この記事の要点
- 当社のX投票(198票)では、情報を漏らした企業やサービスを「使い続ける」が約7割(70.2%)。ただし最多は「気になるが利用が必要であれば続ける」(42.4%)で、多くは“仕方なく”の継続だった
- 国内の別の調査でも、漏えいを知ったら「しばらく利用を控える」が62.4%(エルテス)、誠実に対応されても「やめる」が37.8%(UPF)。一方、米国で実際に取引をやめた人は11%という調査もあり、「言うこと」と「やること」には差がある
- 利用者が企業に最も求めているのは、補償より説明。「何が漏れたのか」「原因と経緯」「公表の速さ」の合計は76.8%で、「補償・お詫び金」は10.4%にとどまる(UPF)
- 使い続けるかどうかは、漏れた情報の種類で判断するのが現実的。カード情報やパスワードが漏れたなら、すぐにできる対策がある
- やめると決めた場合も、退会の前にやっておくべきことがある。法律上、一定の漏えいが起きた企業には、自分の情報の利用停止や消去を求められる
「お客様の個人情報が流出した可能性があります」――そんな通知を受け取ったとき、あなたはそのサービスを使い続けますか。それとも、やめますか。
情報漏えいはいまや珍しいニュースではありません。東京商工リサーチによると、2026年は10月5日までに、上場企業とその子会社による100万件以上の個人情報漏えいが10件に達し、2025年1年間の6件をすでに上回りました(ScanNetSecurity)。当サイトが集計した10月の国内のサイバー攻撃・情報漏えい事案も130件にのぼります(10月のまとめ)。
当社はXで、利用者がこうした企業をどう見ているのかを尋ねる投票を行いました。本記事では、その結果を国内外の調査の数字と比べながら、利用者の目線で、離れる理由・離れられない理由、企業に求めること、そして自分の身を守る方法までを整理します。
当社のX投票の結果
設問:「サイバー攻撃が日常化した今、自分の情報を漏洩した企業やサービスについてどう感じる?」

| 選択肢 | 割合 | 票数(概算) |
|---|---|---|
| 特に気にせず利用し続ける | 27.8% | 約55票 |
| 気になるが利用が必要であれば続ける | 42.4% | 約84票 |
| 基本的に利用を控える | 21.2% | 約42票 |
| 解約して二度と使わない | 8.6% | 約17票 |
| (合計)使い続ける | 70.2% | 約139票 |
| (合計)控える・やめる | 29.8% | 約59票 |
票数は、合計198票に各選択肢の割合を掛けて当社が算出した概算です。使い続ける人のうち、「気にせず」は4割、「気になるが必要なら」は6割。使い続ける人の多くは、納得して残っているのではなく、やめられないから残っていることが分かります。
ほかの調査と比べると:「やめる」は4〜7割、でも実際にやめるのは1割?
