不法アドレスへの暗号資産流入65%減もランサムウェアの被害額は増加―2023年上半期、チェイナリシス分析

 ブロックチェーン調査会社のチェイナリシス(米・ニューヨーク州)によると2023年上半期の暗号資産にかかる犯罪は大幅に減少したということですが、ランサムウェアだけは例外で被害額は4億4910万ドルにのぼり、この傾向が続けば2023年のランサムウェア被害額は2021年に迫る額になるということです。

今年のランサム被害すでに4億4910万ドル

 チェイナリシスによると今年のランサムウェアの被害額は上半期だけで4億4910万ドルにのぼっており、これは前年同期と比べると1億7580万ドル多く、このまま推移すれば今年のランサムウェア被害額は8億9860万ドルに達し2021年の9億3990万ドルに迫るということです。昨年は暗号資産取引所のFTXが破綻するなどし、暗号資産の取引そのものが減少したことに加え、ロシアへの米経済制裁の影響などによりランサムウェアの脅迫に応じる企業が大幅に減少したことなどの影響もあり、ランサムウェアの被害額は大幅に減少しました。今年は暗号資産の取引も回復し、以前の状況に戻ったような印象も受けます。

 しかし、今年、ランサムウェアの被害額が増加している要因としては、少額のランサムウェアの支払い額が増加していることがあるようです。一方で大組織を狙うランサムウェアの被害額は巨額化しているということですから、1件当たりの被害額が巨額になるとともに少額ランサムウェアへの支払い増加という2つの側面がランサムウェアの被害額を押し上げているようです。そして2022年に後退したランサムウェアエコシステムも見事に回復してしまったようです。

 一方で違法なアドレスへの暗号資産の流入は2022年の同時期と比べると全体で65%減少しているということです。ビットコインなどのデジタル資産の価格は6月30日の時点で前年比80%以上上昇しているようであり、2022年に縮小した暗号資産取引は2023年になって回復したようです。暗号資産取引が回復する一方で暗号資産にかかる犯罪は2022年より大幅に減っているということですから、業界の健全化が進んでいるとも言えチェイナリシスも2023年の上半期の状況を評価しています。

VidiLookとChia Tai消滅で全体押し下げ

 違法アドレスへの暗号資産の流入はランサムウェアを除いてすべてのカテゴリーで減少しているということですが、特に大きな変化は詐欺だということです。暗号資産詐欺への2023年の流入は2022年よりも33億ドル近く減少し犯罪収益全体を大きく引き下げているということです。この主な要因としてチェイナリシスはVidiLookとChiaTai Tianqing Pharmaceutical Financial Managementの消滅をあげています。チェイナリシスによるとこれらは典型的な投資詐欺だということです。

 チェイナリシスは、暗号資産にかかる犯罪は2023年に急激に減少しているとし、その成果は民間と公共部門の努力に加え、法執行機関の圧力が影響していると指摘しています。一方でそのような状況においてもランサムウェアにかかる犯罪アドレスへの流入は引き続き増大していることから、ランサムウェアは依然として重大な脅威であり、企業はサイバーセキュリティとデータのバックアップを強化し続ける必要があると指摘しています。

 脅威インテリジェンスのCyberintによると2023年第2四半期(4-6月)の世界におけるランサムウェア被害件数は前期比67%以上も増加、前年同期比では97%増加したということです。今年第2四半期には140を超える新しいランサムウェアが登場、LockBitをはじめ主要なランサムウェアによる攻撃が主流を占めているものの新世代とも言える新たなランサウェアが続々と投入されている実態があるようです。

■出典

https://blog.chainalysis.com/reports/crypto-crime-midyear-2023-update-ransomware-scams/

https://cyberint.com/blog/research/ransomware-trends-q2-2023-report/

 

最新情報をチェックしよう!