不正会計の事例から学ぶ企業リスク管理 ― 原因・手口・対処法まで徹底解説

不正会計は、企業の信頼や存続に直結する深刻なリスクです。特に内部からの不正は外部からのサイバー攻撃以上に発見が遅れやすく、被害が拡大してから表面化するケースも少なくありません。

初動での対応を誤ると、証拠が消失する恐れがあり、再発防止策の検討や責任の所在を明確にすることが難しくなります。

そこで本記事では、代表的な不正会計の事例を起点に、企業が理解すべき主な原因や手口、初期対応の要点までを整理し、リスク管理体制の見直しに役立つ情報を解説します。

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不正会計の対象となる主なインシデント

ここでは、実際に問題となった不正会計の事例を紹介し、どのような背景や手口があったのかを理解することで、予防や対応のヒントを整理します。

  • 株式会社オリンパスの事例
  • 東芝の事例
  • 株式会社オルツの事例

株式会社オリンパスの事例

オリンパスの不正会計問題は、2011年に元社長による内部告発を契機に明るみに出ました。過去のM&Aに関連する損失隠しが数十年にわたって行われていたもので、損失を回避するために複雑なファンドを使って不良資産を隠蔽する「飛ばし」と呼ばれる手法が使われていました。

社内の誰もが異常に気づいていたものの、経営陣の意向を理由に沈黙していたとされ、企業文化や内部通報制度の機能不全が深刻な問題として浮かび上がりました。結果として歴代経営陣の刑事告発や株価の急落など、企業に多大なダメージを与えました。

出典:日本経済新聞

東芝の事例

東芝では、2008年〜2014年にかけて、利益の過大計上が組織的に行われていた不正会計が発覚しました。特にインフラや半導体、PC事業などの部門で「チャレンジ」と呼ばれる過剰な利益目標が設定され、それを達成するために取引の期ずれや不適切な工事進行基準の適用などが行われていました。

第三者委員会の調査では、トップダウンによる過度なプレッシャーと、経営幹部による利益操作の指示が明らかとなりました。この不正により、約2,000億円超の利益水増しが判明し、上場維持への影響、ガバナンス改革、経営陣の刷新へと発展しました。

出典:東洋経済ONLINE

株式会社オルツの事例

株式会社オルツでは、2024年に売上の架空計上や費用の過小計上があったと報じられており、第三者委員会の調査によってAI開発事業における会計処理の不備が指摘されました。第三者委員会の調査報告書によると、AI開発事業における売上認識基準に不透明な点があり、契約書の未整備や検収書類の不備も確認されています。

経営陣が営業現場の数値を直接管理していたことや、会計処理の判断を一部のメンバーに依存していた点が、組織的なガバナンスの弱さとして問題視されました。この件では、当初の開示との乖離が著しく、上場審査に大きな影響を及ぼす結果となりました。

出典:日本経済新聞

不正会計の原因

不正会計が発生する背景には、企業内部の構造的・文化的な課題が潜んでいます。ここでは主な原因を整理し、どのような条件が不正を誘発しやすいのかを見ていきます。

  • 達成不可能な目標設定によるプレッシャー
  • 内部統制の不備とガバナンスの弱さ
  • 企業文化・倫理観の欠如

達成不可能な目標設定によるプレッシャー

売上や利益といった数値目標が現実離れしている場合、現場は達成のために不正な手段に頼るリスクが高まります。特に、短期の成果を強く求められる環境では、会計処理を操作して見かけの業績を良く見せようとする動機が生まれやすくなります。

内部統制の不備とガバナンスの弱さ

複数人によるチェック体制が機能していなかったり、会計処理を担当する部署に過度な権限が集中していたりすると、不正の発見や是正が遅れます。また、経営陣自身が関与していた場合には、監査部門や取締役会の機能不全も問題になります。

企業文化・倫理観の欠如

たとえ制度が整っていても、「上からの指示だから」「バレなければ問題ない」といった空気が蔓延していると、不正は組織的に拡大します。倫理観や内部告発の受け皿が機能していない企業では、リスクの兆候が放置されやすくなります。

不正会計の手口

不正会計にはいくつかの代表的なパターンがあります。ここでは、実際に過去の事例で用いられた主な手口を紹介し、内部監査やチェック時に注視すべきポイントを明確にします。

  • 売上の水増し
  • 売上の除外
  • 「期ずれ」処理
  • 循環取引
  • 押し込み販売

売上の水増し

実際には存在しない取引を架空で計上し、売上を過大に見せる手口です。帳簿上は売上が立っていても、入金の実態がない、仕入先と金額が一致しないなどの矛盾点が見つかることがあります。

