個人情報持ち出しの法的リスクとは?社内で発覚した場合の対処法を解説

個人情報の不正な持ち出しは、企業にとって重大なリスクを伴うインシデントです。悪意ある従業員による社内不正だけでなく、ヒューマンエラーやサイバー攻撃など、発生経路は多岐にわたります。

被害が表面化すれば、信用失墜・行政指導・損害賠償といった深刻な結果を招きかねません。この記事では、情報漏洩に関する主要な法的リスクと、発覚時の対処法、さらに未然防止に向けた実効的な対策について解説します。

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個人情報持ち出しの法的リスクとは

個人情報持ち出しは、持ち出しの経緯や手口、持ち出された情報の内容次第で法的リスクに発展する可能性があります。

  • 個人情報保護法違反
  • 業務上横領罪・窃盗罪
  • 不正競争防止法違反
  • 損害賠償請求リスク

個人情報保護法違反

従業員が顧客名簿や社員情報を不正に社外へ持ち出した場合、個人情報保護法第23条(第三者提供の制限)や第26条(安全管理措置)への違反となります。委員会から命令を受けながら従わなかった場合、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が科され、法人には1億円以下の罰金が科される可能性があります(2022年改正法に基づく)。

情報漏洩が重大な場合、行政指導や企業名公表の対象にもなるため、コンプライアンス対応が極めて重要です。

業務上横領罪・窃盗罪

業務上の立場を利用し、社内の個人情報を私的に持ち出した場合は「業務上横領罪」(刑法第253条)に該当し、1年以上10年以下の拘禁刑が科されます。

また、情報媒体(USBや資料)そのものを無断で持ち出せば、窃盗罪(同235条)の対象となり、10年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金刑の可能性があります。特に、退職者による意図的な情報持ち出しは刑事事件として立件されやすく、企業側も警察への告発を視野に入れるべき事案です。

不正競争防止法違反

顧客リストや営業履歴などが「営業秘密」に該当する場合、第三者提供や自社持込みによって「不正取得・使用・開示」にあたると、不正競争防止法違反になります。

2023年改正後の現行法では、違反者には10年以下の拘禁刑または2000万円以下の罰金、法人に対しては最大5億円の罰金が科される可能性があります(第21条)。退職者が競合企業へ営業秘密を持ち込んだケースでは、損害賠償と同時に差止請求も可能です。

損害賠償請求リスク

情報持ち出しによって取引先や顧客に被害が及んだ場合、企業は民事上の損害賠償責任を問われる可能性があります。損害額の立証が困難でも、慰謝料や逸失利益を請求されるケースは多く、1件あたり数百万円〜数千万円規模に及ぶこともあります。

また、従業員個人に対して企業が損害賠償を請求することも可能であり、民法第709条の「不法行為責任」や「信義則違反」が法的根拠となります。実務上は、証拠保全が請求成立の鍵を握ります。

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個人情報持ち出しが発生する原因

個人情報持ち出しが発生する原因は以下の通りです。

  • ヒューマンエラーによるもの
  • 不正アクセス
  • 社内不正

ヒューマンエラーによるもの

最も頻繁に見られるのが、従業員のミスによる持ち出しです。たとえば、誤って顧客リストを個人メール宛に送信したり、外出時にUSBを紛失したりするケースです。これらは悪意がなくとも「漏洩」として扱われ、個人情報保護法上の報告義務が生じる可能性があります。ミスによる漏洩は再発リスクも高いため、教育・研修の徹底や、送信制御機能の導入が不可欠です。

不正アクセス

外部からのサイバー攻撃やマルウェア感染により、個人情報が不正に取得・送信されるケースも増加しています。従業員が偽装メールに添付されたファイルを開くことでリモートアクセス型マルウェアが作動し、情報を外部サーバに送信する事例が典型です。

この場合、被害者である企業も、十分なセキュリティ対策を講じていなかったとして過失責任を問われる可能性があります。定期的な脆弱性診断やEDR導入がリスク低減に有効です。

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社内不正

従業員が意図的に個人情報を持ち出す「内部不正」は、企業にとって最も深刻な脅威の一つです。特に、退職間際の従業員が顧客名簿や売上データを私的利用目的でコピーし、競合に持ち込む事例は後を絶ちません。

背景には、報復、転職準備、金銭目的などがあり、事前に察知することは困難です。よって、退職者のPC操作ログを確認するなど、重点的な監視と退職時の持ち出し防止措置が不可欠です。

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個人情報の持ち出しが発覚した場合の対処法

個人情報の持ち出しが発覚した場合の対処法は以下の通りです。

  • 社内で個人情報持ち出しの証拠を収集する
  • フォレンジック調査を行う
  • 従業員に懲戒処分や解雇を行う
  • 民事訴訟や刑事告訴を行う

社内で個人情報持ち出しの証拠を収集する

個人情報の不正な持ち出しが疑われた場合、まず優先すべきは、事実関係を特定するための証拠保全です。対象となるPCやメールサーバ、クラウドストレージの操作ログを時系列で取得し、アクセス権限の履歴やファイルの移動状況を確認します。