情報漏えいの後に利用者がどう動くかは、国内外でたびたび調べられています。主な結果を並べてみます。
| 調査 | 時期・対象 | 主な結果 |
|---|---|---|
| 当社X投票 | 2026年10月、198票 | 控える・やめる 29.8%(控える21.2%、二度と使わない8.6%) |
| エルテス | 2026年10月、20〜79歳の500人 | 漏えいが明らかになったら何らかの行動をとる76.0%。しばらく購入・利用を控える62.4%、退会・アカウント削除27.9%、二度と購入・利用しない21.8%(複数回答)。企業への信頼が低下する74.8% |
| UPF | 2026年9月、20〜60代の500人 | 企業が誠実に対応しても「やめる」「どちらかといえばやめる」が合わせて37.8%。漏えいの通知を受け取ったことがない人では49.1% |
| Gemalto(現Thales) | 2017年、日本を含む11か国の約1万500人 | 漏えいを起こした企業との取引をやめる70% |
| IAPP | 2023年、世界の消費者 | 漏えいがあった企業との取引を「ときどき」または「いつも」やめる57% |
| RAND研究所 | 2016年、米国の成人2,038人 | 漏えいの通知を受けた後、実際にその企業との取引をやめたのは11% |
出典:エルテス(新潟日報)、UPF(PR TIMES)、Gemalto(Security NEXT)、IAPP、RAND。
数字には大きな幅があります。目を引くのは、「やめると思う」と答える人は4〜7割いるのに、実際に通知を受けた人のうち本当にやめたのは1割程度だったというRANDの結果です。調査の時期も国も違うので単純には比べられませんが、意向と行動の間に差があることはうかがえます。
当社の投票で最も多かった「気になるが利用が必要であれば続ける」は、まさにこの差を表しているといえます。不安はある。でも、やめられない。その理由を次に見ていきます。
利用者はなぜ「やめられない」のか
1. 代わりがない、乗り換えが面倒
勤務先が指定するサービス、行政や学校の手続き、毎日使う通信や決済、ポイントや購入履歴がたまった会員サービス。こうしたものは「漏れたからやめる」と簡単には言えません。乗り換えには、新しいサービスへの登録や引き継ぎの手間がかかり、ためたポイントを失うこともあります。
2. 「どこでも漏れている」という諦め
マクロミルが2026年10月に公表した2,000人の調査では、58.5%が「自分の情報は漏洩していると思う」と答えました(マクロミル)。個人情報保護委員会が処理した民間事業者の漏えい等の報告は、令和6年度に1万9,056件で過去最多、令和7年度も1万7,139件にのぼります(労務ドットコム)。東京商工リサーチの集計では、2025年に上場企業とその子会社で漏えい・紛失した個人情報は3,063万人分を超えました(Web担当者Forum)。
「どうせ、どこかでもう漏れている」と感じれば、1社をやめても意味がないと考えるのは自然です。当社の投票で「特に気にせず利用し続ける」が27.8%いたのも、こうした諦めの表れかもしれません。
3. 通知を受けた経験で、受け止め方が変わる
UPFの調査では、誠実に対応されても「やめる」と答えた人は全体で37.8%でしたが、漏えいの通知を受け取ったことがない人では49.1%でした。実際に通知を受けた経験のある人のほうが、やめる割合は低いことになります。想像しているときより、実際に当事者になったときのほうが「やめられない現実」に直面するのかもしれません。
利用者が本当に求めているのは「補償」より「説明」
では、漏えいを起こした企業に、利用者は何を求めているのでしょうか。UPFの調査結果が参考になります。
| お詫び・通知で最も重視すること | 割合 |
|---|---|
| 自分の何の情報が漏れたのかの明確さ | 36.8% |
| 漏えいの原因と経緯の説明 | 20.4% |
| 公表・連絡の速さ | 19.6% |
| 補償・お詫び金 | 10.4% |
| 経営責任者からの謝罪 | 6.8% |
説明に関わる上位3項目を合わせると76.8%。「補償・お詫び金」の10.4%、「経営責任者からの謝罪」の6.8%を大きく上回ります。通知を受けた経験のある人では、「何の情報が漏れたのか」が44.1%に上がり、「経営責任者からの謝罪」は1.8%に下がりました。
お詫び金は「500円」で納得するのか
