近年、企業を狙ったランサムウェア攻撃が巧妙化しており、一度感染すると業務停止や顧客情報流出など深刻な影響をもたらします。中でも、身代金要求に加えて情報公開をちらつかせる「二重恐喝型」の手口が増加しており、企業の信頼を根本から揺るがす事例も発生しています。
本記事では、世界各国で実際に発生した深刻な被害事例を中心に紹介し、あわせて感染時に取るべき初動対応、調査会社の選び方まで包括的に解説します。
>>ランサムウェア感染時のおすすめ調査会社と選び方のポイントを解説
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ランサムウェアとは
ランサムウェアとは、企業のデータを暗号化し、復号と引き換えに身代金を要求するマルウェアです。感染すると業務が停止し、顧客情報や社内機密の漏洩リスクも高まります。
>>ランサムウェアとは何か?特徴・感染経路・初動対応を全面解説
実際、IPAが発表する「情報セキュリティ10大脅威」では、ランサムウェアによる被害が法人分野で10年連続1位となっており、影響の大きさが浮き彫りになっています。
被害は経済的損失にとどまらず、企業の信用や取引先からの信頼を失う可能性もあります。感染時に備えて、以下のような対策が重要です。
- 感染後の対応フローの策定
- 定期的なバックアップの実施
- ウイルス対策ソフトやEDRの導入
なお、ランサムウェアの具体的な感染経路や最新の手口について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
>>ランサムウェアの感染経路とは? 最新の傾向と防止対策を解説
世界的に影響を及ぼしたランサムウェア被害事例
ここでは、国内外の中でも特に国際的な注目を集めたランサムウェア被害に紹介します。インフラや医療機関、政府を巻き込んだ事例は、一企業にとどまらない波紋を広げています。
なお、日本国内の最新事例を網羅的に知りたい方は、以下の記事で詳しく解説しています。
- KADOKAWA【出版・動画サービスを直撃した大規模ランサム攻撃】
- NHS・Synnovis【血液検査システム停止と患者データ400GB流出】
- Medibank【オーストラリア史上最大級の個人情報流出とサイバー制裁】
- JBS Foods【世界最大の食肉加工会社に対する国家級サイバー攻撃】
- Kaseya連鎖攻撃(Swedish Coop)【サプライチェーン経由でPOSが全面停止】
- Colonial Pipeline【全米の石油供給が6日間停止、国家危機に発展】
- カプコン【二重脅迫型ランサム攻撃で1100万ドルを要求された大規模被害】
KADOKAWA【出版・動画サービスを直撃した大規模ランサム攻撃】
2024年6月8日未明、KADOKAWAグループが大規模なランサムウェア攻撃を受け、「ニコニコ動画」「ニコニコ生放送」などの全サービスが停止しました。グループ全体の業務システムも影響を受け、出版物流や会計処理に大きな支障が出ました。
攻撃では社内ネットワークのActive Directoryが乗っ取られ、マルウェアが従業員PCに拡散。ランサムノートはSlack経由で届く異例の手口でした。攻撃者はロシア系とされる「BlackSuit」を名乗り、1.5TBの情報を窃取したと主張しています。
一部報道では、KADOKAWAが約300万ドルの身代金を支払ったが復号できず、さらに800万ドルを要求されたとされ、国内でも珍しい実被害の例として注目されました。
流出した情報には、ドワンゴ全従業員の個人情報、契約書類、N高等学校の生徒情報などが含まれます。ニコニコ関連のシステムは再構築が必要とされ、復旧には1カ月以上かかる見通しです。
出典:日経クロステック
>>BlackSuitランサムウェアからの保護と対策の徹底解説
NHS・Synnovis【血液検査システム停止と患者データ400GB流出】
2024年6月3日、英国の病理検査機関Synnovisがランサムウェア攻撃を受け、NHS(英国民保健サービス)の血液検査システムが停止しました。これにより3000件以上の手術や診療予約が中断し、医療提供に大きな混乱が生じました。
攻撃を行ったのはQilinとされるサイバー犯罪グループで、ダークネット上に約400GBの患者データを公開されました。公開されたサンプルには氏名、生年月日、NHS番号、血液検査の内容が含まれていました。
報道によれば、QilinはSynnovisに5000万ドル(約70億円)の身代金を要求しましたが、交渉が進展せずデータが流出されました。Synnovisが身代金を支払ったかどうかは不明とされています。
NHSはNCA(英国家犯罪庁)やNCSC(国家サイバーセキュリティセンター)と協力して調査を進めており、システム復旧には数週間から数カ月を要すると見込まれています。
出典:ITmedia
Medibank【オーストラリア史上最大級の個人情報流出とサイバー制裁】
2022年に発生したランサムウェア攻撃により、オーストラリア最大の民間医療保険企業Medibankの顧客約970万人分の氏名・生年月日・医療情報・メディケア番号などの機微データが窃取され、一部はダークウェブに公開されました。被害は国内だけでなく、約180万人の国際顧客にも及びました。
