この記事の要点
・2026年は、S&J(5月)、NTTドコモビジネス(5月)、伊藤忠テクノソリューションズ(10月)、SCSKセキュリティ(10月)などが相次いでAI-SOCの提供を始め、「AI-SOC元年」とも言える年になりました。
・同じ「AI-SOC」でも、AIが担う範囲(判定まで/対応案の提示まで/自動対処まで)、人の関与、料金の公表状況はサービスごとに大きく異なります。
・本記事で比較した7サービスのうち、導入社数を公表しているのはFastTriage(累計導入企業500社以上、2026年10月15日時点)のみでした。2026年に始まった新サービスが多く、ほかのサービスはまだ導入社数を公表していません。
・選ぶときは「自社の製品に対応しているか」「AIがどこまで自動で止めるか」「人はいつ関わるか」「導入実績とその数え方」を確認するのが近道です。
アラートは24時間鳴るのに、見る人は日中しかいない――。中小企業のセキュリティ運用で最も多い悩みの一つです。EDRやUTMを導入しても、夜間や休日の警告に誰も気づかなければ、被害は止まりません。
この課題に対する答えとして、2026年に一気に広がったのが「AI-SOC」です。これまで人のアナリストが行っていたアラートの一次判定や調査を、AIが担います。大手のSIerや通信事業者も相次いで参入し、選択肢は増えました。
一方で、「AI-SOC」という言葉が指す中身は、サービスによってかなり違います。この記事では、国内で提供されている主要な7つのAI-SOCサービスを、各社の公式発表をもとに比較し、中小企業が選ぶときに確認すべきポイントを解説します。
AI-SOCとは?従来型のSOCとの違い
SOC(Security Operation Center)は、セキュリティ製品のアラートやログを監視し、攻撃の兆候を見つけて対応する組織やサービスのことです。従来のSOCでは、アラートの判定から調査、顧客への報告までを人のアナリストが担ってきました。
AI-SOCは、このうちアラートの一次判定(トリアージ)や、ログを突き合わせた調査をAIに任せる仕組みです。サービスによっては、危険と判断した端末の隔離などの対処までAIが自動で行います。
| 従来型のSOC | AI-SOC | |
|---|---|---|
| 一次判定 | アナリストがアラートを一件ずつ確認 | AIが危険度や誤検知の可能性を判定 |
| 夜間・休日 | 24時間の有人体制を組むには人手と費用がかかる | AIは時間帯に関係なく稼働 |
| 対応の速さ | アナリストの手が空くまで待つことがある | アラートの発生後すぐに判定・対処できる |
| 人の役割 | 判定から報告まで全般 | AIが判断しにくい事象の調査、顧客への報告、復旧支援 |
| 向いている用途 | 大規模・複雑な環境での高度な分析 | 限られた人手で、多くのアラートを漏れなくさばく |
AI-SOCは人を不要にするものではありません。多くのサービスは、AIが大量のアラートをさばき、人は判断の難しい事象や顧客対応に集中する「分担」の形をとっています。
主要7サービスの比較表
国内で提供されている主なAI-SOCサービスを、各社の公式発表にもとづいて整理しました(2026年11月6日時点)。並び順は提供開始が早いものからで、優劣を示すものではありません。
| サービス | 提供開始 | AIが担う範囲(公式発表) | 人の関与 | 料金 | 導入実績 |
|---|---|---|---|---|---|
| FastTriage(サイバーセキュリティ総研) | 提供中 | EDR・ID・ネットワーク機器のアラートを24時間365日判定。危険度に応じて端末隔離などの対処を自動実行、または承認を依頼 | プランにより日中のアナリストが調査・判断。24時間有人はオプション | 要見積もり | 累計導入企業500社以上(2026年10月15日時点) |
| AI-SOC(セキュアヴェイル) | 提供中(2026年4月にSTNetが販売開始) | FortiGateの通信ログ、Microsoft 365の監査ログをAIで分析し、リスクの高い事象を検知。「SOCの無人化」をうたう | 公式発表に記載なし | FortiGate版 月額9,800円〜、Microsoft 365版 1ユーザー月額50円〜(いずれも税抜・初期費用別) | 公表なし |
| AI SOC(ヤグラ) | 提供中 | EDR、SIEM、ID管理など100以上の製品と連携し、AIがアラートを24時間365日調査して真偽を判定。判断の根拠も示す | AIは対応判断を支援する位置づけ(人の関与の範囲は公式サイトに明記なし) | 公表なし | 公表なし |
| My SOC 365(S&J) | 2026年5月11日 | Microsoft 365(Entra ID、Office 365、Defender)のログをAIで分析して異常を検知。8月からはAIが攻撃の確からしさを判定し、アカウントの無効化や端末の隔離などを人の判断を待たずに実行 | 危険度の判断や初期対応の支援はアナリストが担当 | 公表なし(スタンダード/プレミアムの2プラン) | 公表なし |
| AI SOC(NTTドコモビジネス) | 2026年5月20日 | AIエージェントがログを横断分析(相関分析を約10分に短縮)。マネージドSOARで自動対処し、対処の約95%を自動化できるとする | 同社のセキュリティ専門家がサポート | 公表なし | 公表なし |
| CTC-MSS AI SOCサービス powered by Exaforce(伊藤忠テクノソリューションズ) | 2026年10月1日 | 検知、優先度の判定、原因と影響範囲の調査、対応案の提示までを自動化 | 公式発表では、担当者は対応判断や社内調整に注力できるとする | 公表なし | 公表なし(3年で売上15億円が目標) |
