クラウドフォレンジックは、クラウドサービス上のデータやログを対象とした証拠収集・解析手法です。本記事では、クラウド環境におけるフォレンジック手順や障壁、実務対応策を、サイバーセキュリティ専門家の視点で具体的かつ詳細に解説します。設定不備や法的リスクに先回りし、迅速で信頼性の高い調査体制を構築しましょう。
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はじめに:クラウドフォレンジックの必要性
クラウドサービスを利用する企業・組織では、インシデント発生時に適切な証拠を取得し解析するために、クラウドフォレンジックの考え方と運用の整備が欠かせません。以下では、その全貌を段階的に解説します。
- クラウドフォレンジックとは
- 従来型フォレンジックとの違い
- 直面する主な課題
クラウドフォレンジックとは
クラウドフォレンジックとは、物理的なディスクではなく、AWSやAzure、GCPといったクラウド上のデータ環境から、ログ・ファイル・メタ情報などを収集・解析する手法です。従来型のフォレンジックだけでは得られないクラウド特有の証拠を扱う必要があります。
従来型フォレンジックとの違い
従来のフォレンジックはHDDやサーバー上のデータ取得が中心ですが、クラウドでは物理メディアにアクセスできないうえに、インフラが抽象化されている点が大きな違いです。よって、APIを通した論理データアクセスとクラウドサービス提供者との調整が求められます。
直面する主な課題
- 事前にログ設定を行わなければ証拠が失われるリスク
- データが複数地域に分散し、所在把握や法的管轄が複雑化
- 暗号化されたデータの復号のために鍵管理体制が必要
- クラウド固有のログ構造はサービス間で多様
以上の課題を理解し、事前に対策を講じておくことが、インシデント対応の迅速化につながります。
クラウドフォレンジックの準備と予防策
事前準備として、各種設定や体制構築を怠らないことが重要です。具体的な手順は以下のとおりです。
- 証拠ログの自動取得設定を行う
- ログ保持期間の見直しを行う
- 鍵管理とアクセス制御を行う
- クラウド監査用アカウント整備を行う
- 法的管轄の確認と対応策を行う
- VPNと通信セキュリティ対策を行う
①証拠ログの自動取得設定を行う
証拠ログが残らなければフォレンジックが進みません。
主要クラウドごとの設定方法
- AWS CloudTrail:管理コンソール>CloudTrail>「新しいトレイルの作成」からS3バケットを指定し、全リージョンを対象にログを保存する。
- Azure Monitor:Azure Portal>Monitor>診断設定>サーバーごとに「+診断設定」を開き、ログカテゴリーを選択、Log Analytics ワークスペースへ送信。
- GCP:Cloud Logging>ログエクスプローラー>ログルーター>Sinkを作成し、BigQueryやStorageへ送信。
②ログ保持期間の見直しを行う
各クラウドのデフォルト保持期間は短い場合があります。以下を実行しましょう。
- AWS CloudTrail:S3バージョニング+ライフサイクルルールでログを365日以上保持。
- Azure Monitor:Log Analytics ワークスペースの保存設定を90日→1年に延長。
- GCP Logging:Sink先にFirestoreやBigQueryを指定して長期保存。
③鍵管理とアクセス制御を行う
暗号化データの解析には、鍵の取得が不可欠です。
- KMSなどでキー管理を徹底し、調査用アカウントが適切なアクセス権限を持つことを確認。
- 鍵ローテーションのポリシー作成、フォレンジック調査時は鍵の使用ログを取得。
④クラウド監査用アカウント整備を行う
事後調査が必要になった時、専用アカウントがあると安全です。
- フォレンジック専用IAMユーザー/ロールを作成し、CloudTrail/Monitor/Loggingの読み取り権限のみ許可。
- 監査用VPCやサブネットを構築し、APIアクセスを記録可能にする。
⑤法的管轄の確認と対応策を行う
クラウド対象データがどの地域にあるかは法的に重要です。
- 利用規約・合意書を確認し、データ所在地・管轄がどこかを把握。
- 国際的な事件なら弁護士の助言を得たうえで、別途クラウド事業者と適切に連携。
⑥VPNと通信セキュリティ対策を行う
フォレンジック調査ではAPI通信を安全に行う必要があります。
- 管理PCとクラウド間はIPsec/or OpenVPNなどでVPN接続。
- 通信時のIPアドレスをログに記録し、クラウドアクセスログと紐付けられるよう設定。
VPNの運用を誤ると逆に脆弱性にもなりかねないので注意が必要です。
これらの準備ができており、調査が必要の場合はクラウドフォレンジック専門会社へ相談することをおすすめします。
クラウドフォレンジックによる調査手順
