不正会計は、企業の信頼や存続に直結する深刻なリスクです。特に内部からの不正は外部からのサイバー攻撃以上に発見が遅れやすく、被害が拡大してから表面化するケースも少なくありません。
初動での対応を誤ると、証拠が消失する恐れがあり、再発防止策の検討や責任の所在を明確にすることが難しくなります。
そこで本記事では、代表的な不正会計の事例を起点に、企業が理解すべき主な原因や手口、初期対応の要点までを整理し、リスク管理体制の見直しに役立つ情報を解説します。
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会計不正とは?まず押さえるべき基本知識
会計不正とは、企業が財務状況や業績を実態と異なる形で開示する行為を指します。代表的なものには、売上の水増し、費用の過少計上、損失の先送りなどがあります。
重要なのは、会計不正が単なる「数字の誤り」ではないという点です。
財務情報は投資家、金融機関、取引先にとって意思決定の基盤となる情報であり、その信頼性が損なわれれば企業経営そのものが揺らぎます。
特に上場企業の場合、会計不正は証券取引所の処分や行政対応、株価下落へ直結する可能性があります。一方、非上場企業であっても、金融機関との信用関係の毀損や取引停止など、実務上の影響は小さくありません。
財務報告不正が企業に与える影響
財務報告不正の影響は、短期的な損失にとどまりません。
むしろ問題となるのは、中長期的な信用の毀損です。
第一に、資金調達への影響です。決算の信頼性が疑われれば、金融機関の与信姿勢は厳格化し、資本市場からの資金調達も困難になります。
第二に、ガバナンス評価の低下です。会計不正は内部統制の機能不全を意味します。経営陣の責任問題に発展し、取締役の辞任や組織再編を余儀なくされるケースもあります。
第三に、レピュテーションリスクです。一度失われた信用の回復には長い時間と多額のコストが必要です。顧客・取引先・株主との関係性にも波及します。
整理すると、財務報告不正の主な影響は次の三点に集約されます。
- 資金調達力の低下
- 経営体制への打撃
- 社会的信用の毀損
会計不正は「発覚した時点」から問題が始まるのではありません。
その前段階で既に内部統制や企業文化に歪みが生じていることが多いのです。
だからこそ、会計不正は経理部門だけの問題ではなく、経営課題として位置付ける必要があります。
不正会計の対象となる主なインシデント
ここでは、実際に問題となった不正会計の事例を紹介し、どのような背景や手口があったのかを理解することで、予防や対応のヒントを整理します。
- 株式会社オリンパスの事例
- 東芝の事例
- 株式会社オルツの事例
株式会社オリンパスの事例
オリンパスの不正会計問題は、2011年に元社長による内部告発を契機に明るみに出ました。過去のM&Aに関連する損失隠しが数十年にわたって行われていたもので、損失を回避するために複雑なファンドを使って不良資産を隠蔽する「飛ばし」と呼ばれる手法が使われていました。
社内の誰もが異常に気づいていたものの、経営陣の意向を理由に沈黙していたとされ、企業文化や内部通報制度の機能不全が深刻な問題として浮かび上がりました。結果として歴代経営陣の刑事告発や株価の急落など、企業に多大なダメージを与えました。
出典:日本経済新聞
東芝の事例
東芝では、2008年〜2014年にかけて、利益の過大計上が組織的に行われていた不正会計が発覚しました。特にインフラや半導体、PC事業などの部門で「チャレンジ」と呼ばれる過剰な利益目標が設定され、それを達成するために取引の期ずれや不適切な工事進行基準の適用などが行われていました。
第三者委員会の調査では、トップダウンによる過度なプレッシャーと、経営幹部による利益操作の指示が明らかとなりました。この不正により、約2,000億円超の利益水増しが判明し、上場維持への影響、ガバナンス改革、経営陣の刷新へと発展しました。
出典:東洋経済ONLINE
株式会社オルツの事例
株式会社オルツでは、2024年に売上の架空計上や費用の過小計上があったと報じられており、第三者委員会の調査によってAI開発事業における会計処理の不備が指摘されました。第三者委員会の調査報告書によると、AI開発事業における売上認識基準に不透明な点があり、契約書の未整備や検収書類の不備も確認されています。
