Albabat(.abbt)ランサムウェアとは何か?特徴と感染経路・初動対応を全面解説

Albabat(拡張子 .abbt)は、2023年以降に急速に拡大した新型ランサムウェアで、感染するとファイルが暗号化され、身代金が要求されます。実行ファイルやREADME.htmlの表示、壁紙変更など視覚的な被害も伴うことが特徴です。

本記事では、Albabatの感染挙動、初期対応の手順、フォレンジック調査の重要性、組織が取るべき防御策までを体系的に解説します。復旧や再発防止のためには、冷静な初動と専門的な調査が不可欠です。被害が疑われる場合は、まずは情報の確保と拡大防止を最優先に行動してください。

>>ランサムウェア感染時のおすすめ調査会社と選び方のポイントを解説

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Albabat(.abbt)ランサムウェアとは

Albabat(アルババット)ランサムウェアは、2023年11月に初めて確認されたランサムウェアで、ファイルを暗号化して「.abbt」拡張子を付け、復号と引き換えに金銭を要求するマルウェアです。

Albabatランサムウェアによって変更された壁紙

「実際の拡張子」画像出典:PCRisk

Albabatは、短期間で急速に進化を遂げているランサムウェアです。初期のバージョンであるv0.1.0(2023年11月)から、v0.3.0(2023年12月)、v0.3.3(2024年1月)へと、わずか数ヶ月で複数のアップデートが行われています。これにより、機能の追加や攻撃手法の高度化が進み、より巧妙な被害が発生しています。

感染すると、ユーザーのファイルはすべて暗号化され、ファイル名の末尾に.abbt拡張子が付与されます。また、デスクトップの壁紙が変更され、README.htmlというランサムノートが表示されます。このノートには、復号に必要な秘密鍵(Albabat.ekey)を攻撃者に送信し、0.0015 BTC(ビットコイン)の支払いを行うよう指示されています。相場により変動しますが、2024年当時で約1万円前後の金額に相当します。

ランサムノートは以下のパスに保存されます。

  • Windows:%USERPROFILE%\Albabat\readme\README.html
  • Linux:$HOME/Albabat/readme/README.html

連絡先メールアドレスはalbabat.help@protonmail.comで、支払い後に「Albabat.ekey」ファイルを添付して連絡するよう要求されます。

Albabatランサムウェアによって変更された壁紙

「実際の拡張子」画像出典:PCRisk

さらに、アルゼンチン、ブラジル、米国、ドイツ、ロシア、カザフスタンなど、国籍問わず感染事例が確認されており、個人でも企業でもリスクがあります。

出典:PCRisk

Albabat(.abbt)ランサムウェアの特徴

Albabatは、Rust言語で開発された高速な暗号型ランサムウェアであり、暗号化・身代金要求・壁紙変更といった複数の挙動を組み合わせています。以下のような特徴的な攻撃仕様が確認されています。

出典:PCRisk

高速暗号化と拡張子「.abbt」の付与

Albabatは最大5MBのユーザーファイルを対象に、高速で暗号化処理を行います。暗号化されたファイルには.abbt拡張子が付与され、アクセスできなくなります。

影響を受けるファイルと制限

OSファイルやシステムバイナリは対象外とされており、ユーザーのドキュメントやメディアファイルのみを狙って暗号化するため、システムの稼働を維持したまま身代金支払いを促す設計です。

README.htmlによる明確な支払い要求

感染後、README.htmlが自動生成され、復号には0.0015 BTCの支払いと、Albabat.ekeyファイルの提出が求められます。壁紙も変更され、ユーザーに強制的に通知されます。

Rust言語による高効率な攻撃

Albabatは、Rustで書かれたランサムウェアの中でも特に完成度が高く、処理の高速性、メモリ管理の堅牢性、クロスプラットフォーム対応が強みです。短時間で数千のファイルをロック可能です。

v2.0ではMac/Linux対応とGitHub利用

2025年4月時点で発見されたv2.0では、Linux/macOSへの拡張が確認されており、GitHub経由での設定ファイル取得機能も報告されています。今後の進化が警戒されています。

Trend Microの解析によれば、Albabat v2.0はWindowsに加えて、LinuxやmacOS向けのコマンドや構成を含むクロスプラットフォーム型に進化しています。構成ファイルはGitHub上の非公開リポジトリ(billdev.github.io)から取得されており、認証トークンを介してアクセスされていたことが確認されています。

