企業が社内不正やサイバー攻撃、情報漏洩といったセキュリティインシデントに直面したとき、原因の特定や被害の範囲を明らかにする手段としてフォレンジック調査が活用されます。
しかし、「実際に依頼するといくらかかるのか?」「その調査費用は妥当なのか?」という費用面での不安から、調査をためらう企業担当者も少なくありません。
フォレンジック調査は内容も料金体系も複雑になりがちで、正しい知識がないまま依頼すると、高額な費用をかけて“意味のない調査”をしてしまうリスクすらあります。
そこで本記事では、以下の3つを中心に、費用の妥当性を見抜き、適切な依頼判断ができるよう徹底解説します。
- フォレンジック調査の費用相場と内訳
- 高額な費用になる背景と費用を左右する要因
- 料金体系が明確な信頼できるフォレンジック調査会社の選び方
「費用をかけてでも確実な証拠を取りたい」「でも予算を無駄にはしたくない」という方は、ぜひ参考にしてください。
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フォレンジック調査とは?
フォレンジック調査とは、パソコンやスマートフォン、サーバーなどのデジタル端末に対して、
ログやデータの解析を行い、「いつ・誰が・何をしたか」といった証拠を収集する調査手法です。
不正アクセス、情報漏えい、社内不正、ハラスメントなどの事案に対し、法的な証拠能力を持つ調査結果を取得することを目的としています。
企業では、内部統制やリスクマネジメントの一環として活用されており、調査は高度な専門技術を持つ業者によって行われることが多いです。
なお、フォレンジック調査の内容や目的によって、費用や調査範囲も大きく異なるため、基本的な仕組みを理解しておくことは重要です。
フォレンジック調査のより詳しい仕組みや調査手順、対応業者については以下の記事もご覧ください。
>>フォレンジック調査会社の選び方|費用・期間・おすすめ企業を解説
フォレンジック調査対象となるインシデント
フォレンジック調査が実施される具体的なケースは、以下のようなセキュリティインシデントや内部不正が代表的です。
- ハッキング・不正アクセス
- マルウェア(ウイルス)感染
- ランサムウェア感染
- ビジネスメール詐欺
- Web改ざん
- 社員や退職者による情報持ち出し
- 横領
- 労働問題(職務怠慢・ハラスメント等)
上記のような事案では、被害の実態把握や証拠収集の必要性が高く、フォレンジック調査が実施される典型的なケースです。
フォレンジック調査にかかる費用
フォレンジック調査の費用は、デジタル機器一台につき数万円から数百万円程度と調査の台数や調査内容によって大きな幅があるとされています。
ここではフォレンジック調査を専門の調査会社に依頼した場合にかかる費用面を中心に、おもに下記の内容を紹介します。
- フォレンジック調査会社の料金体系
- フォレンジック調査にかかる費用の内訳
フォレンジック調査会社の料金体系
フォレンジック調査会社の料金体系は依頼する調査会社によって異なり、主に以下の2種類があります。
- 調査内容ごとに料金が変動する
- 調査内容に関わらず一律料金
料金が変動する場合、調査内容や台数が多いほど料金は高額になっていきますが、発生したインシデントに対して最適なサービスと料金を提案してもらえます。
例えば基本的なフォレンジック調査のログの解析やデータの復元よりも、高度な技術が要求されるマルウェア解析や不正アクセス調査は、より高額な費用がかかる傾向にあります。
一方で一律料金の場合、調査内容や端末台数に関係なく料金が決まっているため、費用を安く抑えられることがあります。一方でマニュアル化された調査内容しか受けられないことがあり、攻撃の痕跡を残さないサイバー攻撃などに対し、適切な調査を行えず、脆弱性を見逃す可能性があります。
フォレンジック調査にかかる費用の内訳
フォレンジック調査にかかる費用の内訳は大まかに分けて下記のとおりです。
- 保存費
- 技術費
- 調査費
保全費
フォレンジック調査では、証拠となるデータや情報を収集し、インシデントの原因や経緯を特定します。ただし、デジタルデータは変動しやすく、簡単に変更・削除される可能性があります。
