退職者のUSBを用いた持ち出しへの対応策と調査方法

退職者によるUSBを使用した情報持ち出しは、企業の機密情報が社外へ流出する深刻なリスクをはらんでいます。特に引き継ぎや監督が緩くなりがちな退職直前のタイミングでは、証拠が消失する恐れが高まり、問題が発覚した時点で手遅れになることも少なくありません。

こうした内部不正の兆候を見逃さず、実態を客観的に把握するためには、デジタルフォレンジックによる操作履歴やUSB接続記録の解析が有効です。早期に調査を実施すれば、立証可能な証拠を確保でき、訴訟リスクの低減や社内対応の根拠として活用することができます。

本記事では、USBを使用した持ち出しの実態や調査方法、さらに防止策について詳しく解説します。

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退職者によるUSBを用いた情報漏洩の手口

USBメモリを用いた退職者による情報持ち出し・情報漏洩の手口を正しく理解し、どのような経路で情報が漏洩する可能性があるのかを把握することは、企業のセキュリティを強化する上で不可欠です。以下は、実際に確認されている手口です。

私物のUSBメモリを業務中に接続し、データをコピー

社内でUSBメモリの使用が明確に制限されていない場合、従業員が私物のUSBデバイスを業務用PCに接続し、社内データを無断でコピーする事例が発生しています。
コピー対象は営業資料、顧客リスト、技術仕様書など多岐にわたり、業務利用に見せかけて不正に持ち出すため、発見が遅れやすい点が問題です。

多くの組織では、USBの使用制限や接続ログの管理が不十分であり、USBポートなどが内部犯行の入口として放置されているケースも少なくありません

退職直前に「引き継ぎ」名目でファイルを大量に保存

退職が決まった従業員が、引き継ぎ資料の準備を口実に大量の業務ファイルをUSBメモリに保存するという手口があります。これは、正当な業務行為に見えるため、上司や周囲も警戒心を持ちにくいという心理的な盲点を突いた行動です。

持ち出される情報には、契約書や財務データ、製品ロードマップなど、企業にとって重要な知的財産が含まれることが多く、競合への流出リスクも高くなります
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暗号化されたファイルをUSBに保存して持ち出す

ZIPや7z形式でパスワード付き暗号化を施したファイルをUSBに保存し、外部に持ち出すという手口も一般的です。この方法により、セキュリティソフトやDLP(情報漏洩防止)製品による中身の検査を回避することが可能となります。

さらに、パスワードを別経路(メールやクラウドストレージなど)で送信することで、追跡や復元を困難にする工夫が施されるケースもあります。暗号化ファイルに対する監視が弱い環境では、検知されずに重要情報が持ち出されるリスクが高まります

一時ファイルやキャッシュを選別し、USBにコピーして回収

業務PCに一時的に保存されるテンポラリファイルやブラウザキャッシュ、アプリケーションログなどを選別し、USBにコピーするという手口も存在します。これらのデータには、直接の業務ファイルではなくても、閲覧された文書や画像、通信内容の断片が含まれている場合があり、情報漏洩に繋がることがあります

一時ファイルは多くの場合、セキュリティ監視の対象外であり、漏洩が発生しても気づきにくいというリスクを孕んでいます

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USB型マルウェアを接続し、業務PCから情報を自動収集

Rubber DuckyやBadUSBなどに代表されるUSB型マルウェアを用いた情報収集も、技術的に高度で厄介な手口のひとつです。これらは、USBメモリの外観を持ちながらも、PCに接続されるとキーボードやヒューマンインタフェースデバイスとして動作し、自動的に情報を抜き取ることが可能です。
悪意のあるスクリプトを用いて、ファイルのコピー、通信内容の送信、キーログ取得などを短時間で実行できるため、検出や対応が遅れる傾向があります

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USBに保存後、物理的に郵送して社外へ持ち出す

USBメモリに保存したデータを封筒などに入れ、郵便・宅配便で外部へ郵送するという手口も実際に確認されています。
この方法では、USBを直接携行しないため、退社時の持ち物検査を回避しやすく、さらにネットワークを介さないオフラインの漏洩となるため、技術的検出が極めて困難です。

