サイバー攻撃や不正アクセスが日常的に発生する現代社会において、攻撃の痕跡を「科学的に証明」し、法的証拠として残すための技術が求められています。その中心にあるのがネットワークフォレンジックです。
この記事では、ネットワークフォレンジックの基本概念から、調査に用いられる主なデータ、調査プロセス、具体的な適用場面、ツールや注意点までを、サイバーセキュリティの専門家の視点から詳しく解説します。
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ネットワークフォレンジックの基本概念と特徴
ネットワークフォレンジックとは、ネットワーク上でやり取りされた通信データやログ情報を記録・保存・解析することで、不正アクセスや情報漏えいの原因と経路を明らかにする調査手法です。調査結果は、社内の再発防止や法的措置のための証拠資料として活用されます。
- 事後調査に特化したフォレンジック手法
- 対象となるデータは多岐にわたる
- 時系列解析と全体像の再構成が可能
- 証拠性を担保するための厳格な手順
- 企業・個人を問わず活用される技術
- ログ保存と体制整備が成功のカギ
事後調査に特化したフォレンジック手法
ネットワークフォレンジックはインシデント発生後に事実関係を明らかにするための調査です。通常のセキュリティ対策が「攻撃の予防」を目的とするのに対し、フォレンジックは「起きてしまった後の証拠解明」にフォーカスします。
代表的な対応対象には以下があります。
- 不正アクセス(社外からの侵入)
- ランサムウェア感染経路の調査
- 社内不正によるデータ送信
- クラウドストレージへの不審なアップロード
これらに共通するのは、「何が起きたかが不明瞭」なこと。ネットワーク上のデータを元に、行為の時刻・送受信内容・関与した端末やユーザーを突き止めていきます。
対象となるデータは多岐にわたる
ネットワークフォレンジックの対象は単なる「通信の記録」だけではありません。以下のような多種多様な情報が分析対象になります。
データ種別 | 具体例 |
---|---|
パケットキャプチャ | 送信元/宛先IP、通信内容、使用プロトコル |
ファイアウォールログ | 遮断された通信、外部接続履歴 |
プロキシログ | 社内端末のWebアクセス履歴 |
DNSログ | 不審なドメインへの問い合わせ記録 |
メールサーバログ | 外部とのメール送受信履歴、添付ファイル |
IDS/IPSログ | 不正侵入の検知・遮断履歴 |
1つの情報では特定できない場合でも、複数のログを突き合わせることで真相に近づくことが可能です。
時系列解析と全体像の再構成が可能
ネットワークフォレンジックの最大の強みは、時系列での「行動の再構成」ができる点です。
例えば、次のような形で解析が進みます。
- 15:01 不正なログインが発生(ログインログ)
- 15:02 外部IPへのアクセス開始(FWログ)
- 15:05 ZIPファイルの送信履歴あり(メールログ)
- 15:07 該当ファイルが削除された記録あり(端末ログ)
このように、複数の機器・システムの情報をクロス分析することで、「何が、いつ、どこで、どのように起きたのか」を可視化できます。
証拠性を担保するための厳格な手順
フォレンジック調査では、証拠が改ざんされていないことを証明するための手順が極めて重要です。
特に次のような点が重視されます。
- ログの改ざん防止(WORM媒体などを使用)
- ハッシュ値(SHA-256など)の付与によるデータ完全性の保証
- 誰が、いつ、どのツールで取得したかの記録
- 第三者による検証可能性(チェーン・オブ・カストディ)
警察や裁判に提出する証拠として使用する場合、この信頼性が最も重要となります。
企業・個人を問わず活用される技術
ネットワークフォレンジックは、次のような場面で導入されています。
- 企業:情報漏えい、社内不正、取引先とのトラブル対応
- 教育機関:生徒情報の漏えい、教職員の不適切アクセス調査
- 医療機関:患者データの取り扱い履歴の調査
- 個人・家庭:子どものネット履歴や詐欺被害の証拠確保