インシデント発生後に実際に行うべきフォレンジック手順を順に解説します。
- 調査用インスタンスの作成する
- ボリュームのスナップショット取得する
- 分離環境での解析を行う
- ログと証拠のタイムライン構築を行う
- 暗号化データの復号を行う
- 解析レポートの作成する
①調査用インスタンスの作成する
対象環境を汚さずに解析するため、別インスタンスでボリュームを解析します。
- AWS EC2: コンソールで「新規インスタンス起動」を選び、M5.largeなど解析用スペックを選択。
- 解析用VPCを選択し、セキュリティグループにSSHのみ許可。
- 必要に応じてEBS最適化インスタンスに。
②ボリュームのスナップショット取得する
対象ディスクからスナップショットを作成し、安全な形で解析に用います。
- EBS管理画面で対象ボリュームを選択し「スナップショット作成」をクリック。
- 「説明」にインシデントIDや日付を入力。
- 完了後、ISOイメージとして解析用インスタンスにアタッチ。
③分離環境での解析を行う
本番環境とは別ネットワークで解析し、影響を回避。
- 解析インスタンスのネットワーク接続を調査専用VPCに限定。
- CloudWatch LogsやS3と連携し、証拠の取得と同一アクションの記録。
- SysinternalsやAutopsy、Volatilityなど解析ツールを使用。
④ログと証拠のタイムライン構築を行う
発生時刻を追跡し、関係者やアクションを時系列で整理します。
- CloudTrail/Monitor/Loggingの該当イベントを時系列で抽出。
- API呼び出し、インスタンス作成・削除、IPアクセスなどをマッピング。
- 証拠をExcelやTimelineツールで視覚化。
⑤暗号化データの復号を行う
暗号化部分がある場合は以下手順で対処します。
- KMSからSnapshot対象の鍵ID、バージョンを特定。
- 解析用アカウントが鍵使用権限(Decrypt)を持っているか確認。
- 鍵で復号されたEBSを解析インスタンスへマウント。
⑥解析レポートの作成する
最後に調査結果を文書化し、関係者や法執行機関に提出可能な形でまとめます。
- タイムライン、アクション、ログ抜粋とスクリーンショットを含む。
- 解析で得られた証拠の改ざん防止のため、ハッシュ値(SHA256等)を明記。
- 関係者への通知経路、法的対応が必要な場合の対処も追記。
調査手順について解説しましたが、社内や個人でここまでの対応をすることは比較的難しいため専門会社へ相談することをおすすめします。
警察/法的インシデント発生時における対応
犯罪性や法的性質があるインシデント(ランサムウェア、ハッキング、社内不正、横領など)では、社内や個人でフォレンジック調査を完結させるのは、証拠保全の観点から非常にリスクが高いです。以下、対応方針を明確にしておきましょう。
- 内部・個人だけで完結させるリスク
- 証拠保全の形式要件
- フォレンジック調査会社への依頼
- 法令対応や記録管理の注意点
- 調査費用と契約条項
- 調査後の再発防止策
内部・個人だけで完結させるリスク
証拠チェーンの不備やデータ改ざん疑いが発生すると、司法的に証拠能力が否定されかねません。客観性・信頼性を担保するには、専門家による証拠保全が不可欠です。
証拠保全の形式要件
日本の裁判所や捜査機関は、ログやディスクイメージに対して「証拠採用可能な形式」を求めます。以下を満たす必要があります。
- データ取得日時の記録
- 取得環境の設定記録とアクセスログ
- ハッシュ値による改ざん検証
フォレンジック調査会社への依頼
上記要件を確実に満たすには、経験豊富なフォレンジック調査会社に依頼するのが最適です。調査契約には以下を含めます。
- 証拠取得手順の記載
- 納品物―取得ログ一式、解析レポート、操作記録
- 守秘義務・再発防止評価の条項
法令対応や記録管理の注意点
フォレンジック調査を適切に活用するには、記録の整理や法的対応の備えが欠かせません。外部との契約や証拠管理の体制も、事前に整えておくことが大切です。法令対応や記録管理の注意点について、特に留意すべきポイントは以下のとおりです。
- インシデント対応記録を体系的に整理すること
- 捜査当局からの異議申立てに備えたバックアップ計画
- 調査に関わった第三者(弁護士・コンサル含む)との契約書整備
調査後の再発防止策
調査後は再発防止が重要です。ログや鍵管理の強化、定期的な訓練などを通じて、平時からの備えを見直しましょう。調査後の再発防止に向けて、取り組むべき対策は以下のとおりです。
- 可視化されたログ取得体制の恒久化
- 鍵管理ポリシーの見直し・強化
- フォレンジック演習/模擬対応の定期実施
信頼できるフォレンジック調査会社を選ぶ重要ポイント4選
信頼できるフォレンジック調査会社を選ぶポイントは以下の4つです。
- 調査実績が豊富
