サイバー攻撃や社内不正が発生した際に、短時間で必要なデータを収集・解析できる方法が「ファストフォレンジック」です。
本記事では、ファストフォレンジックとは何か、どのようなインシデントにおいて活用すべきかなどについて詳しく解説します。
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ファストフォレンジックとは?
ファストフォレンジックとは、「発生したインシデントに対して、早急な実態解明や原因追及のために、侵入経路や不正挙動の把握に特化した必要最低限のデータ抽出、コピー及び解析のこと」を指します。
最大の特徴として、短時間で必要なデータを収集し、攻撃の拡大を防ぐことに特化しています。また、従来の詳細なフォレンジック調査と比較して、必要最低限の情報を効率的に収集・分析することで、被害状況の即時把握を可能にします。
引用:特定非営利活動法人デジタル・フォレンジック研究会著「基礎から学ぶデジタルフォレンジック 入門から実務での対応まで」
主に収集対象となるのは、、パソコンが処理中のデータ、システムが記録している動作履歴、通信内容など、電源を切ったり時間が経過したりすると消えてしまう可能性がある情報です。
このような情報を取得できると、攻撃者の侵入経路や活動状況の把握につなげることができます。
なお、ファストフォレンジックを実施すべきインシデント例は以下の通りです。
- ランサムウェアによるシステムの暗号化
- ネットワーク内への不正侵入の検知
- 企業の個人情報や機密情報の不正な外部流出
以上のインシデントは、サイバー攻撃の被害に遭い、迅速な対応を必要とします。また場合によっては大量の端末のフォレンジック調査を必要とします。こうした状況では、専門的な知識と経験を持つフォレンジック調査会社の支援が不可欠です。
>>【2024.11最新】フォレンジック調査会社一覧|選び方・依頼の流れを解説
フォレンジック調査会社は、専門知識に基づき膨大なデータの中から必要な証拠を効率的に収集・解析し、攻撃の全容解明や被害範囲の特定、再発防止策の提案を行います。また、大規模な調査が必要な場合でも、豊富な調査経験から迅速かつ正確に対応することが可能です。
ファストフォレンジックが重要な理由
サイバー攻撃が発生した場合、初動対応に遅れが生じると被害が拡大し、修復や復旧にかかるコストが大幅に増加します。
ファストフォレンジックを実施することで、初動段階で以下のメリットを得ることができます。
- マルウェアや不正アクセスなどの侵入経路や攻撃手法を特定し、適切な封じ込め措置が行える
- 攻撃対象となったデータやシステムを特定することで、適切な対応策を決定できる
- 脆弱性の調査や法的対応に必要な証拠収集を迅速に行える
ファストフォレンジックの活用事例
ファストフォレンジックの活用事例として、ここではランサムウェアに感染した場合の事例を紹介します。
端末のファイルを暗号化し、身代金を要求するランサムウェアは、感染した場合、すぐに感染範囲を特定し、封じ込めを行う必要があります。
ファストフォレンジックを実施することで、最初にランサムウェアに感染した端末を特定し、感染経路を辿り、封じ込めや復旧作業に調査結果を活用します。
またランサムウェア感染に伴う情報漏えいに関する情報も、ファストフォレンジックの実施によって漏洩が発生した端末や漏洩した可能性がある情報の内容などを把握できる場合があります。
>>ランサムウェアとは?感染したらどうなる?特徴と対策方法を解説
ファストフォレンジックを実施する際の注意点
サイバー攻撃や社内不正が発生し、迅速な証拠の確保のためにファストフォレンジックを実施する際は、デジタルデータの証拠能力を保つために、以下の操作を避けることが重要です。誤った対応を取ると、適切な調査が困難になるだけでなく、証拠が失われてしまう可能性があります。
- デジタル端末の初期化を行わない
- 端末の電源を切らず、操作も加えない
- 市販のデータ復旧ソフトを使用しない
- 別媒体などでデータのコピーを行わない
端末の初期化や操作を行ってしまうと、発生したインシデントによっては攻撃や操作の証拠隠滅につながる可能性があります。
また復旧ソフトで復旧したデータや外付けHDDなどでコピーしたデータは、「ハッシュ値」と呼ばれるデータの同一性を表す数値がオリジナルのデータと異なるため、証拠とする際に改ざんの可能性などが疑われてしまいます。
近年のサイバー攻撃は、攻撃の痕跡を取得しにくいものも増えています。ファストフォレンジック調査は無理に行わず、専門の調査会社に相談しましょう。
ファストフォレンジック調査を実施する際は調査会社に相談する
ファストフォレンジック調査を実施する際には、調査会社に相談することが重要です。ファストフォレンジックは、サイバー攻撃や社内不正が発生した際に、被害範囲や攻撃経路を迅速に特定するためには専門的な知識や高度な技術が必要です。
特に、攻撃の影響が企業全体に及んでいる場合や、被害額が大きい場合には、調査の正確性がその後の対応に大きく影響します。調査会社に相談することで、企業は迅速かつ適切な初動対応を実現し、被害の最小化と再発防止に向けた対策を効率的に進めることができます。
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まとめ
ファストフォレンジックは、サイバー攻撃や社内不正が発生した際に、迅速に被害範囲や攻撃経路を特定するための簡易的なデータ収集・分析手法です。
その一方で、データの改ざんや証拠の消失を防ぐには高度な知識と専門的なツールが必要です。不適切な対応は、証拠能力を損ない調査が困難になるリスクを伴います。
ファストフォレンジックを実施する際は正確な調査を実施できる専門家に相談し、被害の全容解明や法的対応のための証拠収集を実施しましょう。