特に企業においては、証拠保全を怠ることで「調査不能・責任追及不可」になるリスクがあるため、IT部門・法務部門が連携して体制を整える必要があります。
ログ保存と体制整備が成功のカギ
ネットワークフォレンジックを活用するには、「ログがなければ始まらない」ことを強く意識しなければなりません。
以下のような準備が不可欠です。
- ファイアウォールやルーターのログ保存期間を延長する
- ログがローテーションで上書きされないよう設定を見直す
- 社内ネットワークのどこで何が起きているか常時監視する体制をつくる
- 重要ログは外部バックアップやWORMメディアへ定期保存
「記録されていないことは証明できない」という原則を理解し、ログ管理を経営リスク対策の一環として捉えることが重要です。
ネットワークフォレンジックで扱う主なデータと収集手法
ネットワークフォレンジック調査では、「何を集めて、どう扱うか」が調査の成否を分けます。通信データは流れた瞬間に消えていくため、リアルタイムまたは定期的な保存体制が前提となります。
この章では、実際にどのようなデータが調査対象となるのか、そしてそれらをどのように収集・保全するかを、具体的なツール・手順を含めて解説します。
- パケットキャプチャ(通信の中身)
- ファイアウォール・ルーターの通信ログ
- プロキシサーバ・DNS・Webアクセス履歴
- メールサーバ・添付ファイルの送受信履歴
- IDS/IPSなどのセキュリティ機器ログ
- ログの取得と保存に必要な体制
パケットキャプチャ(通信の中身)
パケットキャプチャとは、ネットワーク上を流れるすべての通信パケット(1つ1つのデータのかたまり)をそのまま記録する方法です。
代表的なツールには以下があります。
- Wireshark(無料・多機能・GUIあり)
- tcpdump(UNIX系OS標準・CLI操作)
- NetWitness、PacketTotal(有償・企業向け)
以下のような手順で取得できます。
- 対象となるネットワークインターフェースを特定
- Wiresharkなどのツールを起動し、「Capture Options」で該当NICを選択
- フィルター(例:tcp port 80)を指定し、記録を開始
- 一定時間記録したら、保存して.pcapファイルとして保管
パケットキャプチャは“攻撃者の操作内容そのもの”を記録できる唯一の手段です。ただし、容量が大きくなるため長時間の常時記録には注意が必要です。
ファイアウォール・ルーターの通信ログ
社内外の通信を中継するファイアウォールやルーターには、通信の通過記録や遮断ログが詳細に保存されています。
代表的な取得方法は以下の通りです。
- 機器の管理画面にログイン(例:192.168.0.1)
- 「ログ」タブや「セキュリティ」「診断」などの項目を選択
- 通信記録やブロックされた履歴をCSVやテキスト形式でエクスポート
ファイアウォールログからは、以下のような情報が読み取れます。
- 外部の不審なIPからのアクセス試行
- 遮断されたポートスキャンやDDoSの記録
- 通常とは異なる時間帯・場所からの通信
日常的にログを保存していないと、過去の不正アクセスは調査不能になるため注意が必要です。
プロキシサーバ・DNS・Webアクセス履歴
社内から外部サイトへアクセスした履歴を残すには、プロキシサーバやDNSサーバのログが有効です。
プロキシログには以下の情報が記録されます。
- どのIPアドレスの端末が
- いつ、どのURLにアクセスし
- どれだけのデータを送受信したか
DNSログは、マルウェアがC2サーバへ接続しようとした際のドメイン問い合わせ履歴などから、感染端末の特定に役立ちます。
企業向けでは以下のような製品が使われます。
- Squid Proxy、Blue Coat(プロキシ)
- BIND(DNSログ)
- Microsoft DNSサーバ(Windows環境)
ユーザーのWeb閲覧行動やマルウェアの活動痕跡を追う際に極めて重要なログです。
メールサーバ・添付ファイルの送受信履歴
内部不正や情報漏えいの多くは、メールを通じて外部へ送信されています。送信履歴や添付ファイルの記録は必須です。
