ロックウェルのサステナビリティレポートに見る「産業セキュリティ×脱炭素」:OT現場が直面する新しいリスク

脱炭素のデジタル化が増やすOTの接続点

製造業のサステナビリティ推進は、単なる環境配慮にとどまらず、エネルギー効率の最適化やデータ活用、サプライチェーンの可視化といった「つながる現場」を前提に進みます。ロックウェル・オートメーションが公表した2025年度サステナビリティレポートが示す方向性も、効率化とレジリエンスを同時に高めることにあります。

一方で、OT(Operational Technology)環境がネットワーク化されるほど、攻撃対象領域は拡大します。センサーやゲートウェイの追加、クラウド連携、外部ベンダーによるリモート保守は、価値を生むと同時に「入口」を増やすためです。OTは止められない設備が多く、古い資産の長期運用も一般的で、ITと同じ速度でパッチ適用や構成変更を回しにくい現実があります。その結果、守りが追いつかないデジタル化が起きやすくなります。

守りを仕組み化するネットワークゲートウェイの要点

セグメンテーションと許可通信の徹底

OTで重要なのは、すべてを最新化することではなく、影響の大きい領域から通信を絞り込むことです。ゾーン/コンジットの考え方で生産系・監視系・保守系を分離し、「必要な通信だけを許可する」設計にします。このとき、現場の境界にセキュリティアプライアンス型のネットワークゲートウェイを置くことで、ポリシーの一元管理、誤設定の抑制、監査に耐えるログ取得を同時に進めやすくなります。

リモート保守を安全に通す入口設計

脱炭素投資では、EMSや電力見える化など従来と異なるベンダーが関与し、外部接続が増えがちです。ここで「一時的な例外運用」を積み重ねると、いつの間にか恒久的な抜け道になります。踏み台を前提とした経路設計、多要素認証、セッション単位の制御と記録を実装し、外部接続を“見える化された入口”に変えることが重要です。ゲートウェイ製品で入口を集約すると、運用ルールと技術対策のズレも小さくできます。

環境KPIと並べるセキュリティKPI設計

測れる指標で「止めない」を継続

サステナビリティは指標で進捗を管理します。同じ発想で、OTセキュリティもKPI化し、経営レベルで継続監視することが不可欠です。温室効果ガス排出量やエネルギー使用量を追うだけでは、達成を“止まらず安全に”継続できません。

現場に落ちるKPI例

  • OT資産の可視化率(台帳化、通信把握、責任者の明確化)
  • 重要資産のセグメンテーション適用率(最小権限通信の実装状況)
  • リモートアクセスの統制率(多要素認証、踏み台、セッション記録)
  • 脆弱性のリスク評価実施率(操業影響を含む優先度付け)
  • バックアップ/リストアの訓練頻度(復旧手順の定着)

ネットワークゲートウェイやセキュリティアプライアンスを中核に据えると、ポリシー適用率や外部接続の統制状況、ログ取得の網羅性などが測定可能になり、KPIと運用を結び付けやすくなります。

ESG開示・サプライチェーン要求に耐える実装

近年は取引先評価や入札要件として、セキュリティ対策状況の提出を求められるケースが増えています。開示や監査への対応は重要ですが、チェックシート記入が目的化すると、実装(分離・アクセス制御・監視・復旧)との乖離が起きやすくなります。OTは特に「紙のルール」と「現場の運用」がズレやすいため、境界にアプライアンスを配置して統制点を作り、例外運用を減らす設計が有効です。

また、脱炭素に伴う新しい重要資産(EMS、蓄電池、再エネ連携、マイクログリッドなど)は、責任分界が曖昧になりがちです。導入前に資産オーナー、変更承認、インシデント連絡、ベンダー接続方式、ログ保全範囲をRACIで定義し、技術的にはゲートウェイで入口と通信を統制することが、後付けコストを抑える近道です。

OTの成熟度向上には、全社統制をNIST CSFで整理し、工場ネットワーク要件をIEC 62443で具体化すると役割分担が明確になります。最初の段階では、資産と通信の見える化、外部接続の統制、復旧手順の整備を優先し、脱炭素のデータ連携を止めずに守る土台を作るべきです。

CVE-2026-53550
最新情報をチェックしよう!