また近年では、キーホルダー型やペン型など、偽装されたUSBデバイスを利用することで、さらに発見されにくくなっている場合もあります。

以上が、退職者によるUSBメモリを用いた情報持ち出し・情報漏洩の主な手口です。
中には、企業の一般的なセキュリティ対策では検知が難しく、被害に気づかず情報持ち出しが放置された結果、機密情報が競合他社に漏えいし、顧客が他社に流れたり、自社の機密情報を用いた製品が競合他社で流通するなどの被害を受ける場合もあります。

このような被害を受ける前に退職者による情報持ち出しを調査するには、専門のフォレンジック調査会社を利用するのが得策です。
PCやサーバーの操作ログやUSB接続履歴などを解析することで、データの持ち出し有無や時期、手口を特定することが可能です。

また、証拠としての保全も可能なため、法的対応や再発防止にも役立ちます。退職者に限らず、社内でUSBメモリを用いた情報持ち出しの疑いがある場合は、早めに専門家へ相談することを推奨します。

退職者のUSBを用いた情報漏洩によるリスク

退職者がUSBを用いて情報漏洩を発生させた場合、企業は競争力の低下だけでなく、法的責任や信用失墜といった経営上の深刻なリスクを負う可能性があります

  1. 競合他社への情報流出:営業秘密や顧客リストが漏れ、企業の優位性が損なわれます。
  2. 法的トラブル:取引先や顧客から損害賠償請求を受ける可能性があり、民事・刑事の責任が問われるケースもあります。
  3. ブランドイメージの毀損:SNSや報道で「情報管理が甘い企業」と認識され、信用が低下します。
  4. 取引停止や信用喪失:取引先との契約が打ち切られたり、顧客離れが発生することがあります。
  5. 経営へのダメージ:市場からの信頼が失われ、損害賠償や営業機会の損失につながります。

上記のリスクに備えるには、USBの接続履歴や操作ログの取得といった初動での証拠保全が重要です。社内対応に不安がある場合は、早期にフォレンジック調査の専門業者へ相談することで、ログ改ざんや証拠の欠損を防ぎ、調査や説明の正確性を確保できます。

調査の必要性と法的配慮

退職者による情報の持ち出し調査を行う際は、次のようなポイントに注意する必要があります。

  1. 証拠の改ざんを避けるため、対象デバイスの現状を適切に保全する。
  2. 個人情報保護法やプライバシー規制に準拠した手順で調査を進める。
  3. 専門的な調査が必要な場合は、実績のあるフォレンジック業者に依頼する。

>>おすすめの情報漏えい調査会社一覧|選び方と情報漏洩のリスク解説

USBメモリを用いた情報持ち出し、情報漏洩の兆候は気づきにくく、気づいて自社調査を実施した結果、ログの上書きなどにより証拠が消失する恐れもあります。事実関係の解明や法的責任の所在を明確にする上でログなどの証拠の消失は致命的なため、早めに情報持ち出し調査に強いフォレンジック調査会社へ相談することをおすすめします。

退職者によるUSBを用いた情報持ち出しの調査方法

退職者がUSBを用いてデータを持ち出した場合、迅速な対応が求められます。以下に具体的な調査方法を示します。

USB接続履歴の確認

退職者が使用していたPCにUSBデバイスが接続されていた履歴を確認することで、情報持ち出しの証拠を見つけることが可能です。

確認手順

  1. 管理者権限で対象PCにログインする
  2. Windowsキー + Rを押して「ファイル名を指定して実行」を表示させる
  3. 入力欄に「regedit」と入力してレジストリエディタを起動する。
  4. 以下のキーを参照し、接続されたUSBデバイスの情報を確認する:
    • HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\CurrentControlSet\Enum\USBSTOR
  5. 展開すると、過去に接続されたUSBデバイスの一覧とそのシリアル番号が表示される

この情報から退職者のパソコンにどんなUSBデバイスが接続されたか(メーカー名・型番・シリアル番号など)を特定することができるので、会社で管理しているUSBメモリと照合し、私用のUSBメモリが持ち出しに使われた痕跡はないか確認できます。

