過去アニメサイトが「オンラインカジノへの誘導サイトに変わっている」ドメイン放置による影響と課題

2025年7月25日、かつて放送されていたテレビアニメ「怪盗レーニャ」の公式ウェブサイトが、現在オンラインカジノへの誘導サイトに変わっているとして、X上で注意を呼びかける声が広がっている。
「怪盗レーニャ」は、「モーニング娘。」の元メンバーである「田中れいな」さんをモデルにしたキャラクターを主人公に、2010年に九州朝日放送で放送された短編コメディアニメ。
公式サイトは、キャラクター紹介やストーリー概要、DVD販売情報などを掲載し、作品の世界観を魅力的に伝えるものだったが、2020年5月、第三者によって再取得され、現在はアニメとは無関係のオンラインカジノの広告サイトに変貌している状況だという。
問題のサイトは、一見すると「怪盗レーニャ」の公式サイトを装っている。
アニメのキャラクター画像やデザインがそのまま使用されており、懐かしい作品を検索したユーザーが誤ってアクセスしてしまう可能性がある。
また、サイトをスクロールすると、「アニメの次はオンラインカジノ!」といった誘導文やカジノ関連のリンクが表示される仕組みとなっている。
このような手口は、SEO(Search Engine Optimization、検索エンジン最適化)を悪用し、過去の公式サイトの信頼性や検索順位を利用してユーザーを誘導するもの。
Google検索で「怪盗レーニャ」を調べると、このオンラインカジノの広告サイトが上位に表示されるため、知らずにアクセスしてしまうケースが報告されている。

年々増加するドメイン悪用

この問題は「怪盗レーニャ」に限らず、2019年に公開されたアニメ映画「妖怪学園Y 猫はHEROになれるか」の公式サイトも、2021年に第三者によってドメインが再取得され、現在はオンラインカジノ関連のコンテンツが掲載されていた。
さらに、企業や著名人のブログなど、さまざまなジャンルで同様のドメイン悪用が確認されている。
ドメインは、契約更新が途絶えると一定期間後に誰でも取得可能な状態になる。
「中古ドメイン」を利用した悪用は、過去の信頼性や知名度を悪用するもので、ユーザーや元のコンテンツ関係者に被害を及ぼすリスクが考えられている。

日本国内では、オンラインカジノの利用は賭博罪や常習賭博罪に該当する違法行為となっている。
懐かしい作品を検索したつもりが、誤って違法なサイトに誘導される危険性は、ユーザーにとって大きな脅威となる。
また、こうしたサイトはウイルスや詐欺のリスクも含んでおり、個人情報の流出などのトラブルにつながる可能性も懸念されている。
このようなドメインの悪用は、単なるユーザーへのリスクにとどまらず、元の作品や関係者のブランドイメージにも悪影響を及ぼす。
「怪盗レーニャ」の場合、田中さんや制作に関わった企業への信頼が損なわれる恐れがあり、SNS上では「好きなアニメがこんな使われ方をするのは許せない」「権利元は対応してほしい」といった声が上がっている。
なお、田中さんの所属事務所は、すでにこの問題を把握しており、制作委員会の関係者に相談中とされている。

ドメイン管理の徹底が不可欠

そもそも、なぜこのような問題が発生するのか。背景には、使われなくなったドメインがそのまま放置され、第三者に再取得されるという現状がある。
ドメインとは、インターネット上の住所のようなもので、定期的に契約更新を行わなければ失効し、やがて誰でも取得できる「空き地」のような状態になる。
とくに、短期間で放送が終了したアニメや、キャンペーン用に期間限定で作られたウェブサイトでは、契約が打ち切られた後、ドメインの管理が放置されるケースが少なくない。
こうして空いたドメインは、過去に多くのアクセスが集まっていた実績(検索エンジン評価や被リンクなど)を持っているため、いわば「中古ドメイン」として資産価値があると見なされることがある。
これを狙った第三者が、正規の手続きを経て再取得し、全く別の目的で悪用する事例が年々増加しているのが現状だ。
元の作品や企業がサイト運営を終了していても、ドメインだけが“幽霊のように”ネット上に残り続け、その信頼性を利用した悪質なコンテンツへと書き換えられてしまう。
しかも見た目が公式サイトに近いため、ユーザーが誤ってアクセスするリスクは高く、詐欺やマルウェア(悪意あるソフトウェア)による被害につながる可能性もある。
このように、ドメインの放置は単なる「管理ミス」では済まされず、ユーザーの安全性を脅かすだけでなく、作品や関係者の評判にも大きなダメージを与える結果となる。

運営、閲覧者それぞれの対策は?

中古ドメインの悪用を防ぐには、企業やコンテンツ制作者がドメインの管理を徹底することが重要となる。
たとえば、作品ごとの独自ドメインを取得するのではなく、企業が所有するメインのドメイン配下でサイトを運用する、またはドメインの継続保有を検討するなどの対策が考えられる。
ユーザーの側でも、懐かしい作品のサイトを訪れる際は、URLやサイトの内容を慎重に確認することが必要だろう。
「怪盗レーニャ」の事例は、中古ドメイン市場のリスクと、コンテンツの信頼性を守る難しさを浮き彫りにし、アニメやエンターテインメント業界だけでなく、企業や個人にとっても、ドメイン管理の重要性が見直されるきっかけとなると予測される。
ユーザーは、公式サイトへのアクセス時に不自然な点を感じた場合、すぐに閲覧を中止し、公式のSNSや信頼できる情報源を確認するよう注意してもらいたい。

【参考記事】
https://news.nifty.com/entame/anime/
https://news.yahoo.co.jp/articles/3db8e007539a7043cb947abf717aa96f6710c77c

 

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