オーストラリア政府はこの攻撃を「国家安全保障レベルの脅威」と位置づけ、2024年1月にはロシア人ハッカーアレクサンドル・エルマコフ(Aleksandr Ermakov)を初のサイバー制裁対象として名指しで公表・資産凍結を実施しました。これにより、彼への資金提供や暗号資産での支払いも刑事罰の対象となっています。
同事件は、米国FBI・NSA、英国GCHQ、Microsoftなど国際的な捜査機関・民間企業の連携によって追跡が進められ、ロシアのランサムウェア集団REvil(Ransomware-as-a-Service)のメンバーが関与したことが確認されました。Medibankは身代金支払いを拒否し、オーストラリア国内外で大きな話題となりました。
出典:CNN Business
JBS Foods【世界最大の食肉加工会社に対する国家級サイバー攻撃】
2021年5月31日、世界最大の食肉加工企業であるJBS(本社:ブラジル)は、ランサムウェアによるサイバー攻撃を受け、米国・オーストラリア・カナダの工場が一時的に操業停止となりました。これにより、従業員数千人と食肉供給網に深刻な影響が生じました。
米ホワイトハウスは、JBSからの報告に基づき「ロシアを拠点とするサイバー犯罪組織が関与した可能性が高い」と表明。連邦捜査局(FBI)が捜査に着手し、米政府はロシア政府と直接協議を行いました。
この攻撃により、米国国内では牛肉の約20%の生産が停止し、スーパーやマクドナルドなどの大手エンドユーザーに対して供給遅延が発生。食肉価格への影響や在庫不足が懸念される事態となりました。JBSはバックアップサーバーによってシステムを早期復旧させ、大部分の工場は2日以内に再稼働に成功しました。
JBSの被害は、サイバー攻撃が食料インフラに及ぼした世界的な先例として、政府・産業界双方に大きな衝撃を与えました。
Kaseya連鎖攻撃(Swedish Coop)【サプライチェーン経由でPOSが全面停止】
2021年7月初旬、スウェーデンの大手スーパーマーケットチェーンCoopは、全800店舗のうち約500店舗を臨時閉店する事態に追い込まれました。POS(販売時点情報管理)システムとセルフレジが一斉にダウンしたためです。
原因は、米国のIT管理ソフトウェア企業Kaseyaが提供する「VSA」ツールのサプライチェーンを介して広がった大規模なランサムウェア攻撃で、セキュリティ企業Huntress Labsによれば200社以上に被害が及びました。Kaseyaの直接の利用者ではなく、その関連ソフトを利用していた業者を通じてCoopも影響を受けたとされています。
攻撃を行ったのはロシア系とされるランサムウェア集団REvil(Sodinokibi)で、Kaseyaを起点に広範な組織へ拡散。この手法は「サプライチェーン攻撃」として注目され、間接的に数百の企業が標的となるという深刻なリスクを露呈させました。
この事例は、一企業ではなくその取引先や顧客までを巻き込むランサムウェア攻撃の脅威を象徴する「供給網経由攻撃(サプライチェーンアタック)」の典型例として、世界中で報じられました。
出典:BBC NEWS
Colonial Pipeline【全米の石油供給が6日間停止、国家危機に発展】
2021年5月7日、米国最大の石油パイプライン運営企業「Colonial Pipeline」がランサムウェア攻撃により全操業を停止になり、米南部から北東部への燃料供給が止まり、複数州で緊急事態宣言が発令されるなど社会インフラ全体に影響が及びました。
攻撃を仕掛けたのは、ロシアを拠点とするランサムウェア集団「DarkSide」です。データの暗号化に加え、暴露サイトでの公開を匂わせる「暴露型」手法が用いられました。Colonial社は苦渋の決断で、約440万ドル(約4.8億円)の身代金を支払ったと報じられています。
この事件は、産業インフラがランサムウェアの標的となるリスクを国際社会に突きつけ、米政府はロシア政府と直接協議を行う事態に発展しました。身代金支払いの是非や保険補償の制限など、サイバー攻撃への国家的対応の転換点とされました。
出典:日経クロステック
カプコン【二重脅迫型ランサム攻撃で1100万ドルを要求された大規模被害】
2020年11月2日、ゲーム大手のカプコンがランサムウェア攻撃を受け、顧客・株主情報など最大35万件の個人情報が流出されました。業務用サーバーが暗号化され、メールやファイルサーバが使用不能となり、一時的に業務が停止しました。
犯行グループはロシア系とされる「Ragnar Locker(ラグナロッカー)」で、盗んだ約1TBのデータを暴露すると脅し、1100万ドル(約11億円)相当の身代金をビットコインで要求しました。カプコンは支払いを拒否したとみられ、その後複数の機密文書やゲーム開発資料などがネット上に公開されました。
この攻撃は、データの暗号化と暴露を同時に行う「二重脅迫型ランサムウェア」の典型例で、企業のサイバーリスク対策の転換点となりました。カプコン側は取引先との機密文書の漏洩による信用毀損リスクも抱えることとなり、セキュリティ体制の強化が急務とされました。
出典:日経クロステック
>>身代金+機密情報公開の二重の脅迫 Ragnar Locker(ラグナロッカー)とは?