- セキュリティ認証を取得している
- 調査完了までのスピードが速い
- 無料相談や見積りに対応している
これらの特徴を持つ調査会社に依頼することで、効果的な調査と適切な対策が期待できます。
調査実績が豊富
調査実績が豊富な調査会社は、さまざまな種類のサイバーやリーガルインシデントに対応した経験とノウハウを持っています。そのため、状況や問題に応じた適切な方法やツールを駆使し、被害の状況や原因をより正確に特定することで、適切な対策を講じることができます。
セキュリティ認証を取得している
セキュリティ認証を取得している企業は、情報セキュリティに対する取り組みが評価されており、信頼性が高いです。
具体例として、ISO/IEC 27001などの国際的な認証が挙げられます。これらの認証は、企業が情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)を適切に運用し、機密情報の保護に努めていることを示します。
こうした認証を取得している企業は、データ漏えいリスクを最小限に抑えるための対策を講じており、顧客のデータを安全に扱うことができます。このため、セキュリティ認証を取得している企業を利用することがおすすめです。
調査完了までのスピードが速い
問題が発生した際、調査完了までのスピードが速いほど、被害を最小限に抑えることができます。調査スピードが速い理由としては、専門知識や経験を持ったスタッフが多数在籍していることや、最新の技術やシステムを導入して効率的な業務を行っていることが挙げられます。
無料相談や見積りに対応している
問題が発生した際、無料相談や見積りに対応している企業であれば、相談のうえ、見積りを取得することで、サービスの費用を事前に把握し、予算に合ったプランを選ぶことができます。
無料相談や見積りに対応している企業は、顧客ニーズに応じたサービスを提供できる体制が整えられており、信頼性が高いと言えます。ぜひ、お問い合わせや見積りの依頼を通じて、最適なサービスを見つけてください。
>>【2024.11最新】フォレンジック調査会社一覧|選び方・依頼の流れを解説
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相談・見積りを“無料“で行っているので、まずは電話かメールで問合せをしてみることをおすすめします。
フォレンジック調査会社を利用するときの注意点
フォレンジック調査会社を利用するときの注意点は次のとおりです。
- 不用意に操作しない
- 興信所や探偵は基本的に専門外
- サポート詐欺に要注意
- 市販の調査ソフトを使用しない
不用意に操作しない
サイバーやリーガルインシデント被害を受けた場合、不用意にシステムや機器を操作すると、証拠が消失したり、状況が悪化したりする可能性があります。そのため、フォレンジック調査会社に依頼する前に、不用意な操作は避けましょう。
興信所や探偵は基本的に専門外
フォレンジック調査は、専門的な知識や技術が必要となる調査です。そのため、主に浮気調査や家出人捜索などの調査を行っている興信所や探偵に依頼しても、十分な調査が期待できない可能性があります。
市販の調査ソフトを使用しない
市販のフォレンジック調査ソフトは多数存在しますが、そのどれもが万能なものではなく、フォレンジック調査サービスと比較して調査の正確性が劣ります。セキュリティ対策やログの監視ツールとして利用する分には問題ないですが、インシデント発生時の調査で利用する時は目的に合わせて利用すべきか判断が必要になります。
調査結果を報告資料の作成や裁判などでの証拠として活用したい場合は、フォレンジック調査ツールで抽出した結果を使用できないため、証拠保全が可能な調査会社に相談して調査するようにしましょう。
まとめ:クラウドフォレンジックを制度化するために
本記事では、クラウドフォレンジックとは何か、なぜ必要か、どのように準備し、どう実行するかを詳細に解説しました。重要なポイントを以下に再確認しましょう。
- クラウド環境特有のログ・暗号化・管轄問題を理解する。
- 事前設定(ログ保存・鍵管理・アクセス制御)を徹底する。
- 事故発生時は調査用環境を用意し、スナップショットと別VPCで解析。
- 法的犯罪性がある場合は、社内だけで完結せず、証拠保全の専門家に相談しましょう。
クラウドフォレンジックは煩雑ですが、適切な体制と手順があれば実施可能です。貴社・ご自身のクラウド利用環境に合わせ、必要な準備と体制構築を本記事を手引きとして進めていただければ幸いです。
■警視庁からの捜査協力依頼実績が多数あり
■法人/個人問わず幅広く対応
■ 国際標準規格「ISO27001」取得
■ 14年連続国内売上No.1のデータ復旧サービス
- サービス
ハッキング不正アクセス調査、マルウェア・ランサムウェア感染調査、退職者調査、労働問題調査、社内不正調査、情報持出し調査、横領着服調査、データ改ざん調査など