経営陣が営業現場の数値を直接管理していたことや、会計処理の判断を一部のメンバーに依存していた点が、組織的なガバナンスの弱さとして問題視されました。この件では、当初の開示との乖離が著しく、上場審査に大きな影響を及ぼす結果となりました。
出典:日本経済新聞
不正会計の原因
不正会計は突発的に発生するものではありません。多くの場合、企業内部に蓄積された構造的な歪みが一定の閾値を超えたときに顕在化します。
表面上は個人の判断ミスや倫理観の問題に見えても、背景には目標設定、評価制度、統制環境、組織文化といった経営要素が複合的に作用しています。
以下では、不正を誘発しやすい代表的な要因を整理します。
- 達成不可能な目標設定によるプレッシャー
- 内部統制の不備とガバナンスの弱さ
- 企業文化・倫理観の欠如
達成不可能な目標設定によるプレッシャー
数値目標そのものが問題なのではなく、達成困難な目標と強い成果主義が結びつき、修正不能な構造になっている場合です。
短期業績を過度に重視する環境では、「未達=失敗」という単純な評価軸が支配します。その結果、業績未達を回避するために、売上計上時期の操作や費用の先送りといった会計上の調整がやむを得ない手段として正当化されやすくなります。
本質的には、目標水準の問題というよりも、未達を許容しない評価設計がリスクを高めています
内部統制の不備とガバナンスの弱さ
不正が長期化する企業では、例外なく牽制機能が形骸化しています。
会計処理に関する権限が特定部署や特定役員に集中している場合、チェック機能は機能不全に陥ります。また、経営層が業績維持を優先する姿勢を示せば、内部監査や経理部門は実質的にブレーキをかけられません。
取締役会や監査部門が存在していても、実効性が伴っていなければ統制とは言えません。
不正は「統制がない」企業よりも、「統制があるように見えて機能していない」企業で深刻化する傾向があります。
企業文化・倫理観の欠如
制度が整備されていても、組織風土が不正を抑止できなければ意味がありません。
「業績が最優先」「問題を表に出すな」というメッセージが暗黙裡に共有されている場合、不正の兆候は組織内で吸収・隠蔽されます。内部通報制度があっても、報復への不安や無力感があれば機能しません。
不正が組織的に拡大する企業には共通点があります。それは、倫理よりも成果が優先される文化が定着していることです。
不正会計の手口
不正会計は、突発的な改ざんではなく、一定のパターンに沿って実行されることが多いです。
重要なのは手口そのものよりも、「どのような兆候が現れるか」を理解することです。
内部監査や経営層が注視すべき視点を踏まえ、代表的な手法を整理します。
- 売上の水増し
- 売上の除外
- 「期ずれ」処理
- 循環取引
- 押し込み販売
売上の水増し
売上の水増しは、架空取引や実態を伴わない計上によって業績を過大に見せる手口です。
短期的な目標未達を回避するために行われるケースが多く見られます。
発見のポイントは、売上計上に対して資金の流れや実在性が整合しているかどうかです。入金遅延が慢性化している、契約書の内容が曖昧、同一取引先との取引が期末に集中しているといった兆候は注意が必要です。
水増しは単発ではなく、翌期以降の辻褄合わせを生み、連鎖的に拡大する傾向があります。
売上の除外
一方で、損失や不採算取引を意図的に計上しない「売上の除外」も典型的な操作です。
返品処理や引当金計上を先送りすることで、利益を維持しようとします。
この手法は「計上しない」ため痕跡が見えにくく、監査上も見落とされやすい特徴があります。売上債権の回収状況や在庫回転率との不整合が兆候となります。
「期ずれ」処理
期ずれは、売上や費用の計上時期を意図的に操作する手法です。四半期末や決算期末に売上が急増している場合は、慎重な検証が必要です。
単年度では軽微に見えても、継続的に繰り返されると実態とかけ離れた業績が形成されます。業績推移の平準化や不自然な利益率の安定は、期ずれの兆候となり得ます。
循環取引
循環取引は、複数企業間で形式的な取引を繰り返すことで売上を作り出す手法です。
実際の資金移動や経済合理性を伴わない場合、不正の可能性が高まります。