上記のように、ランサムウェア感染は企業の事業継続や信頼性を脅かすだけでなく、社会全体や国際的なサプライチェーンにまで波及する深刻なリスクを伴います。被害が拡大すれば、医療・エネルギー・食料供給などにも影響を及ぼし、人命や経済活動に致命的な打撃を与える可能性もあるのです。
もし感染が疑われる状況が発生した場合は、まずネットワークを直ちに遮断し、フォレンジック調査の専門会社へ速やかに相談することが重要です。
ランサムウェアに感染した時の対処法
万が一、ランサムウェア感染が疑われる状況が発生した場合は、初動対応の速さと正確さがその後の被害拡大を左右します。以下の基本対処を必ず押さえてください。
- 感染端末をネットワークから隔離し、拡散を防ぐ
- 電源を切らず現状を保持して証拠を保全する
- バックアップがあれば安全性を確認したうえで復旧を検討する
- 専門調査会社やセキュリティベンダーへ早急に相談する
感染に気づいてからの最初の判断と行動が、その後の損害の規模や回復の難易度に直結します。拡散や証拠破壊を防ぐためにも、自社での誤った対応を避け、経験豊富な専門調査会社への相談を最優先にしてください。
ランサムウェアの被害を調査・解明する「フォレンジック調査」の重要性
ランサムウェア被害は、感染による業務停止にとどまらず、情報漏洩や身代金要求、さらには社会インフラや国際関係にまで影響が及ぶ深刻なケースが多く存在します。
たとえバックアップによってシステムが復旧できたとしても、「なぜ暗号化されたのか」「どこから侵入されたのか」「何が漏洩・改ざんされたのか」が明らかにならなければ、再発リスクや取引先への説明責任、法的トラブルを回避することはできません。一番重要になるのが、専門的な技術で攻撃の全容を調査・解明するフォレンジック調査です。
>>【解説】フォレンジック調査とは?調査の流れや専門会社を紹介
フォレンジック調査でわかること
フォレンジック調査とは、システムや端末に残された操作記録・ログ・通信履歴などの客観的な証拠を収集・解析し、攻撃の全体像を明らかにする専門的な調査です。
- 操作実行者・侵入元の特定
- 攻撃対象と範囲の把握
- 情報漏洩の有無
- スクリプトの実行履歴
- BitLockerの設定変更履歴
- 法的証拠の保全
上記情報は、再発防止のための対策立案や、顧客・取引先・監督官庁への説明責任を果たすうえでも不可欠な要素です。
>>おすすめのフォレンジック調査会社一覧|選び方・依頼の流れを解説
自力調査が招く「証拠汚染」のリスク
ランサムウェアの攻撃は、Windowsの正常動作と見分けがつかないケースも多く、IT担当者が善意で再起動や設定変更を行ってしまうことがあります。しかしこの行動が、操作ログや証拠ファイルの上書き・消去につながり、法的・技術的な調査を困難にしてしまうのです。
証拠が損なわれれば、警察の捜査や法的手続きが進められず、企業に不利な影響を与える可能性があります。
編集部おすすめ調査会社:デジタルデータフォレンジック(おすすめ度)
「実績の数」「セキュリティの高さ」「技術力の高さ」「データ復旧技術の有無」の観点から、おすすめの調査業者は「デジタルデータフォレンジック」です。
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規模が大きな調査会社なため、官公庁や大手企業からの依頼実績もあるようですし、24時間365日の相談体制、ニーズに合わせたプランのカスタマイズなど、サービスの利用しやすさも嬉しいポイントです。
ランサムウェア調査以外にも幅広い調査に対応しているだけでなく、ケースごとに専門チームが調査対応を行っているとのことで、高品質な調査が期待できます。さらに、警察への捜査協力も行っているなど、信頼がおける専門業者です。
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まとめ
本記事では、国内外の実際に発生した深刻なランサムウェア被害事例を中心に紹介し、それらの影響や背景、感染時に必要な対応方法を解説しました。
被害の中には、企業単体にとどまらず、社会インフラや国際関係にまで波及した事例もあり、いまやランサムウェアは単なる「ITの問題」ではありません。被害を最小限に抑えるには、初動対応と専門的なフォレンジック調査が欠かせません。万が一に備え、信頼できる調査会社への事前相談をおすすめします。