| AI SOCサービス(SCSKセキュリティ) | 2026年10月28日発表 | すべてのアラートを自動トリアージし、対処不要なものを自動でクローズ。自社環境の検証では一次分析が平均2分、約95%が自動クローズ | SOCアナリストが24時間365日体制で、AIがクローズしない事象を精査 | 公表なし | 公表なし |
※各社の性能値(分析時間、自動化率など)は各社の公表値です。SCSKセキュリティの数値は、同社の自社環境(週約3万件のアラート)での検証結果で、効果を保証するものではないと注記されています。
比較して見えた3つの違い
1. AIが「どこまでやるか」が違う
同じAI-SOCでも、AIの役割は大きく3つの段階に分かれます。
- 判定・検知まで:危険な事象を見つけて知らせる。対処は人が行う
- 調査・対応案の提示まで:原因や影響範囲を調べ、どう対応すべきかを示す(CTCのサービスなど)
- 自動対処まで:危険と判断したら、端末の隔離などをAIが実行する(FastTriage、NTTドコモビジネス、S&Jなど)
夜間や休日に担当者がいない中小企業では、「見つけても、止める人がいない」状態が最も危険です。AIが自動で止められるか、止める前に誰の承認が必要かは、必ず確認したいポイントです。一方、自動対処には業務を止めてしまうリスクもあるため、「重要なサーバーは自動で隔離しない」といったルールを設定できるかも合わせて確認しましょう。
2. 料金を公表しているサービスは少ない
今回の7サービスで料金を公表しているのは、セキュアヴェイルのAI-SOCのみでした。大手のサービスは、いずれも個別見積もりです。料金を比べるときは、月額だけでなく、初期費用、最低契約期間、監視対象の台数やユーザー数の数え方まで揃えて見積もりを取ることが大切です。
3. 導入実績を公表しているサービスはまだ少ない
NTTドコモビジネス、CTC、SCSKセキュリティ、S&JのAI-SOCは、いずれも2026年に始まったばかりのサービスです。そのため、導入社数はまだ公表されていません。今回比較した7サービスのうち、導入社数を公表しているのはFastTriage(累計導入企業500社以上)のみでした。
なぜ「導入実績」を確認すべきなのか
AI-SOCの判定は、使っているセキュリティ製品の組み合わせや、業務で使うアプリ、社内のネットワーク構成によって変わります。ある会社では正常な動きが、別の会社では攻撃の兆候になることもあります。
導入実績は、そうしたさまざまな環境で、実際にアラートを判定し運用してきたかを測る目安の一つです。特に、EDR、ID基盤、UTMなど複数の製品を組み合わせて使っている場合は、自社と同じ製品構成での運用経験があるかを確認すると安心です。
実績の数字を見るときの注意点
ただし、実績の数字は会社ごとに数え方が違います。比較するときは、次の点を確認してください。
| 確認すること | 例 |
|---|---|
| 累計か、現時点か | 「累計導入企業数」と「現在の契約社数」は別の数字です |
| 社数か、台数か | 「監視台数1万台」と「導入1,000社」は比べられません |
| 国内か、世界か | 海外ベンダーの「世界で数万社」は国内の実績ではありません |
| 実績か、目標か | 「3年で○社を目指す」は実績ではありません |
| 顧客環境か、自社環境か | 「自動化率95%」が自社の検証環境での値か、顧客環境での値か |
当社のFastTriageの「500社以上」は、2026年10月15日時点の累計導入企業数です。商談の際は、どのサービスにも数字の定義を確認することをおすすめします。
中小企業がAI-SOCを選ぶときのチェックリスト
- 対応製品:自社で使っているEDR、Microsoft 365やEntra IDなどのID基盤、UTMやファイアウォールに対応しているか
- 自動対処の範囲:AIが自動で隔離・遮断できるか。承認制と自動対処を切り替えられるか
- 人の関与:AIが判断できない事象を、誰が、何時から何時まで見るのか。24時間の有人対応はオプションか標準か
- 通知の受け取り方:メールだけか、TeamsやSlackでも受け取れるか。日本語で分かりやすく届くか
- インシデント発生後の支援:調査や復旧、駆け付けまで支援してもらえるか
- 料金の数え方:台数、ユーザー数、ログ量のどれで課金されるか。初期費用と最低契約期間
- 導入実績:導入社数とその数え方、自社と同じ規模・製品構成での運用経験
- 公的な制度:IPAの「サイバーセキュリティお助け隊サービス」への登録や、補助金の対象かどうか
FastTriageの特徴
最後に、当社が提供するFastTriageについて紹介します。FastTriageは、当社のMDR(検知・対応の運用代行)サービスを支える独自のAI-SOC基盤です。
- 累計導入企業500社以上(2026年10月15日時点)
- 幅広い製品に対応:EDR(SentinelOne、Microsoft Defender、CrowdStrike)、ID(Microsoft Entra ID、Active Directory、Okta、Google Workspace)、ネットワーク(Fortinet、Palo Alto Networks、Cisco、Check Point、Cloudflare)。対応製品は順次拡大中です
- 危険度に応じた対処:高リスクは即時に自動対処、中リスクは承認を依頼、低リスクは通知と記録、判断が難しいものはアナリストへ。重要サーバーは自動で隔離しないなど、運用ルールを設定できます
- 選べる3プラン:AIによる判定・通知の「AI-SOC」から、アナリストが調査・判断する「Standard」まで。24時間365日の有人監視はオプションで追加できます
- 公的な制度への対応:「FastTriage AI-SOC お助け隊パック」はIPAのサイバーセキュリティお助け隊サービスに登録(登録番号 2026-001)。デジタル化・AI導入補助金の対象ツールにも登録されています