以下のようなログ項目が対象になります。
- 送信元・送信先アドレス
- 日時・件名・ファイル名
- 添付ファイルの拡張子・ファイルサイズ
Exchange、Postfix、Sendmail、Microsoft 365 などのメールサーバにて、監査ログまたはジャーナルログ機能を有効化しておくことで、証拠性の高い情報を取得できます。
IDS/IPSなどのセキュリティ機器ログ
社内ネットワークへの不正侵入やマルウェア感染の兆候を把握するには、IDS(侵入検知)・IPS(侵入防止)機器のログが役立ちます。
以下のようなイベントログが調査対象です。
- 不審なスキャン・シグネチャとの一致
- ポート使用の異常
- 通信量の急増
- システムの異常動作や遮断履歴
代表的な製品には以下があります。
- Snort(OSS)
- Suricata(高機能IDS/IPS)
- Trend Micro、Cisco Firepower、FortiGate(商用)
これらのログを他の証拠と照合することで、攻撃者の行動パターンが浮き彫りになります。
ログの取得と保存に必要な体制
最後に、フォレンジックにおいてもっとも重要なのが、「そもそもログが残っているかどうか」です。
以下を満たすことで、万が一の際に確実な調査が可能になります。
- 各種機器(FW、プロキシ、DNS、メール等)でログ保存を有効にする
- ログローテーション設定を確認し、長期保存(30日以上)に変更
- ログを集中管理サーバ(Syslogサーバ等)に転送する
- WORMストレージやバックアップで改ざん防止
「証拠を残す仕組み」を日常から整えておくことが、フォレンジックの第一歩です。
実際のインシデントに対する適用事例と対応ステップ
ネットワークフォレンジックは、インシデント対応の現場でどのように使われるのか?この章では、実際に起きたサイバー事件・社内不正への対応事例をもとに、フォレンジック調査が果たす具体的な役割と流れを紹介します。
被害拡大を防ぎ、証拠を押さえ、法的対処に備えるためには、正しい初動と調査のステップが不可欠です。
- 情報漏えいの経路特定(クラウド経由)
- 内部不正による機密ファイルの外部送信
- ランサムウェア感染後の通信経路分析
- 不正アクセスによる顧客データ侵害
- フォレンジック調査時の初動対応ステップ
- 証拠確保から報告書提出までの流れ
情報漏えいの経路特定(クラウド経由)
ある企業で、Google Drive上の重要資料が外部に流出したという通報があり、調査が始まりました。
対応の流れは以下の通りです。
- Google Workspaceログからアクセス履歴を取得
- 共有リンクを利用した第三者のアクセス痕跡を発見
- 対象ファイルのダウンロード履歴とアップロード日時を照合
ネットワークフォレンジックでは、プロキシやDNSログを突き合わせることで、「誰が、いつ、どこからアクセスしたか」を明らかにし、情報漏えいの経路と関与者を特定します。
内部不正による機密ファイルの外部送信
別の事例では、退職予定の社員が社外の個人メールに大量の資料を送っていたことが、後になって判明しました。
調査のポイント
- 社内PCのメール送信ログを確認(POP/SMTP通信)
- 添付ファイルのファイル名・ハッシュ値を復元
- ProxyログでWebメールアクセス履歴を特定
さらに、PCに残された一時ファイルや送信履歴をパケットキャプチャと照合し、証拠として法的対応に活用されました。
社内や個人でフォレンジック調査を完結させるのは、証拠の観点からリスクが高いことを理解し、初動から専門調査会社に依頼することが必須です。
ランサムウェア感染後の通信経路分析
全国展開する企業の基幹システムが、突如ランサムウェアにより暗号化されました。
対応手順の例
- 感染PCのネットワークログとFWログを照合
- 暗号化が始まった時間とその前後の通信をパケットレベルで抽出
- 外部C2(Command and Control)サーバとの接続を確認
この結果、社内の他端末にもすでに感染が広がっていることが判明し、ネットワーク全体の遮断と隔離措置が迅速に行われました。
