近年、サイバー攻撃による重要インフラや行政システムへの被害が増加するなか、国家としての対応力が問われる時代に突入しています。中でも、官民連携のもとでサイバーセキュリティ体制を整備する必要性は高まっており、法制度面での整備も進んでいます。
その一環として制定されたのが「サイバー対処能力強化法(正式名称:重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律)」です。この法律は、政府機関だけでなく民間企業にも対象が広がる点が特徴であり、企業のIT部門や法務部門にとっても無関係ではありません。
とくに対策が不十分なままだと、サイバー攻撃の標的となるリスクが高まり、場合によっては社会的信用や業務継続にも影響を及ぼす可能性があります。事前の理解が不十分なままでは被害拡大の恐れもあるため、制度の内容を正しく把握しておくことが大切です。
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サイバー対処能力強化法とは
「サイバー対処能力強化法」とは、正式には「特定重要電子計算機等のサイバー対処能力の強化に関する法律(令和4年法律第66号)」を前身とし、2026年からより実効性ある制度として施行される予定の法律です。
この法律の目的は、重要な行政・社会基盤を支える情報システム(特定重要電子計算機)に対するサイバー攻撃への対処能力を強化することです。対象となるのは、国の行政機関のみならず、一定の基準を満たす民間事業者のシステムも含まれます。
背景には、近年増加する国家レベルの標的型攻撃やランサムウェア被害があり、単独では防ぎきれないリスクに対して、政府と事業者が連携してサイバー対処能力を底上げすることが狙いです。
この法律における「特定重要電子計算機」とは、以下のような情報システムを指します。
- 国の行政機関における主要業務を担うサーバやネットワーク装置
- 社会インフラに関与するシステム(電力・通信・医療・交通等)
- 民間企業であっても、行政機関と密接に連携する情報システム
たとえば、国民の情報を扱う大規模なクラウドサービスや、重要な公共データを処理・保存するシステムなどが該当します。
また、これらの機器・システムがサイバー攻撃を受けた際には、単なる自社リスクにとどまらず、社会全体の安全保障や業務継続に支障をきたす恐れがあるため、セキュリティ対策の水準や体制整備が義務付けられるケースもあります。
出典:内閣官房
サイバー対処能力強化法の3つのポイント
この法律の運用にあたって、特に重要とされているのが「対象となる事業者・システムの範囲」「禁止される行為」「官民が連携する枠組み」です。
以下の3つの観点から順に確認していきましょう。
サイバー対処能力強化法の主なポイント
対象事業者・システムの範囲
本法律の対象は、単に国の行政機関にとどまらず、「特定重要電子計算機等」を保有・運用する事業者まで広く拡張されます。これには、以下のような法人・団体が含まれます。
- 電気、ガス、水道、交通、通信、医療などの基幹インフラ事業者
- 政府が活用するクラウドサービスやSaaSを提供するIT事業者
- 中央官庁・地方自治体から業務を受託しているシステム開発・運用企業(SIer等)
これらの事業者は、所轄大臣の告示により「対象事業者」として正式に指定されます。
指定された事業者は、サイバーインシデント発生時の報告義務、重大脆弱性の管理責任、政府機関による調査への協力義務など、一定の法的責任を負うことになります。
禁止される行為・罰則
本法では、対象事業者に対して具体的に禁止される行為が明示されています。これに違反した場合、報告義務違反・業務妨害行為として、行政指導や罰則の対象になる可能性があります。
主な禁止行為は以下の通りです。
- 調査協力の拒否(政府によるサイバー調査への非協力)
- 虚偽報告(インシデント内容の隠蔽や過少申告)
- 不正アクセスの黙認
- 重大な脆弱性を把握しながら是正措置を行わないこと
これらの行為は、インシデントの早期発見・拡大防止を阻害するため、組織としての対応不備が厳しく問われることになります。
特に、脆弱性情報の放置や管理体制の不備が罰則対象となる点は、既存の情報セキュリティ対策と大きく異なる運用インパクトを持ちます。
官民連携の枠組みと通報義務
法律の柱のひとつが、政府機関(内閣サイバーセキュリティセンター/NISCなど)と民間事業者との連携です。
本法の中核的な理念として位置づけられているのが、政府機関と民間企業との連携によるサイバー対処体制の構築です。指定された事業者において重大なサイバーインシデントが発生した場合、以下のような流れで対応が求められます。
- 指定機関(例:内閣サイバーセキュリティセンター/NISC)への通報
- 関係省庁および調査機関との情報共有
- 政府による通信情報の収集・分析(※独立機関の事前承認が必要)
- 必要に応じて、マルウェアなどの無害化措置(削除・隔離等)
これらの措置は、単なる自社被害の対応ではなく、社会全体の機能維持を目的とした広域的な連携対応となります。