売上の除外

損失や返品が発生する取引を意図的に帳簿に載せず、あたかも黒字であるかのように見せる手口です。売上計上基準の恣意的な適用や、期末調整によって操作されることが多く見られます。

「期ずれ」処理

売上や費用を本来の期ではなく、意図的に前倒しまたは後ろ倒しして記録することで、業績を都合よく見せる操作です。四半期や期末で発生することが多く、連続的な帳簿操作が疑われるサインになります。

循環取引

複数の企業間で商品やサービスの取引を行っているように見せかけることで、売上を捏造する手法です。資金の実態が伴わない取引や、契約書が形だけのものであるケースが典型です。

押し込み販売

取引先に無理に在庫を押し付け、売上として計上する手口です。実際には販売実績が伴わず、在庫が返品されたり、長期間倉庫に残っていたりすることで、後から売上の虚偽計上が発覚するケースもあります。

以上が不正会計の主な手口です。このような手口に心当たりがある場合や、少しでも不自然な取引に疑念を抱いた場合は、速やかに専門家への相談を検討しましょう。

不正会計が疑われる場合の対処法

不正の可能性に気づいた段階では、証拠を守りつつ、冷静に状況を整理することが最優先となります。社内対応で無理に調査を進めてしまうと、かえって証拠が消失する恐れがあるため、初期対応の基本を押さえておきましょう。

  • 社内での初期調査と情報収集
  • フォレンジック調査の導入による証拠保全と分析
  • 適切な情報開示とレピュテーションリスク対応

社内での初期調査と情報収集

まずは経理・財務部門を中心に、当該取引や帳簿に関する資料・ログ・関係者の証言を整理します。不正会計が行われた期間や不正に関連した部門を絞り込み、調査に必要なデータを非破壊の状態で保管しておくことが重要です。この時、社内での情報共有は最小限に抑えましょう。

フォレンジック調査の導入による証拠保全と分析

フォレンジック調査(デジタルフォレンジック)とは、パソコン・サーバ・メール・クラウド・各種ログなどのデジタル記録を証拠として保全・解析し、事実関係を客観的に再構成する専門調査です。目的は「いつ・誰が・どこから・何をしたか」を時系列で明らかにし、改ざんや削除の有無、外部送信や持ち出しの有無を証拠性を担保した形で確定することにあります。


会計不正では、帳簿や証憑の突合だけでは限界があり、証拠が消失する恐れがあるため、IT側の痕跡を丁寧にたどる必要があります。フォレンジックでは以下のような対象と手法で、紙の証憑だけでは見えない「操作の実態」を可視化します。

  • 端末・サーバの操作記録(削除・上書き・USB接続など)
  • メールやチャットの送受信記録
  • クラウドサービスの操作履歴(共有リンク・外部アクセス)
  • ネットワークログ(外部送信や私用クラウドの使用)
  • 証拠の改ざん防止(イメージ取得+ハッシュで証明)

ただし不用意に電源を落としてしまったり、端末が初期化されると調査が困難になる場合があります。フォレンジック調査を実施する際はすぐに専門家に相談して保全を実施しましょう。

適切な情報開示とレピュテーションリスク対応

社内外への説明が必要な場合には、早い段階から開示内容やタイミングを検討する必要があります。不正の全容が分からないまま情報を出すと、後から事実との乖離が生じ、かえって信頼を損なうリスクもあります。

特に株主・監査法人・監督官庁への説明では、整合性と一貫性が求められるため、事実確認が済んだ内容を、時期を見て戦略的に開示することが重要です。
混乱や誤解を避けるために、社内調査の結果やフォレンジック調査の結果などを根拠にした説明が不可欠です。

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まとめ

不正会計は、数値の粉飾という結果だけでなく、その背後にある「達成不能な目標設定」「統制不備」「倫理観の弱さ」といった組織課題が積み重なって起きます。売上の水増しや期ずれ、循環取引、押し込み販売などの典型手口は、証憑やログの突合で痕跡が残ることが多く、初動での証拠保全と第三者性のある検証が重要です。早い段階でリスクを可視化し、客観的事実に基づく説明と再発防止につなげることが、信頼回復への近道になります。

社内対応だけでは把握しにくい部分は、専門家の力を借りて記録を丁寧に辿ることが重要です。疑いの段階でも、証拠が残っているうちに相談しておくと、その後の説明と再発防止の精度が高まります。

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