スタートアップ企業やベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析している米CB Insights(CBインサイツ、米ニューヨーク市)が世界のもっとも有望なAI(人工知能)のスタートアップを選ぶAI 100。2021年のAI 100がこのほど発表され、サイバーセキュリティの分野では独自のAIテクノロジーで自立型エンドポイントセキュリティを提供しているSentinelOne(米カリフォルニア州)などが選出されました。
AIへの攻撃を防御する企業も
サイバーセキュリティの分野でSentinelOneの他に選ばれたのは、Securiti、INKY、Blue Hexaagon、Robust intelligenceで、いずれもアメリカに拠点を置いているスタートアップ企業です。SentinelOneの選出は2年連続だということです。SentinelOneは今回の選出について、「AIと機械学習はセキュリティの分野に革命をもたらしています。デバイスとクラウドに複数のAIモデルを備えた唯一のエンドポイントセキュリティ企業としてサイバー攻撃から世界の企業を保護しています」とブログで歓迎しています。
SentinelOneのセキュリティの特徴は、同社が複数の特許を取得している革新的なAIテクノロジーによって実現されており、例えばファイル形式内のパターン識別もニューラルネットワークの機能を利用して自動的に識別され、サンプルが悪意のあるものか良性なのかを自動的に判断するなどAIテクノロジーが自立型のエンドポイントセキュリティを支えています。
また、今回、サイバーセキュリティの分野で選出された企業の中にはAIそのものの保護、セキュリティを開発している企業も含まれています。サンフランシスコを拠点とするRobust intelligenceはハーバード大学とマサチューセッツ工科大学の機械学習の教授とその学生の日本人が2019年に共同で設立した企業だということです。TECHBLITZの記事によると、AIのシステムにも抜け穴や脆弱性があり、同社はAIの脆弱性を特定し解決する技術やAIに対する攻撃を防御する技術を開発しているということです。
LegalForceなど日本の企業は4社
2021年のAI 100は約6000社の中から技術の目新しさや市場の可能性、投資家の質などいくつかの要素をもとに選出され、選出されたスタートアップ企業は18の業界に及んでいるということです。サイバーセキュリティの分野での選出は5社ですが、業種はCovid-19への対応や医薬品の開発、養蜂や都市ゴミの分別など様々な分野に及んでいて、AIの及ぼす影響の幅、深さを浮き彫りにしています。
選出されたスタートアップの6割以上がアメリカに拠点を置く企業ですが、イギリス、中国、イスラエルをはじめフランス、ドイツ、デンマーク、韓国など選出企業は世界各国に及んでおり、日本のスタートアップ企業もLegalForce、ExaWizards、CinnamonAI、CagentLabsの4社が選出されました。LegalForceは弁護士が立ちあげたスタートアップ企業で、契約書を作成する際、AIが契約書に潜むリスクを洗い出し、自社に不利な条文や欠落している条項を指摘してくれるということです。また、ExaWizardsはAIによって社会課題を解決するとのミッションを掲げてAI製品の開発、実用化に取り組んでいる企業です。CinnamonAIは企業のAI活用支援、CagentLabsは最先端のAIの研究・開発とAIソリューションサービスを提供している企業です。
多くのスタートアップ企業がAIの活用に取り組んでいます。AIの活用範囲は今後ますます広がっていくことは明らかです。サイバーセキュリティの分野でもSentinelOneをはじめ多くの企業がAIを取り入れた防御を加速させています。一方でAIがサイバー攻撃に利用されるリスクもあります。AIは今後、サイバーセキュリティ、そしてサイバー攻撃をどのように変えていくのでしょうか?
■出典
https://www.cbinsights.com/research/report/artificial-intelligence-top-startups/