また、特定の条件においては、政府がシステム内部の通信情報を取得する権限を持つことになりますが、これは独立機関による事前審査制を経る形で実施されるため、恣意的な監視や介入を防止する制度設計も施されています。
出典:内閣官房「サイバー対処能力強化法及び同整備法について」
企業実務に与える影響と求められる対策
サイバー対処能力強化法の施行により、対象事業者には従来以上に高度かつ実効性あるサイバーセキュリティ体制の構築が求められるようになります。特に、法制度に対応するためには、平時からの体制整備と、有事における初動対応能力の強化が不可欠です。
本章では、事業者が実務上対応すべき主要な3領域、すなわち「フォレンジック調査体制の整備」「脆弱性診断の定期実施」「SOC・CSIRT体制の構築」について具体的に解説します。
フォレンジック調査の意義と法制度下での対応の重要性
サイバー対処能力強化法の施行により、対象事業者にはインシデント発生時における原因特定および被害状況の明確化が、法的・社会的責務として求められるようになります。政府による無害化措置は被害拡大防止を目的とするものであり、攻撃の全容解明までは担保されないことから、事業者自身によるフォレンジック調査体制の整備が不可欠です。
フォレンジック調査は、サーバや端末に残されたログ等を科学的に分析し、所轄官庁への報告や顧客説明、場合によっては訴訟対応の根拠資料として活用されます。証拠データは短期間で消失する可能性があるため、初動対応の適切性が調査結果の信頼性を大きく左右します。
このため、インシデント対応においては以下の点が重要となります。
- 攻撃の経路・範囲・関係者を特定するためのフォレンジック調査の実施
- 発生直後におけるログや端末データのイメージ取得およびハッシュ値による証拠性の担保
- 専門性を要する初動対応について、外部のフォレンジック専門事業者を適切なタイミングで活用する判断
特に、被害が広範囲に及ぶ場合や訴訟・行政対応が想定されるケースでは、第三者性と信頼性を備えた調査結果を確保することが不可欠となります。
脆弱性診断の定期実施とリスクマネジメントの強化
本法律では、事業者が重大な脆弱性を把握しながら是正措置を講じなかった場合、報告義務違反や業務妨害に該当する可能性があることが明記されており、脆弱性管理体制の整備が実質的な法的義務として求められるようになります。
脆弱性診断は、ネットワーク機器、サーバ、Webアプリケーション、クラウド環境等に対して攻撃者の視点から模擬的な侵入を行い、システム上のセキュリティホールを洗い出す手法であり、継続的な実施が必要です。診断結果は、脆弱性の有無、リスクの深刻度、推奨対策などに整理され、経営層への報告や対策の優先順位付けに活用されます。
また、診断は単発で終わらせるのではなく、その後の対応プロセスとセットで文書化・管理することが不可欠です。特に以下の3点を踏まえた体制整備が求められます。
- 診断→対処→検証というセキュリティ運用サイクル(PDCA)の継続的実施
- 診断対象・頻度・対応責任者等を明文化し、体制の透明性を確保
- 監査や行政調査への対応に備えた記録・証跡管理(報告書、対応履歴等)の整備
さらに、外部事業者に診断を委託する場合は、CVE(共通脆弱性識別子)やOWASP Top 10といった国際基準に準拠した診断項目と体制を持つ企業を選定し、診断結果の第三者性と信頼性を確保することが望まれます。
脆弱性診断(セキュリティ診断)とは?実施すべき理由と診断サービスについて解説>
SOC・CSIRTの整備と通報体制の構築
サイバー対処能力強化法では、重大なインシデント発生時に速やかに政府機関(NISC等)へ通報することが求められるケースがあり、リアルタイムでの異常検知と初動対応が可能な体制整備が不可欠です。その実現には、SOC(Security Operation Center)とCSIRT(Computer Security Incident Response Team)の連携による統合的な運用が求められます。
SOCは、SIEM(Security Information and Event Management)などのツールを活用し、通信やログイン履歴、不審な挙動を24時間体制で監視・分析する専門組織です。検知ルールの更新やインシデントの一次分析も含めた継続的な運用が必要となります。中小企業などでは、外部SOCサービスの利用も現実的な選択肢です。
CSIRTは、インシデント発生時に技術、法務、広報、経営などの関係部門を横断して初動対応を担う組織であり、重大性の判定、通報判断、システムの隔離、関係者対応などを実施します。対応フローの事前整備と定期的な訓練が、有事における機能発揮の鍵となります。
このように、SOCによる常時監視とCSIRTによる組織的対応を組み合わせることで、制度上求められる通報・封じ込め体制を迅速かつ確実に実現することが可能となります。
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