同バージョンでは、以下のような機能が観測されています。

  • 対象ファイルの絞り込み: .bat, .cmd, .com, .cpl, .themepackなど一部形式のみに限定して暗号化
  • 除外フォルダ: AppData, Searches, System Volume Informationなどの除外設定
  • プロセス強制終了: taskmgr.exe, regedit.exe, winword.exe, excel.exeなどを停止して対策回避
  • PostgreSQLへの接続: 感染・支払い状況を追跡する外部DBとの連携が確認された

また、GitHubリポジトリ内には「2.5.x」という新バージョン用のフォルダも発見されており、仮想通貨ウォレット(BTC/ETH/SOL/BNB)の追加設定が含まれていたことから、Albabatの次世代型バージョン開発が進行中である可能性も指摘されています。

出典:Infosecurity Magazine

Albabatは単なる暗号化型ランサムウェアから、OS横断/構成ファイル分離管理/データ追跡機能付きのRaaS型攻撃ツールへと急速に進化しており、今後の脅威動向としても警戒が必要です。

Albabat(.abbt)感染時の初期対応

Albabat(.abbt)の感染が疑われる兆候を発見した場合、初動対応の正確さが被害拡大を防ぐ鍵となります。パニックに陥らず、冷静に対応し、以下の手順を実行してください。

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なお、自己判断での操作は重要な証拠データを消してしまう可能性があり、復旧や調査が困難になる恐れがあります。

ネットワークからの隔離

インシデント対応において、最も優先すべき行動は「被害拡大の防止」です。感染が疑われる端末は、すぐにネットワークから物理的に切り離してください。

  • 有線LANの場合: LANケーブルを抜きます。
  • Wi-Fiの場合: Wi-Fi機能をオフにします。

ネットワーク切断により、Albabatが社内ネットワークで横展開し、他のサーバーや端末に広がるのを防げます。

証拠となるデータの保全

今後の調査や警察への届け出に備え、デジタル証拠を可能な限り保全することが重要です。

  • 電源は切らない::PCのメモリ上には攻撃の痕跡が残っています。シャットダウンすると重要な証拠が失われるため、電源は入れたままにしてください。
  • 操作しない:ファイルの削除や設定変更など、一切の操作を控えてください。意図せず証拠を破壊してしまう可能性があります。

身代金の支払いは厳禁

攻撃者はデータ復旧と引き換えに身代金の支払いを要求しますが、警察庁やセキュリティ機関は一貫して支払いを行わないよう強く推奨しています。支払いに応じたとしても、データが確実に復元される保証はなく、結果的に犯罪組織へ資金を提供することになります。さらに、「支払う企業」として認識され、将来的に再び標的にされるリスクも高まります。

専門家・関係機関への報告

自社だけで解決しようとせず、速やかに外部の専門家や関係機関に連絡してください。

  • 契約しているセキュリティベンダーやIT保守会社
  • フォレンジック調査の専門企業
  • 管轄の都道府県警察のサイバー犯罪相談窓口
  • 独立行政法人情報処理推進機構(IPA

ランサムウェア被害は、法的な対応が求められるサイバー犯罪です。自己判断での調査は、警察や法廷に提出すべき重要なデジタル証拠を破壊してしまうリスクがあります。自社を法的に守るためにも、まずは証拠保全の専門家であるフォレンジック調査会社にご相談ください。

Albabat(.abbt)の被害を解明するフォレンジック調査の必要性

ランサムウェア被害からの復旧は、バックアップによるデータ復元だけでは不十分です。「なぜ・どこから・どのように侵入されたのか」という根本原因を明らかにしなければ、再発のリスクを抱えたままとなります。その原因究明と対策立案に不可欠なのが、フォレンジック調査です。

フォレンジック調査でわかること

フォレンジック調査とは、システムに残されたログや操作履歴、通信痕跡を収集・解析し、攻撃の事実関係を客観的に解明する専門調査です。

>>【解説】フォレンジック調査とは?調査の流れや専門会社を紹介

Albabat(.abbt)のようなRaaS型ランサムウェアでは、以下のような情報を明確にすることが可能です。

  • 侵入経路の特定:RDP、VPN脆弱性、Webアプリのゼロデイ、漏洩アカウント、マルウェア付きメールなど、Albabatに多い侵入手口を洗い出し、実際の侵入ルートを特定します。
  • 被害範囲の把握:攻撃者がアクセスしたサーバー、PC、アカウントを洗い出し、影響が及んだ範囲を明確にします。
  • 情報漏洩の全容解明:外部に流出した個人情報・技術資料・財務情報などの種類と量を確認します。
  • マルウェアの残存確認:Albabat(.abbt)以外のマルウェアや、将来の再攻撃を狙ったバックドアが残されていないかを検証します。
  • 法的証拠の保全:警察への通報や訴訟対応に備え、操作ログや通信履歴などの証拠データを正確な状態で保存します。