ログの取得は改ざんや削除のリスクを回避するため、専門ツールによるイメージ取得やWORM対応ストレージでの保存が推奨されます。調査対象者には事情を明かさず、客観的な証拠を優先的に収集することで、後の法的対応や懲戒処分の裏付けとして活用できます。

フォレンジック調査を行う

証拠が不十分、あるいは操作の痕跡が隠蔽されている可能性がある場合や、法的対応を念頭に入れている場合は、専門業者によるフォレンジック調査を実施することをおすすめします。

これはデジタルデータの改ざんが容易なため、誤操作等で証拠が失われるリスクが高く、早期の保全が必要なためです。

専門家がフォレンジック調査を実施すると、ハードディスクの完全イメージを取得し、削除ファイルの復元やUSB接続履歴、暗号化された痕跡の解析など、高度な調査が可能です。

また、ログイン履歴や通信記録の突合により、持ち出しのタイミングや手口を明らかにできます。そして調査結果は調査報告書にまとめられ、懲戒・訴訟いずれにも活用できる資料となります

従業員に懲戒処分や解雇を行う

個人情報の持ち出しが事実であり、かつ悪質性が認められる場合には、社内規定に基づき懲戒処分を行います。就業規則に明記された「機密情報の漏洩」や「社外持ち出しの禁止」に違反した場合、減給・出勤停止・懲戒解雇などの処分が可能です。

処分の妥当性を担保するためには、本人への事前の弁明機会の付与、懲戒理由書の作成、証拠資料の提示など、適切な手続きが求められます。処分後は再発防止のため、社内教育や規定の見直しも並行して行うことが推奨されます。

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民事訴訟や刑事告訴を行う

被害が重大で、悪質な不正持ち出しが判明した場合、民事・刑事両面での法的措置を検討します。民事では、営業秘密の不正使用に対して損害賠償請求や差止請求が可能であり、民法第709条の不法行為責任に基づき請求します。

刑事では、業務上横領罪や不正競争防止法違反などで、警察に告訴することが可能で、企業としての毅然とした姿勢を示すことにもつながります。告訴状の作成にあたっては、フォレンジック調査報告書など客観的証拠の提出が不可欠です。

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個人情報持ち出しの対策方法

企業から個人情報の持ち出しを対策する方法は以下の通りです。

  • アクセス制限をかける
  • ログの監視を行う
  • 就業規則を見直す
  • 退職時に誓約書にサインしてもらう

アクセス制限をかける

情報持ち出しの根本的な抑止には、アクセス制御の徹底が欠かせません。ファイルサーバや業務システムに対しては、従業員が自分の業務に関係ない情報へアクセスできないよう制限します。

また、USBポートの無効化や私物デバイスの接続禁止、クラウドサービスの利用制限など、物理的・技術的制御も並行して実施する必要があります。定期的なアクセス権棚卸しにより、異動者や退職者の権限が放置されるリスクも低減できます。

ログの監視を行う

アクセスログの常時監視は、不正の兆候を早期に発見し、未然に防ぐ有効な手段です。SIEMやEDRなどのツールを活用し、ファイル操作、USB接続、通信先などをリアルタイムでモニタリングします。

夜間や休日の異常なアクセス、大量のファイル移動、外部ストレージへの転送などが検知された際には自動アラートを発する仕組みを整えましょう。さらに、ログは改ざんができない形式で保管し、少なくとも1年間以上は保持することで、後の調査にも活用できます。

就業規則を見直す

実効性ある内部統制には、就業規則の整備が欠かせません。個人情報や営業秘密の持ち出し禁止、違反時の懲戒処分、秘密保持義務の明示といった項目を具体的に盛り込むことで、従業員への明確な警告となります。

規則の整備と同時に、全従業員への定期的な教育・研修を実施し、情報管理に対する意識の底上げを図ることが重要です。また、違反時の処分実例などを共有することで、抑止力を高める効果も期待できます。

退職時に誓約書にサインしてもらう

退職者による情報漏洩を防ぐためには、退職時の誓約書取得が非常に有効です。「秘密保持誓約書」「営業秘密不使用の確認書」などに署名を求めることで、退職後も一定の情報管理義務が継続することを明文化できます。

文書には、秘密情報の定義、保持義務の期間、違反時の損害賠償責任や差止請求の可能性を明記することで、後の紛争時に法的根拠として機能します。また、退職時の機器回収やアカウント無効化とあわせて、実効性のある情報統制を行いましょう。

まとめ

個人情報の持ち出しは、企業の信用・法的責任・経済的損失に直結する深刻なリスクです。発生時には証拠保全とフォレンジック調査を軸に、懲戒処分や法的措置を適切に講じることが求められます。

また、アクセス制限、ログ監視、就業規則、退職管理といった多面的な内部統制を構築し、再発防止の仕組みを整備することが不可欠です。予防と対応の両面で、組織全体が一丸となって情報資産を守る体制を築くことが、真のリスクマネジメントと言えるでしょう。

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