米連邦航空局(FAA)のシステム障害によりアメリカ国内のすべての航空機が運航を一時見合わせる事態が起きたということです。アメリカ政府はサイバー攻撃の可能性は否定しています。航空機を追跡しているFlightAwareのデータによると、10000便近くが遅延し1300便以上がキャンセルされたようです。原因はNotice to Air Missions(NOTAM、ノータム)のシステム障害だということです。
空域や空港の情報をパイロットに通知するシステム
ノータムとは空域や空港等の安全に関する情報を航空機運航者等に提供するもので、ICAO(国際民間航空機関)の基準により各国が発行して航空機の安全な運航を図っているものです。空域や空港等に問題があるとパイロット等にアラートを通知して危険を知らせるシステムです。例えば空港の滑走路のライトが消えているとか、空域内で行われている航空ショーの情報など航空機を誘導する管制システムとは別に空域および空港施設等における情報を運航者に提供します。ノータムの発行は各国の当局が行っていますが、今回、米連邦航空局(FAA)がアメリカ国内の航空機の運航のために管理・運営しているノータムのシステムに障害が発生し、一時、アメリカ国内のすべての航空機の運航が停止となる事態となりました。
アメリカのノータムのシステムはアメリカ全土を対象としているため、今回、アメリカ国内のすべての航空機に影響が出る事態となったようです。メディアの報道によると、FAAの運航停止命令は現地時間の1月11日午前7時30分に出て90分後に解除されたということです。しかし、システム障害自体は前日の午後3時30分頃から発生していたということです。ノータムは1947年に確立され、初期の頃はフライト前に直接、乗務員に情報を伝達していたようですが、その後、電話で伝えるようになり、さらにデジタル化されて、現在はオンラインで情報が伝達されている経緯があるようです。このため今回の障害発生後もオンラインによらないアナログな方法で情報を伝えて対処していたものの、早朝を迎えて離発着する航空機が増大して対応が困難なことからFAAが運航停止に踏み切ったようです。
FAAツイッター「サイバー攻撃の証拠はない」
FAAはツイッターに「ノータムシステム停止の根本原因を特定するために、徹底的な調査を続けています。私たちの予備調査では、機能停止の原因をデータベースファイルの損傷に突き止めました。現時点では、サイバー攻撃の証拠はありません」と投稿しており、ノータムのシステムのデータベースファイルが損傷していたことを明らかにしています。また、サイバー攻撃の証拠はないとしています。ノータムのシステムのバックアップシステムも同様の障害が発生して機能しなかったとみられ、メディアが伝えるところによると、定期メンテナンスでファイルを別のファイルと交換をした際に問題があったとも言われています。
また、ノータムのシステムは必ずしも堅牢ではなく、システムを支えるバックグラウンドアーキテクチャの一部は古いとの指摘もあります。一方でFAAは次世代航空システムへのアップグレードを進めており、これまでに多額の投資をしてきたようです。アメリカで国内の航空機の運航が全面的に停止となったのは2001年9月11日の同時多発テロ以来だということです。
カナダのノータムシステムにも異常発生
さらにアメリカ国内の航空機の運航が一時停止されたその同じ日に、カナダのノータムのシステムも停止して情報の新たな発行に影響が出たということです。アメリカで航空機の運航が停止されたのが現地時間の11日午前7時30分頃から午前9時頃までで、カナダのノータムに問題が起きたのが同日午前10時20分頃からということですから、まさに連続してアメリカとカナダのノータムのシステムに異常が起きたということになります。ただ、今のところアメリカとカナダの障害に関連があるとは見られていないようです。カナダでは数時間で問題が解消され、アメリカのように航空機の運航に直接影響が出ることはなかったということです。
ちなみに日本におけるノータムの発行は、かつては各空港で対応をしていたようですが、2007(平成19)年7月1日より航空情報センターの運用が開始されたことに伴い、現在は成田空港に置かれている同センターが一元的に管理・発行を行っているようです。