自動対処の範囲は、製品・契約・設定によって異なります。詳しくはサービスページをご覧ください。
よくある質問
Q. AI-SOCを導入すれば、社内のセキュリティ担当者は不要になりますか?
不要にはなりません。AI-SOCは、大量のアラートの判定や夜間の初動を肩代わりするものです。インシデントが起きたときの社内の連絡、業務への影響の判断、取引先への説明などは、社内で担う必要があります。ただし、日々のアラート確認にかかる時間は大きく減らせます。
Q. AIの判断が間違って、業務に必要な端末が止まることはありませんか?
可能性はあります。そのため、多くのサービスでは、自動で止める対象や時間帯を設定できます。FastTriageでは、重要サーバーは自動で隔離しない、業務時間中は承認制にする、といったルールを決められます。導入時に、止めてはいけない端末を洗い出しておくことが大切です。
Q. 従来型のSOCとAI-SOC、どちらを選ぶべきですか?
専任のセキュリティ担当者がいて、複雑な環境を高度に分析したい大企業では、従来型のSOCが合う場合もあります。一方、担当者が少なく、夜間・休日のアラートに対応できないことが課題の中小企業では、AI-SOCの方が費用と効果のバランスをとりやすい傾向があります。
Q. EDRを入れていなくても、AI-SOCは使えますか?
サービスによります。FortiGateなどのUTMや、Microsoft 365のログを対象にするサービスもあります。ただし、端末で起きている攻撃を検知して隔離まで行うには、EDRとの組み合わせが基本になります。自社の環境でどこまで守れるかを、導入前に確認してください。
まとめ:AI-SOCは「中身」と「実績」で選ぶ
2026年は大手の参入が相次ぎ、AI-SOCは中小企業にとっても現実的な選択肢になりました。ただし、同じ名前でも、AIがどこまで自動で対応するのか、人がいつ関わるのかは、サービスによって大きく異なります。
選ぶときは、自社の製品に対応しているか、夜間に誰が止めるのか、そして実際にどれだけの企業で運用されてきたのかを確認してください。比較表とチェックリストを、各社への問い合わせの際に活用していただければ幸いです。
累計導入企業500社以上のAI-SOC基盤で、夜間・休日のアラートにも備える
サイバーセキュリティ総研のMDRは、独自のAI-SOC基盤「FastTriage」が、EDR・ID・ネットワーク機器のアラートを24時間365日判定し、必要に応じて端末の隔離まで行います。AIのみのプランから、アナリストが調査・判断するプランまで選べます。情報システム担当者がいない企業向けには、IPAのお助け隊サービスに登録された「FastTriage AI-SOC お助け隊パック」もご用意しています。
参照:NTTドコモビジネス「AIを駆使してサイバー攻撃の脅威を分析・自動対処する「AI SOC」の提供を開始」(2026年5月20日、@Press配信)/伊藤忠テクノソリューションズ「AIエージェントで脅威の検知・調査・対応案の提示を自動化するAI SOCを国内展開」(2026年10月1日)/SCSKセキュリティ「AIを活用した次世代SOCサービス「AI SOCサービス」を提供開始」(2026年10月28日)/S&J「AIによりMicrosoft 365を統合セキュリティプラットフォーム化する「My SOC 365サービス」の提供を開始」(2026年4月23日、PR TIMES)/S&J「「My SOC 365」にAI自動対処機能を搭載」(2026年8月4日、PR TIMES)/ヤグラ「AI SOC」サービスページ/セキュアヴェイル「AIで無人化を実現するセキュアヴェイルの次世代SOCサービス「AI-SOC」を株式会社STNetが四国エリアで販売開始」(2026年4月17日)/サイバーセキュリティ総研「AI-SOC基盤「FastTriage」、累計導入企業数が500社を突破」(2026年11月4日、PR TIMES)/IPA「サイバーセキュリティお助け隊サービス制度」