依頼のタイミング
コンプライアンス違反の疑いが生じた際、初期対応や証拠収集を社内で進めるケースは多くあります。しかし、フォレンジック調査には高度な専門性と中立性が求められるため、すべてを内部対応で完結させることには限界があります。
以下は、内部対処だけでは不十分となる典型的なケースです。
- 不正アクセスやデータ改ざんなど、IT技術が関与する違反行為
- 社内関係者がコンプライアンス違反に関与している可能性がある場合
- 調査結果が訴訟・行政対応に使われる可能性がある場合
- 社内リソースや調査範囲に限界がある場合
以上を踏まえ外部のフォレンジック専門家に調査を依頼するかどうかは、以下の観点から判断するのが実務的です。
判断軸 | 検討ポイント |
---|---|
技術的難易度 | ログ解析、データ復旧、マルウェア解析が必要か |
利害関係 | 調査対象が経営層・法務部門・システム部門に関係しているか |
法的影響度 | 刑事・民事・行政の手続きに発展する可能性があるか |
内部体制 | 情報セキュリティ・法務部門の知見・人員は十分か |
時間的制約 | 証拠保全や初動調査を迅速に実施できる状況か |
フォレンジック調査の費用相場とは?期間や調査会社の選び方を解説>
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費用 | ★見積り無料 まずはご相談ください |
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調査対象 | PC、スマートフォン、サーバ、外付けHDD、USBメモリ、SDカード、タブレット など |
サービス | 情報漏洩調査、ハッキング・不正アクセス調査、マルウェア・ランサムウェア感染調査、サイバー攻撃被害調査、退職者調査、労働問題調査、社内不正調査、情報持出し調査、横領着服調査、パスワード解除、データ改ざん調査、データ復元、デジタル遺品、離婚問題・浮気調査 など |
特長 | ✓累積ご相談件数39,451件以上 ✓国際基準をクリアした厳重なセキュリティ体制(ISO認証、プライバシーマーク取得済) ✓警視庁からの捜査協力依頼・感謝状受領の実績多数 |
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まとめ
コンプライアンス違反の調査において、フォレンジック調査は「真実の解明」と「法的リスクの最小化」を両立させるための極めて重要な手段です。
しかし、調査を成功させるには、単に技術を使えばよいというものではなく、法的適正性・証拠能力・プライバシー保護といった観点を十分に理解した上での対応が求められます。
特に、将来的な訴訟や行政対応を見据えた証拠の収集・保存・分析を行うには、外部の専門家との連携が不可欠です。
自社で対応すべき範囲と、外部へ依頼すべきタイミングを見極め、早期に行動することが、企業リスクを最小限に抑える鍵となります。