フォレンジック調査により、感染源が海外IPアドレスからのリモートデスクトップ接続だったことが明らかになり、警察への報告と訴訟対応に進みました。
不正アクセスによる顧客データ侵害
EC事業者のサーバが侵害され、クレジットカード情報が外部へ流出。ネットワークフォレンジックにより、以下が判明しました。
- 夜間に管理画面への不正ログインが複数回成功していた
- データベースから大量の顧客情報がZIPでダウンロードされていた
- 海外VPN経由で外部サーバにアップロードされた痕跡あり
この際、VPNの認証ログやセッション履歴を併用して不正アクセス者の特定を試み、被害の範囲と関連アカウントを全社的に洗い出す調査が実施されました。
フォレンジック調査時の初動対応ステップ
どのようなインシデントであっても、初動を間違えると証拠が失われ、真相解明が不可能になります。
- 対象端末やネットワーク機器をネットワークから隔離する
- 電源を切らず、そのまま物理保全(電源を抜かない)
- 社内で勝手にログを操作・削除しないよう操作制限を徹底
- フォレンジック専門会社に即時相談
この初動を誤ると、ログや通信データが上書き・消去され、証拠が消滅します。
証拠確保から報告書提出までの流れ
ネットワークフォレンジック調査の全体フローは以下のようになります。
- ヒアリング・対象機器の確定
- パケット・ログ・ファイルなどの証拠取得と保全(ハッシュ付与)
- タイムライン解析・相関分析
- 攻撃者や関与ユーザーの特定
- 被害範囲・侵入経路の明確化
- 調査報告書の作成(法的対応用に整備)
この報告書は、裁判所・警察・保険会社・取引先などにも提出できる正式文書として扱われるため、証拠性と中立性が求められます。
法廷でも認められる調査を実施するためには、やはり専門家への依頼が不可欠です。
ネットワークフォレンジックツールの紹介と使い方
ネットワークフォレンジックの現場では、膨大な通信データやログを解析するために、専門のツールを使って効率的に調査を行います。ここでは、初心者でも扱えるものから、企業や捜査機関が使用する高機能なソフトウェアまで、主要ツールとその基本的な使い方を紹介します。
- Wireshark(通信解析ツール)
- tcpdump(CLIベースの軽量キャプチャ)
- NetworkMiner(証拠抽出特化ツール)
- NetWitness(企業向けフォレンジック分析)
- ELKスタック+Zeekによるログ解析
- ツール導入時の注意点と証拠保全の心得
Wireshark(通信解析ツール)
Wiresharkは、ネットワーク通信を視覚的に表示できる最も有名な無料ツールです。GUI対応で、初心者でも扱いやすいのが特長です。
- 公式サイトからWiresharkをインストール
- 起動後、[Capture]タブで対象のNICを選択
- 「Start」ボタンでキャプチャを開始
- フィルター欄に「ip.addr == 192.168.0.5」など条件を指定
- 怪しい通信パケットを選び、「Follow TCP Stream」で内容を確認
- 必要なデータは.pcap形式でエクスポート
攻撃者が送ったコマンドや通信内容まで再現できるため、最初に導入すべきツールです。
tcpdump(CLIベースの軽量キャプチャ)
tcpdumpはLinuxやmacOS環境で使える軽量なコマンドラインベースのパケットキャプチャツールです。
基本的な使い方
- ターミナルを開き、
sudo tcpdump -i eth0 -w capture.pcap
でキャプチャ開始 - 停止はCtrl + Cで
- キャプチャした.pcapファイルはWiresharkで解析可能
GUIが不要な軽量サーバーや、遠隔地での調査に最適です。
NetworkMiner(証拠抽出特化ツール)
NetworkMinerは、キャプチャしたパケットから証拠ファイル・画像・DNSクエリなどを自動抽出してくれる、Windows向けの無料ツールです。
操作手順
- 公式サイトからzipファイルをダウンロード・解凍