そこでフォレンジック調査が実際に開始される前に、証拠となるデータやデバイスのコピーを取得する作業が行われます。これは「証拠保全」と呼ばれ、フォレンジック調査のかなめとなります。
技術費
技術費は、フォレンジック調査の準備段階で必要となる費用です。
調査に使用する専用ツールやソフトウェアのライセンス料、環境の整備、技術者の作業準備などが含まれます。
具体的には、以下のような費用項目があります。
- フォレンジックツールや解析ソフトのライセンス料・維持管理費
- 調査機材やソフトの設定、環境構築などにかかる技術者の作業費用
調査費
調査費は、フォレンジック調査の中核となる実作業にかかる費用で、主にデータの解析、復元、証拠の収集、報告書作成などが対象となります。
代表的な費用項目は以下の通りです。
- データ解析や復元作業にかかる費用(マルウェア解析、ログ調査など)
- フォレンジック技術者の作業時間に応じた人件費
- 調査結果をまとめる報告書の作成料
以上のような要因から、フォレンジック調査の費用は「証拠保全」「解析」「報告書作成」など複数の項目に分かれて内訳されるのが一般的です。
また、依頼する調査会社によっても費用は大きく異なり、特に大企業向けに高度なサービスを提供している業者では、対応体制や専門人材のレベルに比例して、料金が高額になる傾向があります。
このように、状況によって費用負担が大きくなることもありますが、一部の費用はサイバー保険で補償されるケースもあるため、あわせてフォレンジック費用の保険適用範囲を確認しておくと安心です。
フォレンジック料金が高額になる理由
フォレンジック調査の料金が数十万円から数百万円、またはそれ以上に高額になる理由は、
主に以下の3つが挙げられます。
- フォレンジック専用ツールや解析設備の導入・維持コスト
- 高度な専門知識・経験を有する技術者の人件費
- インシデントの複雑さに応じた作業工程・調査範囲の広さ
特に、ランサムウェア感染や大規模な不正アクセスなど、最新の手口によるサイバー攻撃に対しては、
高機能な解析ツールや、大規模なデータ解析用の設備が必要となり、費用が跳ね上がる傾向があります。
また、社内不正や労務問題といったケースでは、調査結果が裁判などで「法的証拠」として通用するかどうかが問われることもあります。このような場面で必要とされる証拠能力の要件については、デジタルフォレンジックの証拠能力に関する解説をご覧ください。
さらに、フォレンジック調査には高度な専門知識と経験が必要となるため、一般的な社内SEよりも高いスキルを持つ技術者を確保する必要があり、人件費も高額になりがちです。
一方で、「料金が高ければ質が高い」とは限りません。
中には、相談段階から料金が発生したり、最初に低額の見積もり費用を提示し、後から高額なオプション料金を上乗せしてくる業者も存在します。
こうしたケースを避けるためにも、フォレンジック調査を依頼する際は必ず複数社に相見積もりを取り、 内訳の透明性・対応範囲・証拠能力の説明などを比較検討することが重要です。
フォレンジック調査の流れと費用が発生するタイミング
フォレンジック調査は、単なるデータ確認作業ではなく、法的証拠として利用可能な形で事実関係を明らかにする専門的な調査です。
そのため、調査は一定の手順に沿って進められ、各工程で費用と時間の両方が発生するのが一般的です。
作業の内容や範囲によっては、1日〜数ヶ月かかることもあり、作業工程ごとに「いつ」「何に対して」費用が発生するのかを把握することが、調査費用の妥当性を見極めるうえでも重要です。
ここでは、フォレンジック調査の代表的な流れと、それぞれの工程で費用が発生するタイミングについて解説します。
証拠保全作業
証拠保全は、調査対象のパソコンやサーバー、外部ストレージなどから、データの完全な複製(ディスクイメージ)を取得する作業です。
これにより、原本に手を加えることなく調査ができ、証拠の真正性(改ざんされていないこと)を確保できます。作業内容には、以下が含まれます。
- ディスクイメージの取得
- ログファイルの収集
- メモリダンプの取得