上記情報は、顧客や監督官庁への正確な報告や、再発防止策の策定に不可欠です。

>>おすすめのフォレンジック調査会社一覧|選び方・依頼の流れを解説

自力調査が招く「証拠汚染」のリスク

ランサムウェアの被害現場は、法的な観点から見れば「サイバー空間の事件現場」そのものです。自社のIT部門が善意で行う調査行為(再起動、ファイル操作、ウイルススキャンなど)が、操作ログやタイムスタンプを上書きし、証拠能力を失わせてしまうケースが後を絶ちません。

証拠が損なわれれば、警察の捜査や法的手続きが進められず、企業に不利な影響を与える可能性があります。

>>フォレンジック調査会社の選び方|費用・期間・おすすめ企業を解説

編集部おすすめ調査会社:デジタルデータフォレンジック(おすすめ度)

実績の数」「セキュリティの高さ」「技術力の高さ」「データ復旧技術の有無」の観点から、おすすめの調査業者は「デジタルデータフォレンジック」です。

こちらの業者は、民間の調査会社でありながら官公庁や大手企業との取引実績も多く信頼でき、法人様は最短30分でWeb面談可能、といったスピード対応も行っています。

まずは無料で相談・見積りまで行ってくれるようなので、不安な方は一度相談してみるとよいでしょう。

デジタルデータフォレンジック

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調査対象PC、スマートフォン、サーバ、外付けHDD、USBメモリ、SDカード、タブレット など
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ランサムウェア調査以外にも幅広い調査に対応しているだけでなく、ケースごとに専門チームが調査対応を行っているとのことで、高品質な調査が期待できます。さらに、警察への捜査協力も行っているなど、信頼がおける専門業者です。

相談・見積りを無料で行っているので、まずは電話かメールで問合せをしてみることをおすすめします。

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Albabatランサムウェアから組織を守るための予防・防御策

Albabat(.abbt)のような進化型ランサムウェアに対抗するには、技術的な対策だけでなく、運用・教育を含めた多層防御(Defense in Depth)の考え方が不可欠です。ここでは、組織が実施すべき具体的なセキュリティ対策を3つの観点から整理します。

システムとネットワークに対する技術的対策

  • 脆弱性パッチの即時適用: OSやアプリケーションのアップデートを定期化し、公開されたCVEの放置を防ぎます。
  • EDR・アンチウイルスの導入: エンドポイントの振る舞いを検知・分析できるEDRを活用し、未知のマルウェアにも対応します。
  • URLフィルタリング・サンドボックス検査: 不正なWebサイトやメール経由の攻撃を事前に遮断し、疑わしいファイルは隔離検査します。
  • バックアップの分離保管: オフライン環境または別セグメントにバックアップを取得・保管し、本番環境への感染を防ぎます。
  • MFA(多要素認証)の導入: VPNやM365、社内システムの認証にMFAを組み込み、パスワード単独認証の脆弱性を解消します。

セキュリティ運用とインシデント対応体制の構築

  • リアルタイム監視とログ分析: IoC(侵入の兆候)を収集・監視する体制を整え、異常検知時のアラートを即時処理します。
  • 最小権限の原則の徹底: 不要な管理者権限の排除と、役職・業務内容に応じたアクセス権限設定を行います。
  • インシデントレスポンス計画の策定: 万が一の発生に備え、初動対応フローやBCP(事業継続計画)との連携を事前に準備します。

従業員へのセキュリティ教育・啓発

  • 定期的なセキュリティ研修の実施: フィッシングメールや不正ソフトの見分け方など、基礎知識の定着を図ります。
  • 被害事例や模擬攻撃を用いた実践学習: 実際の被害事例や疑似訓練を通じて、リテラシーと危機対応力を高めます。
  • 「開かない・触らない・報告する」の徹底: 不審なファイルやリンクに対する初動ルールを社内で統一し、通報しやすい文化を育てます。

Albabatは、高速暗号化・複雑な侵入経路・復号困難といった特徴を持ち、日常的なセキュリティ対策の甘さを突いて侵入してきます。組織としては「予防・検知・対応・教育」すべてを備えたセキュリティ体制を築くことが最も有効な対策です。

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