漏えいの後、500円分のプリペイドカードやポイントを配る企業は少なくありません。しかしUPFの調査で「500円程度」で納得すると答えたのは5.6%でした。「1,000円程度」は18.8%、「3,000円以上は必要」は22.0%。そして最も多かったのは、「金額の問題ではない」の41.2%です。この回答は20代で29.0%、60代で56.0%と、年齢が上がるほど多くなりました。
不信感を招くのは「遅さ」と「説明不足」
エルテスの調査では、80.4%が漏えいした企業の対応に不誠実さや不信感を覚えると答えました。理由は、公表・説明までの時間の長さ(51.2%)、説明や続報の不足(47.5%)、補償・サポートの不足(41.8%)の順でした。また、最も強い憤りを感じる原因は、外部からの攻撃よりも、従業員や退職者による情報の不正な持ち出し・転売(38.4%)でした。
信頼を取り戻すのは「対策の強化と公表」
UPFの調査で、信頼回復に効果があると思うことの1位は「セキュリティ対策の強化・公表」(45.0%)でした。「経営陣の交代・処分」は3.6%で最下位です。利用者が見ているのは、誰が責任を取るかよりも、同じことが二度と起きないように何をしたのかだといえます。
使い続けるかどうかは「何が漏れたか」で判断する
Gemaltoの調査では、漏えいした情報の種類によって、取引を再開しないと答えた人の割合が変わりました。金融情報や機密性の高い情報が漏れた場合は67%、パスワードのみの場合は51%、金融以外の情報のみの場合は49%です。エルテスの調査でも、最も不信感を抱く情報は「クレジットカード情報・金融口座情報」(66.4%)でした。
利用者にとって現実的なのは、感情だけで決めるのではなく、漏れた情報が何で、どんな被害につながるのかを見て判断することです。
| 漏れた情報 | 起こりうる被害 | すぐにやること |
|---|---|---|
| メールアドレス | 詐欺メールや迷惑メールが増える。漏えいを口実にした「補償のご案内」などの偽メール | メールのリンクを開かず、公式サイトやアプリから確認する |
| 氏名・住所・電話番号 | 迷惑電話、なりすましの勧誘、DMの増加 | 心当たりのない電話や郵便物の内容を、その場で信じない |
| パスワード(ログイン情報) | 不正ログイン。同じパスワードを使っているほかのサービスも乗っ取られる | 漏えいしたサービスと、同じパスワードを使っているサービスすべてで変更し、二段階認証を設定する |
| クレジットカード情報 | 不正利用 | カード会社に連絡してカード番号を変える。明細を数か月は確認する |
| 運転免許証などの本人確認書類の画像 | なりすましでの契約や口座開設 | 警察や発行元への相談、信用情報の確認。詳しくはタイムズカーの事例を参照 |
| 購入履歴・利用履歴 | 個人の生活や好みが知られる。それを使った巧妙な詐欺 | 履歴に触れた連絡ほど警戒する |
エルテスの調査では、62.6%が漏えいによる実害や不都合を経験したと答え、最も多かったのは「迷惑メール・不審電話の急増」(44.7%)でした。漏えいは「知らされて終わり」ではなく、その後の生活に影響が続くことがあります。
「使い続ける」と決めたときのチェックリスト
| タイミング | やること |
|---|---|
| 通知を受けたらすぐ | 通知が本物か、企業の公式サイトの発表で確かめる(通知メールのリンクは開かない)。何の情報が漏れたのかを確認する |
| 当日〜数日以内 | パスワードを変更し、同じパスワードを使い回しているサービスも変える。二段階認証を設定する。カード情報が漏れた場合はカード会社に連絡する |
| 数週間〜数か月 | カードの明細、登録情報(メールアドレス・住所など)が勝手に変えられていないかを確認する。漏えいを名乗る詐欺メールやSMSに注意を続ける |
| 困ったとき | IPAの「情報セキュリティ安心相談窓口」は、個人情報が漏えいした人からの相談にも対応している(既報)。お金の被害は警察や消費生活センターにも相談する |
「やめる」と決めたときに、退会の前にやること
やめると決めた場合も、いきなり退会ボタンを押す前に確認したいことがあります。
- 自分の情報の消去を求める:個人情報保護法では、個人情報保護委員会への報告が必要になるような漏えいが起きた場合、本人は企業に対して、自分の情報の利用停止や消去を求められます。退会しただけでは、データが残ることがあります
- 登録しているカードを外す・番号を変える:支払い方法として登録しているカードを削除し、漏えいの対象ならカード番号を変える