- 「NetworkMiner.exe」を実行
- [File]→[Open]から.pcapファイルを読み込む
- 「Files」タブで抽出されたファイルを一覧表示
- 証拠となる画像・PDFなどを確認
操作不要で証拠収集を自動化できる便利なツールとして、インシデント現場でも活用されています。
NetWitness(企業向けフォレンジック分析)
NetWitnessはRSA社が提供するエンタープライズ向けの総合フォレンジックプラットフォームです。
主な機能
- パケットの保存・再構成
- ユーザー行動の監視
- マルウェア解析
- 調査ログの自動収集とダッシュボード表示
ログ管理・アラート検知・証拠取得を一元化できるため、大規模組織や金融・医療業界での導入が進んでいます。
ELKスタック+Zeekによるログ解析
ELKスタック(Elasticsearch + Logstash + Kibana)とZeek(旧Bro)を組み合わせることで、リアルタイムなログ解析環境を構築できます。
基本の構成
- Zeekでネットワークイベントをログに出力
- Logstashでログを整形・Elasticsearchに格納
- Kibanaでグラフィカルに可視化・検索
フォレンジックだけでなく、SIEMとしての機能も併せ持つため、セキュリティ運用全体に組み込むことが可能です。
ツール導入時の注意点と証拠保全の心得
どのツールも、導入するだけでは効果を発揮しません。運用設計と証拠保全の体制を整えておく必要があります。
導入時のポイント
- ログ保存先は書き込み専用媒体(WORMやNAS)を使う
- ツールで取得した証拠データにはハッシュ値(SHA-256)を付与して改ざん防止
- 調査対象の範囲や目的を明確にしてツールを選定
- 操作ログや調査記録を第三者が検証可能な形で残す
証拠の信頼性は「いつ、誰が、どのツールで、どんな操作をしたか」を正確に記録することで担保されます。
自力対応のリスクと専門会社へ依頼すべき理由
ネットワークフォレンジックは専門性の高い領域です。しかし、実際の現場では「とりあえずIT担当者に調査を依頼」「自分たちでなんとかログを見てみる」といった安易な自己対応が行われ、証拠を失い、法的手続きに耐えられない状態になる事例が後を絶ちません。
この章では、フォレンジックを自己流で進める危険性と、なぜ専門会社へ依頼すべきなのかを解説します。
- 証拠データの改ざん・破壊の危険性
- 誤った結論・関係者の冤罪リスク
- ログ収集の不備で原因が追えない
- 社内関係者が加害者である可能性
- 裁判・警察対応での証拠能力喪失
- 専門会社に依頼するメリットと依頼タイミング
証拠データの改ざん・破壊の危険性
PCやネットワーク機器に不用意にアクセスし、ログを閲覧・削除・再起動しただけで、重要な証拠が失われる可能性があります。
よくある誤操作の例
- キャプチャツールで上書き保存してしまう
- ウイルス対策ソフトが自動的に不審ファイルを削除
- 機器の電源を切ってボリュームシャドウコピーを消去
一度失った証拠は二度と取り戻せません。最初の対応こそ、専門会社に依頼すべき最重要タイミングです。
誤った結論・関係者の冤罪リスク
技術的な知識が不足した状態でログを解析すると、誤った犯人像を導き出す危険があります。
特に以下の点で間違いが起きやすいです。
- IPアドレスだけで特定ユーザーと決めつける
- 偽装されたログやタイムスタンプを見抜けない
- 複数端末間の相関分析を行えず、片側だけで判断する
その結果、無関係な社員に疑いをかける「冤罪」が発生し、労務問題に発展する事例もあります。
ログ収集の不備で原因が追えない
企業の多くが、セキュリティ機器のログ保存期間を「1週間」「30日」など短く設定しています。
よくある失敗例
- Proxyログが7日で自動削除されていた
- DNSログが出力されていなかった
- パケットキャプチャが容量制限で止まっていた
専門会社に依頼すれば、調査開始前に「今残っているログは何か」「今すぐ保存すべき対象は何か」をアドバイスしてもらえるため、失敗を未然に防げます。
社内関係者が加害者である可能性
