Webサイトを狙う攻撃がAIの利用で自動化され、休みなく続く状況が指摘されている。生成AIが難読化したリクエストを大量に作り出し、WAF(Webアプリケーションファイアウォール)の検知ルールを回避してしまう事例も報告されており、従来の防御だけでは対応が難しい局面が浮かぶ。
事案の詳細
元記事は、生成AIを用いたWeb攻撃が継続的に行われ、一般的な防御策として用いられてきたWAFを回避するケースがあると伝えている。具体的には、生成AIにSQLインジェクションの派生パターンを多数作成させてWAFに通した学術実験で、オープンソースWAF「ModSecurity」に対する攻撃では最大89%が検知をすり抜け、クラウド型の「AWS WAF」でも約41%が検知を回避したとされる点が注目される。
WAFは、Webアプリケーションへの不正な通信を検知・遮断する目的で導入されることが多い。一方で、記事が示す事例では、そのWAFを通り抜けてしまう攻撃が一定数確認されており、最新の生成AIが大量の派生パターンや難読化したリクエストを自動生成することで、防御側の想定を上回る可能性が示唆される。
また、AIが「休みなく」攻撃を仕掛けるという表現が用いられており、攻撃の頻度や継続性が高まっていることがうかがえる。人手による断続的な試行ではなく、機械的に繰り返される形でWebを狙う動きが前提になりつつある点が、従来の運用に影響する。生成AIを用いた攻撃では、検知回避パターンの生成と試行が高速で繰り返されるため、短時間に多様な攻撃が投げ込まれる状況が想定される。
影響と背景
WebサイトやWebアプリケーションは、企業の問い合わせ窓口や予約・会員機能、電子商取引など、業務の入口になりやすい。そこに対し、生成AIの活用で攻撃が常時化し、さらにWAFを回避する実験結果や事例があるとすれば、公開系システムを持つ組織のリスク認識や防御の前提に大きな影響を与える。記事が示す「WAFをすり抜ける」実例は、防御の中心を単一の対策に置く難しさを改めて意識させる。
背景として、米Anthropicや米OpenAIなどが開発するフロンティアAIの登場により、脆弱性探索能力や攻撃コード生成能力が飛躍的に向上し、サイバーセキュリティの攻防が次のステージに押し上げられつつあることが指摘されている。また、AIを活用した攻撃では、WAFの検知回避パターンを高速に生成・試行する事例も報告されており、「WAFを入れているから安心」という前提が揺らぎ始めている。
対策・今後の展望
記事の主題は「予防策はあるか」という問いにあり、Web攻撃が常態化する中での備えが論点になる。WAFが重要な防御手段であることは変わらない一方、すり抜けが起こり得る前提で、監視や検知、運用の整備を含めた複数の手段を組み合わせる姿勢が求められる。AIを活用した攻撃が検知回避を狙う以上、「WAFさえあればよい」という考え方から脱却し、ログ監視やアクセス制御、CMSやミドルウェアの更新、サーバー設定の見直しなど、運用面を含むトータルな防御が必要になる。
- 防御の前提を見直す:WAFの導入・運用状況を棚卸しし、「ModSecurity」や「AWS WAF」など、実際に利用している製品のルールセットや設定の前提を確認する。その上で、生成AIによる多様な攻撃パターンが想定外の通過を引き起こし得ることを前提に、インシデント対応手順やエスカレーションルートを整える。
- 継続的な監視と迅速な対応:攻撃が「休みなく」行われ得る状況に合わせ、時間帯に依存しない検知・一次対応の体制を確認する。WAFやWebサーバー、APIゲートウェイなどのログを継続的に監視し、異常なリクエストパターンや大量試行を検出した際に、迅速に遮断や制限、調査に移れる運用を整える。
- 運用を含めた多層化:単一の防御に依存せず、WAF、アクセス制御、認証強化、脆弱性管理、ログ監視、バックアップ・復旧までの流れを含めて、複数の対策を組み合わせて備える。生成AIによる攻撃が検知回避を図る前提で、「入口で止める」だけでなく、「通過後に気付く」「被害を最小化する」までを含めた多層防御を構築する。
CSRIからの現場アドバイス
【現場で何が起きているか】CSRIが支援する中小企業のMDR(Managed Detection and Response)運用では、Web公開資産への不審なアクセスが「営業時間外にも途切れない」形で観測されることが多い。診断ではWAFが導入済みでも、検知ログの確認が定着しておらず、遮断できたかどうかを把握できないケースが目立つ。生成AIを用いたと疑われる大量の試行がログ上は記録されていても、担当者がそれに気付かず、対処やルール調整につながっていない例もある。
【平易な解説】例えるなら、WAFは玄関の警備員のようなものです。ただ、相手が生成AIで「何通りもの話し方」を休みなく試すと、警備員が見慣れない言い回しに気付けず通してしまうことがあります。つまり、門番だけに頼らず、通った後に気付ける仕組みも必要です。例えば、玄関を通った後の動きを監視するカメラや、異常な行動を検知する仕組み、通行記録を後から確認できる台帳などを用意しておくことで、「門番をすり抜けた後」にも不審な動きを捉えやすくなります。
【今週中にできること】まず自社のWebサイトやAPIにWAFがあるか、誰がその管理画面やログを見られるかを確認し、直近1週間の遮断・警告ログを担当者と一緒に見てください。次に「怪しい通知が来たら誰に連絡し、何を止めるか」を紙1枚で決め、共有します。最後に夜間・休日の連絡手段が実際に機能するか、テスト連絡で確かめましょう。これにより、生成AIを用いた「休みなく続く」攻撃が観測された場合でも、少なくとも検知から初動までの流れを今より確実に回せるようになります。