- 連携を解除する:ほかのサービスのアカウントでログインしていた場合は、連携を解除する
- ポイントや履歴を整理する:失いたくないポイントや、領収書などの記録が必要なら先に保存する
- パスワードの変更は退会後も必要:同じパスワードをほかのサービスで使っていたなら、退会しても変更は欠かせない
海外では、漏えいの後に多くの利用者がデータの削除を求めた例があります。遺伝子検査サービスの米23andMeは、2023年に約700万人分の情報が漏えいし、2025年3月に経営破綻しました。同年6月の米下院の公聴会で同社は、破綻の後に約190万人(利用者の約15%)がデータの削除を求めたと説明しています(Business Insider)。
企業にとっての意味:「7割残るから大丈夫」ではない
最後に、企業の側から見た数字にも触れておきます。IBMの2025年の調査では、日本の企業がデータ侵害で受ける損失は平均5億5000万円でした(@IT)。2025年にランサムウェア被害を受けたアスクルは、52億1,600万円の特別損失を計上しています(Web担当者Forum)。帝国データバンクの調査では、情報漏えいを経験した企業は16.2%にのぼります(既報)。
そのうえで、利用者の数字から読み取れるのは次のことです。
- 残ってくれた利用者は「信頼している」わけではない:「気になるが必要なら続ける」人は、次の事故や不誠実な対応をきっかけに離れていく
- 求められているのは、お詫び金より説明:何が漏れたのか、なぜ起きたのか、利用者は何をすればよいのかを、速く具体的に伝える。そのためには、自社がどこにどんな情報を持っているかを平時から把握しておく必要がある
- 信頼を取り戻すのは、対策の強化と公表:再発防止策を示し、その進み具合を報告し続ける
- 気づくのが遅いほど、説明できることは減る:侵入に早く気づける監視体制があれば、被害の範囲を絞り込み、速く公表できる
経営トップの記者会見がどう受け止められたかは、GMOの会見を整理した記事でも取り上げています。
よくある質問
Q. 当社のX投票の結果は、世の中全体の意見とみてよいですか?
いいえ。当社のXアカウントで実施した198票の投票で、回答者の属性は分からず、無作為に選んだ調査でもありません。本記事では、ほかの調査の結果と並べて傾向を読むための参考値として扱っています。
Q. 漏えいの通知が来たら、まず何をすればよいですか?
通知が本物かどうかを、企業の公式サイトの発表で確かめてください。通知を装った詐欺メールもあるため、メールのリンクは開かないほうが安全です。そのうえで、何の情報が漏れたのかを確認し、パスワードの変更やカード会社への連絡など、漏れた情報に応じた対策をとります。
Q. お詫びの500円分のポイントを受け取ると、損害賠償を求められなくなりますか?
お詫びの品を受け取っただけで請求できなくなるとは限りませんが、受け取る際に何らかの合意を求められていないかは確認してください。具体的な判断が必要な場合は、弁護士や消費生活センターに相談することをおすすめします。
Q. 退会すれば、自分の情報は消えますか?
退会しても、企業のデータベースに情報が残ることがあります。個人情報保護委員会への報告が必要になるような漏えいが起きた場合、本人は企業に情報の利用停止や消去を求められます。退会と合わせて、消去を求めることも検討してください。
Q. 同じ会社が何度も漏えいを起こしたら、どうすべきですか?
短い期間に漏えいを繰り返す場合は、対策が十分でない可能性があります。とくにカード情報やパスワードなど被害につながりやすい情報を預けている場合は、利用をやめることや、預ける情報を減らすことを検討してよいでしょう。
まとめ:「仕方なく使い続ける」なら、自分を守る行動をセットに
当社のX投票では、情報を漏らした企業やサービスを使い続ける人が約7割にのぼりました。しかし最も多かったのは「気になるが必要なら続ける」という消極的な継続です。国内外の調査でも、「やめる」と答える人は少なくない一方で、実際にやめる人はそれほど多くないという差が見えます。
利用者にとって大切なのは、やめるかどうかを感情だけで決めるのではなく、漏れた情報が何かを確かめ、それに合った対策をとることです。使い続けるならパスワードの変更や二段階認証を、やめるなら情報の消去の請求を。そして企業にとって大切なのは、残ってくれた利用者の不安に、補償よりも、速く正確な説明と再発防止の行動で応えることです。
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