>>USB接続履歴の確認方法と重要性を徹底解説

ログ解析

システムログやUSB関連イベントを分析することで、USBデバイスの接続履歴や不審なファイル操作の痕跡を確認できます。また、ネットワークログからは、クラウドストレージなどを経由した不正なデータ転送を検出できます。

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主なログ解析ツール

以下のようなツールを活用すると効果的です。

  1. Windows Event Viewer:USB接続イベントやログオン履歴などWindowsのイベントログを閲覧できるツール
  2. Splunk:USB関連イベントやファイル操作ログを横断的に検索・可視化できる、大規模環境向けのログ統合分析プラットフォーム。
  3. Wireshark:ネットワーク経由での情報持ち出しを検出する際に有効

デジタルフォレンジック調査

デジタルフォレンジック調査とは、パソコンやスマートフォンなどのデジタル機器から証拠データを収集・解析する技術です。
削除されたファイルの復元や、ファイル操作履歴・USB接続履歴などを調査することで、退職者による情報持ち出しなどの不正行為を明確化することが可能です。

主に、情報漏洩や不正アクセスといったインシデントの原因究明や、裁判等に利用可能なデジタル証拠の確保を目的として活用されます。

>>フォレンジック調査の費用相場とは?期間や調査会社の選び方を解説

フォレンジック調査の一般的な手順

  1. 退職者が使用していたPCやUSBメモリなどのデバイスを確保
  2. 専用ツールで対象機器のデータを複製し、オリジナルの証拠を保全
  3. 操作ログや削除済みデータ、USB接続記録を解析し、不正の有無やタイミングを特定

デジタルフォレンジックは高度な専門知識と厳密な手順が求められる分野であり、自己流での調査は証拠の改ざん・破壊に繋がる重大なリスクを伴います。
情報漏洩の疑いがある場合や、退職者による不正行為を正確に立証したい場合は、信頼できるフォレンジック調査会社への相談が最も安全かつ確実な選択肢です。

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USB持ち出しを防ぐための対策

情報漏洩を未然に防ぐためには、技術的および組織的な対策が必要です。

物理的な制御

USBポートの使用を物理的に制限することで、情報持ち出しを防ぐことができます。

具体策

  1. USBポートを封鎖するデバイスを取り付ける。
  2. 機密情報を取り扱うPCを隔離環境で運用する。

システムのセキュリティ強化

ITシステム全体のセキュリティを強化することで、情報漏洩のリスクを低減します。

実施例

  1. USBデバイスの接続を禁止するポリシーを設定する。
  2. エンドポイントセキュリティツールを導入し、リアルタイム監視を行う。

社員教育の実施

社員への教育は、情報漏洩を防ぐ上で非常に重要です。

研修内容の例

  1. 情報セキュリティの基礎知識を学ぶ研修を実施する。
  2. 機密情報の取り扱いに関するルールを周知徹底する。

まとめ:退職者によるUSBを用いた情報漏洩対策には、早めの調査が不可欠

退職者によるUSBメモリを用いた情報持ち出しは、今なお企業にとって深刻なリスクです。
持ち出された情報が競合他社に流出すれば、営業秘密の漏洩やブランドイメージの毀損、取引停止、損害賠償など、経営に直結する重大な被害をもたらす可能性があります

特にUSBを介した情報漏洩は、ネットワークを使わない物理的な手口であるため、従来のセキュリティ監視だけでは発見が難しいのが実情です。
そのため、兆候に気づいた段階で、ログ解析やUSB接続履歴の確認、フォレンジック調査といった専門的な対応を速やかに実施することが重要です

フォレンジック調査では、USB接続の履歴やファイル操作の痕跡、削除済みデータの復元などを通じて、誰が・いつ・どのデータを・どのように持ち出したのかを明らかにすることが可能です。
加えて、調査結果を法的証拠として保全できるため、企業としての説明責任や法的対応にも耐えうる体制を整えることができます

企業の情報資産を守るためには、日常的なUSB利用の管理体制強化とあわせて、万が一に備えた調査体制の準備が不可欠です。情報持ち出しの兆候に気づいたときには、ためらわずにデジタルフォレンジックに対応した専門業者への相談を検討してください。

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