- ネットワークトラフィックの保存(必要に応じて)
この工程は、専用ツールと高度な知識を要する作業であり、誤った手順を踏むと証拠価値が失われる恐れがあるため、必ず専門技術者によって慎重に行われます。
証拠保全作業の金額は、ストレージ容量や機器の種類、保全対象の数によって増減します。
また、多くの調査会社では、この工程に着手した時点でキャンセル不可とされることが多く、費用発生の起点となる重要なフェーズといえます。
この段階で初動対応を誤ると、調査範囲が拡大してしまい、結果的に費用が高額になるケースもあります。正しい対応フローについては、フォレンジック初動対応マニュアルで事前に確認しておくと安心です。
データ復旧・復元
データ復旧は、削除・破損されたファイルやログを復元する工程です。
攻撃者による痕跡隠滅や、マルウェア感染によるファイル破損があるケースで実施されます。
復旧作業では以下が行われます。
- 削除済みファイルの復元
- 消去されたログの回収
- 未使用領域やゴミ箱領域の解析
- 破損ディスクのセクタ単位スキャン(必要時)
復旧はすべてのケースで必要なわけではありませんが、物理障害の発生や、暗号化データへの対応が必要な場合は、追加費用が発生する可能性があります。
また、多くの調査会社ではこの工程がオプション扱いとなっており、見積もりに含まれているかを事前に確認しておくことが重要です。
データ解析作業
データ解析は、保全されたデータをもとに、インシデントの原因、被害範囲、攻撃経路、内部不正の証拠などを洗い出す作業です。
フォレンジック調査の中で最も時間と技術力を要する工程であり、費用の中でも大きな割合を占めるポイントです。解析作業の内容の例は以下の通りです。
- 不審なアクセスログの確認
- ファイル操作履歴の調査
- マルウェアの動作解析
- 外部への通信ログの追跡
- ユーザー操作やアクセス権限の確認
この作業は、ツールによる自動処理だけでは不十分であり、
フォレンジック専門技術者が仮説を立てて、手動でデータを精査・検証していきます。
したがって費用の相場は10万円から多い場合は数百万円が見込まれる場合があり、調査対象が複数台だったり、クラウド・仮想環境が含まれる場合はさらに費用が上乗せされる場合があります。
調査報告書の作成
調査報告書の作成は、フォレンジック調査の最終工程であり、調査全体の成果を形として残す重要な作業です。これまでに実施された保全・復旧・解析の結果を整理し、第三者が見ても調査内容と結論を理解できる形で文書化します。
報告書には、調査の目的や対象範囲、使用した手法、発見された事実、時系列の整理、技術的な分析結果などが詳細に記載されます。
さらに、訴訟や行政機関への提出を想定する場合には、法的証拠としての要件を満たす記述形式と構成が求められます。
また、経営層や非技術部門向けに、専門用語を避けた要約や、意思決定に役立つポイントを整理したサマリーを添付することも一般的です。
このように、読み手に応じて文書の構成やレベルを調整する必要があるため、報告書の作成には高度な専門性と実務経験が不可欠です。
調査会社によっては報告書作成が基本料金に含まれていない場合や、「簡易報告」と「詳細報告」で費用が大きく異なるケースもあります。
そのため、報告書の形式・内容・費用の取り扱いについては、見積もり段階で明確に確認しておくことが重要です。
フォレンジック調査の費用で失敗しないための調査会社の選び方
フォレンジック調査は費用が高額になりがちですが、金額の大小だけで業者を選ぶと、必要な証拠が取れない、余計な費用が発生するなどのリスクもあります。
そこで本章では、費用の妥当性を見抜き、調査結果の価値と価格が釣り合っているかを判断するための基準を、4つに整理して解説します。
- 費用が発生するタイミングを明示しているか
- キャンセル時の費用が発生するか
- 見積もりに「内訳」が明示されているか
- 初期費用や最低費用が明確か
費用が発生するタイミングを明示しているか
まず重要なのは、費用がどの時点で発生するかが明確に示されているかどうかです。
フォレンジック調査では、初回相談は無料でも、「証拠保全作業に着手した段階から費用が発生する」といったケースが一般的です。