内部不正の多くは、システム担当者・管理者権限を持つ社員によって行われることがあります。
そのため、以下のような危険が生じます。
- ログ改ざんや削除を自ら行う
- 自分に都合の良い結果に導く調査報告を作成
- 調査開始の気配を察知し、証拠隠滅を図る
中立かつ外部の立場から調査することで、証拠の真正性を保ち、経営層や法務部も安心して判断できる体制が整います。
裁判・警察対応での証拠能力喪失
どれほど明らかな不正行為があっても、取得したログやデータが法的に証拠として認められなければ無意味です。
証拠能力を持つには下記が重要です。
- 改ざんがされていないことの証明(ハッシュ値など)
- 取得経路・操作履歴の記録
- 調査手順が正当であること(証拠保全手続き)
これらはフォレンジック専門会社が日常的に行っているノウハウであり、社内だけで整備するのは極めて困難です。
専門会社に依頼するメリットと依頼タイミング
フォレンジック専門会社に依頼することで得られる主なメリットは以下の通りです。
- 初動のアドバイスと機器隔離のガイドライン提供
- 法的に証拠能力を持つ調査と保全の実施
- 削除ログの復元や暗号化通信の解析
- 警察・裁判・監査など対外対応を想定した報告書作成
また、次のようなタイミングで迷わず依頼してください。
- 社外への情報漏えいが疑われる
- ランサムウェア感染が確認された
- 退職者が社内ファイルを持ち出した形跡がある
- 不正アクセスや不審なログイン通知が届いた
- 取引先や顧客から苦情が入り、証拠調査が必要
ネットワークフォレンジックは、事後対応の「最後の砦」であると同時に、証拠を未来に残す「唯一の手段」でもあります。
信頼できるフォレンジック調査会社を選ぶ重要ポイント4選
信頼できるフォレンジック調査会社を選ぶポイントは以下の4つです。
- 調査実績が豊富
- セキュリティ認証を取得している
- 調査完了までのスピードが速い
- 無料相談や見積りに対応している
これらの特徴を持つ調査会社に依頼することで、効果的な調査と適切な対策が期待できます。
調査実績が豊富
調査実績が豊富な調査会社は、さまざまな種類のサイバーやリーガルインシデントに対応した経験とノウハウを持っています。そのため、状況や問題に応じた適切な方法やツールを駆使し、被害の状況や原因をより正確に特定することで、適切な対策を講じることができます。
セキュリティ認証を取得している
セキュリティ認証を取得している企業は、情報セキュリティに対する取り組みが評価されており、信頼性が高いです。
具体例として、ISO/IEC 27001などの国際的な認証が挙げられます。これらの認証は、企業が情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)を適切に運用し、機密情報の保護に努めていることを示します。
こうした認証を取得している企業は、データ漏えいリスクを最小限に抑えるための対策を講じており、顧客のデータを安全に扱うことができます。このため、セキュリティ認証を取得している企業を利用することがおすすめです。
調査完了までのスピードが速い
問題が発生した際、調査完了までのスピードが速いほど、被害を最小限に抑えることができます。調査スピードが速い理由としては、専門知識や経験を持ったスタッフが多数在籍していることや、最新の技術やシステムを導入して効率的な業務を行っていることが挙げられます。
無料相談や見積りに対応している
問題が発生した際、無料相談や見積りに対応している企業であれば、相談のうえ、見積りを取得することで、サービスの費用を事前に把握し、予算に合ったプランを選ぶことができます。
無料相談や見積りに対応している企業は、顧客ニーズに応じたサービスを提供できる体制が整えられており、信頼性が高いと言えます。ぜひ、お問い合わせや見積りの依頼を通じて、最適なサービスを見つけてください。
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規模が大きな調査会社でありながら、個人端末のハッキング調査、不正アクセス調査などの実績もあるようですし、24時間365日の相談体制、ニーズに合わせたプランのカスタマイズなど、サービスの利用しやすさも嬉しいポイントです。