特定企業との取引額が急増している、取引内容が抽象的であるといった状況はリスクシグナルとなります。
押し込み販売
押し込み販売は、期末に販売店や代理店へ過剰出荷し、売上として計上する手法です。一時的に業績を改善させますが、後日返品や値引き処理として表面化します。
在庫の滞留、返品率の上昇、翌期の急激な売上減少などが典型的な兆候です。
以上が不正会計の主な手口です。このような手口や不自然な取引はスマホやパソコンに証拠がある場合もあります。デジタル機器の調査をするなら専門家に相談しましょう。
不正会計が疑われた場合の実務対応フロー
会計不正の疑いが生じた場合、企業に求められるのは迅速さと統制です。拙速な公表や場当たり的な内部調査は、証拠毀損や信用失墜につながります。
対応は「証拠保全」「不正会計の事実を確定する」「対外説明を設計する」の大きく三段階に整理できます。
初動対応と証拠保全
不正の疑いが生じた段階では、まず証拠の保全を最優先とします。
社内での憶測や過度な情報共有は避け、関係者を限定した体制を構築します。
ここでの目的は「判断」ではなく「保全」です。
帳簿、証憑、メール、ログデータ、端末など、不正の痕跡が残る可能性のある資料を現状のまま確保します。特にデジタル証拠は上書きや削除のリスクが高いため、操作を加えず保全することが不可欠です。
同時に、経営層・監査役・法務部門を含めた対応チームを組成し、今後の調査方針を決定します。
初動を誤ると、後の法的対応や説明責任に重大な影響を及ぼします。
フォレンジック調査の活用
フォレンジック調査(デジタルフォレンジック)とは、パソコン・サーバ・メール・クラウド・各種ログなどのデジタル記録を証拠として保全・解析し、事実関係を客観的に再構成する専門調査です。目的は「いつ・誰が・どこから・何をしたか」を時系列で明らかにし、改ざんや削除の有無、外部送信や持ち出しの有無を証拠性を担保した形で確定することにあります。
会計不正では、帳簿や証憑の突合だけでは限界があり、証拠が消失する恐れがあるため、IT側の痕跡を丁寧にたどる必要があります。フォレンジックでは以下のような対象と手法で、紙の証憑だけでは見えない「操作の実態」を可視化します。
- 端末・サーバの操作記録(削除・上書き・USB接続など)
- メールやチャットの送受信記録
- クラウドサービスの操作履歴(共有リンク・外部アクセス)
- ネットワークログ(外部送信や私用クラウドの使用)
- 証拠の改ざん防止(イメージ取得+ハッシュで証明)
ただし不用意に電源を落としてしまったり、端末が初期化されると調査が困難になる場合があります。フォレンジック調査を実施する際はすぐに専門家に相談して保全を実施しましょう。
適切な情報開示とレピュテーションリスク対応
事実関係が一定程度固まった段階で、開示方針を検討します。
特に上場企業の場合、適時開示義務や金融商品取引法上の責任が生じる可能性があります。
開示で重要なのは「速さ」よりも「整合性」です。
不完全な情報を先行開示すると、後日の訂正によって信頼をさらに損なうリスクがあります。
株主、監査法人、金融機関、取引先、監督官庁など、ステークホルダーごとに説明戦略を設計する必要があります。
レピュテーションリスクは、不正そのものよりも対応のまずさによって拡大するケースが少なくありません。調査結果に基づいた一貫した説明を行いましょう。
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まとめ
不正会計は単なる数値の粉飾ではなく、達成困難な目標設定や形骸化した内部統制、成果偏重の組織文化といった構造的課題の表れです。売上の水増しや期ずれ、循環取引、押し込み販売などの手口には一定の兆候があり、帳簿や資金の不整合、期末取引の偏在といった歪みとして現れます。
重要なのは、不正を発覚後の問題と捉えないことです。兆候を早期に把握し、証拠を保全し、第三者性を担保した検証を行うことで、被害の拡大と信用毀損を最小限に抑えることができます。
会計不正への対応は、不祥事処理ではなく経営リスク管理の一環です。社内だけで把握が難しい場合には、早期に専門家の支援を受け、客観的事実に基づいた説明と再発防止策につなげることが、信頼回復への現実的な道筋となります。