- 初回ヒアリング
- 機器の預かり
- 証拠保全の開始
といった各フェーズで、どこからが有償になるのかを明示している会社は信頼性が高いといえます。
反対に、費用発生の基準が曖昧なままだと、トラブルの原因になりやすいため注意が必要です。
キャンセル時の費用が発生するか
依頼後に、やむを得ず調査を中止せざるを得ないケースも考えられます。
そのため、キャンセル時の費用負担が発生するかどうかを確認しておくことも重要です。
多くの調査会社では、契約成立に同意した後に証拠保全作業や初動調査まで着手していた場合、その工数に応じたキャンセル費用が請求されます。
一方で、まだ作業に入っていなければキャンセル料が不要と明記されている会社もあります。
事前に「キャンセル時はどの範囲まで無料か」「着手後の中止はどうなるか」など、具体的な取り決めがあるかどうかを確認しておくことで、予期せぬ請求を避けることができます。
明確なキャンセルポリシーがある会社は、契約前に正直な説明をしてくれる傾向があり、価格だけでなく姿勢の誠実さを判断する材料になります。
見積もりに「内訳」が明示されているか
フォレンジック調査費用の見積もりが「一式 ○○万円」と極めて簡略な記載のみの場合は注意が必要です。
フォレンジック調査では、以下のように複数の工程に分かれて費用が構成されるのが一般的です。
- 証拠保全費(イメージ取得・データ確保)
- 技術費(データ解析・ログ分析など)
- 報告書作成費(調査結果の文書化)
これらの内訳が明確に分かれて記載されているかどうかで、調査会社の誠実さや透明性を判断することができます。
内訳が不明な見積もりは、あとから不明瞭な費用が追加されるリスクがあるため、妥当な価格かどうかを判断する基準が持てません。
後から追加費用が発生するトラブルを避けるためにも、見積書の項目ごとの金額と作業範囲の確認は必須です。
初期費用や最低費用が明確か
フォレンジック調査には、対象機器が1台のみの場合でも、一定の最低費用が設定されていることが一般的です。
特に、専門技術者による対応や専用機材の使用が伴うため、簡単な調査であっても10万円〜20万円程度からの料金設定がなされている場合が多く見られます。
このような初期費用や最低費用の金額があらかじめ明示されているかどうかを確認することで、
「想定より高かった」「簡単な相談だけのつもりだったのに費用がかかった」といったトラブルを防ぐことができます。
また、「初動調査のみを行うプラン」など、依頼内容をカスタマイズできる調査会社であれば、予算に応じて柔軟に依頼範囲を調整することも可能です。
なお、サイバー保険によって調査費用が補償されるケースもあるため、申請条件や補償対象となる費用項目についても、事前に確認しておくことをおすすめします。
編集部おすすめ調査会社:デジタルデータフォレンジック(おすすめ度)
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規模が大きな調査会社でありながら、Wi-Fiの乗っ取り・ハッキング調査などの実績もあるようですし、24時間365日の相談体制、ニーズに合わせたプランのカスタマイズなど、サービスの利用しやすさも嬉しいポイントです。
まとめ
フォレンジック調査は、専門性が高く一般的なサービスではないため、費用の相場感や見積もりの内訳について十分な情報が得られにくいのが現状です。
そのため、「価格が妥当なのか」「この調査範囲では適正価格か」といった判断に迷うケースも少なくありません。
調査費用を比較する際は、金額だけでなく「費用発生のタイミング」「内訳の明示」「キャンセル時の条件」などを事前に確認することが、失敗しないための大切なポイントです。
特に初動の対応によって費用総額が大きく変わることもあるため、相談段階から誠実な説明を行う調査会社を選ぶべきです。
最近では、無料相談や見積もりを受け付けているだけでなく、予算に応じた柔軟な調査プランを提案してくれる企業も増えています。
サイバー攻撃や社内不正などの疑いがある場合は、複数の調査会社に相談し、内容と費用の両面から比較検討することをおすすめします。