ハッキング調査以外にも幅広い調査に対応しているだけでなく、ケースごとに専門チームが調査対応を行っているとのことで、高品質な調査が期待できます。さらに、警察への捜査協力も行っているなど、信頼がおける専門業者です
相談・見積りを“無料“で行っているので、まずは電話かメールで問合せをしてみることをおすすめします。
フォレンジック調査会社を利用するときの注意点
フォレンジック調査会社を利用するときの注意点は次のとおりです。
- 不用意に操作しない
- 興信所や探偵は基本的に専門外
- サポート詐欺に要注意
- 市販の調査ソフトを使用しない
不用意に操作しない
サイバーやリーガルインシデント被害を受けた場合、不用意にシステムや機器を操作すると、証拠が消失したり、状況が悪化したりする可能性があります。そのため、フォレンジック調査会社に依頼する前に、不用意な操作は避けましょう。
興信所や探偵は基本的に専門外
フォレンジック調査は、専門的な知識や技術が必要となる調査です。そのため、主に浮気調査や家出人捜索などの調査を行っている興信所や探偵に依頼しても、十分な調査が期待できない可能性があります。
市販の調査ソフトを使用しない
市販のフォレンジック調査ソフトは多数存在しますが、そのどれもが万能なものではなく、フォレンジック調査サービスと比較して調査の正確性が劣ります。セキュリティ対策やログの監視ツールとして利用する分には問題ないですが、インシデント発生時の調査で利用する時は目的に合わせて利用すべきか判断が必要になります。
調査結果を報告資料の作成や裁判などでの証拠として活用したい場合は、フォレンジック調査ツールで抽出した結果を使用できないため、証拠保全が可能な調査会社に相談して調査するようにしましょう
よくある質問とトラブル回避・予防のポイント
ネットワークフォレンジックを必要とする場面は突発的に訪れます。そのとき、慌てずに適切な初動ができるかどうかが、被害拡大を防げるかどうかの分岐点になります。
この章では、現場でよくある質問(FAQ)と、トラブルを未然に防ぐための予防策をセットで紹介します。
- ログって何をどれだけ残しておけばいい?
- VPNを使っていれば安全なの?
- クラウド上の通信も調査できる?
- 調査対象の社員が退職してしまったら?
- 情報漏えいが発覚したら誰に連絡すべき?
- 事前にやっておくべきセキュリティ対策は?
ログって何をどれだけ残しておけばいい?
最低でも以下のログは残しておくことが推奨されます。
- ファイアウォール:通信許可/遮断の履歴(30日以上)
- プロキシ:外部アクセス先のURLやIP(90日以上)
- DNS:ドメイン問い合わせ記録(60日以上)
- メール:送受信履歴と添付ファイルの有無(180日以上)
保存形式はCSV、Syslog、JSONなどでOKですが、WORMメディアや専用NASで改ざんできないよう保管することが重要です。
VPNを使っていれば安全なの?
VPNはセキュリティ向上の手段ですが、万能ではありません。以下の落とし穴があります。
- 脆弱なパスワードで接続されると突破される
- VPN経由で社内ネットワークに攻撃が拡大する
- ログ管理が不十分で誰が何をしたか追えなくなる
VPN利用時は二要素認証、利用端末制限、接続ログの記録を徹底しましょう。
※VPNの運用を誤ると逆に脆弱性にもなりかねないので注意が必要です。
クラウド上の通信も調査できる?
はい、調査可能です。ただし、クラウドサービスごとにログ取得の可否や保存期間が異なるため、事前の設定が重要です。
例
- Google Workspace → 管理者ログ(Drive、Gmail等)を30日~180日間保持可
- Microsoft 365 → Auditログ、Defenderログを自動取得可能
- Dropbox Business → ファイル操作履歴・共有履歴の確認可
「取得できるかどうか」ではなく、「今の設定で取得されているか」が鍵です。
調査対象の社員が退職してしまったら?
退職後でも調査は可能ですが、端末・アカウント・ログが残っているかが重要です。
- 退職者のアカウントは即時ロック(削除ではなく停止)
- 業務端末を回収し、電源を入れずに保管
- メール・ログイン履歴・クラウド操作記録を保存
内部不正の兆候がある場合は、証拠を確保したうえで専門会社へ即時相談してください。
情報漏えいが発覚したら誰に連絡すべき?
以下のような順序で対応します。
- 社内のCSIRT、情報セキュリティ担当者へ連絡
- フォレンジック専門会社へ状況説明と初動相談
- 顧客・取引先・監督官庁への報告体制を準備
- 必要に応じて警察(サイバー犯罪対策課)に通報
報告が遅れると「隠蔽」とみなされ、企業の信用失墜に直結します。初動からの透明性がカギです。
事前にやっておくべきセキュリティ対策は?
フォレンジックに頼らずに済むよう、普段からの備えが極めて重要です。
- 各種ログの自動保存・長期保管の設定
- 重要情報の通信監視・異常検知システム(IDS/IPS)導入
- 社内での情報リテラシー教育(送信禁止・外部持ち出し対策)
- 退職者・契約社員のアカウント管理
「ログがなければ調査もできない」という前提を理解し、リスクの種を減らしておくことが何よりの対策です。
まとめと初動対応の重要性
ネットワークフォレンジックは、サイバー攻撃や内部不正、情報漏えいといったインシデント発生時に、「何が、いつ、どのように起きたのか」を科学的に解明し、証拠として残すための技術です。
この記事では、ネットワークフォレンジックの基本から、ツールの使い方、調査事例、注意点、予防策に至るまで幅広く解説してきました。
ネットワークフォレンジックの本質的な価値
フォレンジックは単なる技術ではありません。それは、企業や組織が「正しい判断」を下すための土台であり、証拠をもとに責任を明確にし、信頼を回復するための武器です。
以下のような場面で不可欠な存在となります。
- 社内不正の証明:特定社員のデータ持ち出しや不正操作の裏付け
- サイバー攻撃への対応:攻撃者の侵入経路・行動範囲の可視化
- 訴訟・監査・警察提出:証拠能力のある報告書の提出
初動対応の重要性を再確認
いかに優れたフォレンジック技術があっても、最初の対応を誤れば証拠は消え、真相は闇の中です。
今すぐ実践すべき初動対応は以下の通りです。
- 対象の機器・システムをネットワークから切断
- 電源を切らずにそのまま保管(証拠を上書きしない)
- 社内で独自に操作せず、操作記録を残す
- 速やかにフォレンジック専門会社へ連絡
この初動の差が、調査の精度と証拠の有効性を大きく左右します。
未来のリスクに備える意識を
ネットワークフォレンジックは、「問題が起きた後」の対策であると同時に、日頃からの備えがなければ成立しない技術でもあります。
ぜひ以下のような対策も今から講じてください。
- ログの保存期間を延ばす、保存先を見直す
- 操作履歴や通信履歴を残す設定を定期確認
- 社内での情報リテラシー教育と監査体制の整備
- いざという時にすぐ相談できるフォレンジック会社を把握しておく
最後に
サイバー攻撃や情報漏えいは、決して他人事ではありません。そして「何が起きたかを明確にする手段」がなければ、対策も責任追及もできなくなるのです。
ネットワークフォレンジックは、被害を受けた企業が「誤解されない」「責任逃れされない」「再発防止を実現する」ために、必要不可欠な防衛策です。
トラブルを「なかったこと」にせず、証拠をもって事実を明らかにする力こそ、現代のセキュリティ対策の本質です。
■警視庁からの捜査協力依頼実績が多数あり
■法人/個人問わず幅広く対応
■ 国際標準規格「ISO27001」取得
■ 14年連続国内売上No.1のデータ復旧サービス
- サービス
ハッキング不正アクセス調査、マルウェア・ランサムウェア感染調査、退職者調査、労働問題調査、社内不正調査、情報持出し調査、横領着服調査、データ改ざん調査など