企業の基幹システムや機密データはオンプレミスからクラウドへと移行している一方で、不正アクセスや設定ミス、内部不正などのインシデントが発生した場合、従来とは異なる視点での対応が求められます。
クラウドでは、物理サーバーを直接押さえることができず、証拠の多くがログや設定情報、API履歴といったデータに依存します。そのため、発覚直後の対応を誤ると、必要なログが消失し、原因特定が困難になる可能性があります。
本稿では、クラウド環境においてフォレンジック対応が求められる背景と、典型的なインシデントの類型について整理します。
クラウドフォレンジックとは?仕組み・必要性・調査手順を徹底解説>
| 本ページには広告が含まれています。本コンテンツ経由で商品・サービスの申込みがあった場合、企業から送客手数料を受け取ることがあります。 |
クラウド環境でフォレンジック対応が求められる背景
クラウド環境では、システムの構成やデータの保存場所が物理的に見えにくくなっています。そのため、インシデント発生時には、どの範囲が影響を受けているのかを迅速かつ正確に把握する必要があります。
特に、証拠取得の方法や責任範囲の整理が、オンプレミス環境とは大きく異なります。
オンプレミスとの証拠取得の違い
オンプレミス環境では、サーバーや記憶媒体を物理的に確保し、ディスクイメージを取得することが可能です。一方、クラウドでは物理機器に直接アクセスすることはできません。
この時サイバー攻撃や社内不正の証拠となるのは、以下のデータです。
- 監査ログ
- API操作履歴
- アクセス履歴
- スナップショット
このように証拠の中心は「ログ情報」となります。ログの取得方法や保存期間を理解していなければ、必要な情報を確保できない可能性があることに注意しましょう。
ログ保存期間と設定依存のリスク
クラウドサービスでは、ログの保存期間が設定に依存している場合が多く、一定期間を過ぎると自動的に削除されることがあります。
- 監査ログが90日で削除される
- API履歴が短期間しか保持されない
- 詳細ログがデフォルトで無効化されている
サービスによってはこのようなケースがログ取得の妨げとなってしまう場合があります。
インシデント発覚が遅れた場合、既にクラウドサービスのログが消失している可能性も否定できません。発生直後に保存設定を確認し、必要なログを退避することが極めて重要です。
クラウド特有の責任分界点について
クラウド環境では、サービス提供者と利用企業の間で責任が分担されています。これを一般に「責任共有モデル」と呼びます。
クラウド事業者はインフラの安全性を担保しますが、
- アカウント管理
- アクセス権限設定
- データの取り扱い
- ログ設定
などは利用企業側の責任となる場合が多いのが実情です。
インシデント発生時に「どこまでが自社の管理責任か」を正確に理解していなければ、対外説明や再発防止策の策定に支障を来します。
クラウド環境で発生する主なインシデント
クラウドサービスの普及に伴い、企業が被害を受けるインシデントも多様化しています。以下に、クラウド環境でフォレンジック調査が必要になる代表的な原因を紹介します。
- 外部からの不正アクセス
- 内部アカウントの不正利用
- クラウド構成ミスによるデータ漏洩
外部からの不正アクセス
クラウド環境では、VPNの脆弱性や多要素認証(MFA)の設定不備を突かれ、外部からアカウントが侵害されるケースがあります。
典型的には、次のような事象が発端となります。
- APIキーや認証情報の流出
- 管理者権限の不正取得
- 不審なIPアドレスからのログイン
- 短時間での大量データ転送
これらが確認された場合、侵入経路や権限昇格の有無、アクセスされたデータの範囲を特定する必要があります。監査ログや通信ログの解析を通じて、侵害の時系列を再構成し、被害範囲を明確にすることが求められます。
クラウドサーバーが不正アクセスされたら?初動対応と再発防止の完全ガイド>
内部アカウントの不正利用
クラウド環境では、正規のアカウントを利用した不正行為が発生する場合があります。権限を持つ内部関係者による操作は、外部攻撃よりも検知が難しいことが特徴です。
典型的には、次のような兆候が確認されます。
- 通常業務と異なる時間帯のログイン
- 権限範囲外のデータへのアクセス
- 短期間での大量ダウンロード
- クラウド外部へのデータ転送
これらの行動が特定のアカウントに集中している場合、通常業務との整合性を検証する必要があります。監査ログやAPI操作履歴を解析し、操作の目的や範囲を時系列で整理することが重要です。
内部不正の場合、アクセス自体は正規認証を経ているため、単純な侵入検知では把握できません。行動パターンの分析が、原因特定の鍵となります。
会社のデータ持ち出しが発覚した場合の処分の手続き方法を解説>
設定ミスによる公開事故
クラウド環境では、ストレージやデータベースの公開設定ミスにより、本来非公開であるべきデータが外部から閲覧可能になる事故が発生しています。悪意のある攻撃でなくても、構成の誤りが重大な情報漏洩につながる点が特徴です。
典型的には、次のような事象が見られます。
- ストレージバケットの公開設定
- 不適切なアクセス権限の付与
- テスト環境の本番公開
- セキュリティグループの設定不備
これらが確認された場合、設定変更の履歴やアクセスログを精査し、いつから公開状態になっていたのか、どのIPアドレスからアクセスされたのかを特定する必要があります。
設定ミスによる事故は「不正」ではないケースもありますが、管理責任の所在や影響範囲の確定が重要となるため、ログの時系列分析が不可欠です。
退職者アカウントの放置
退職者のクラウドアカウントが無効化されないまま残っている場合、不正利用や情報持ち出しのリスクが高まります。特に、管理者権限や広範なアクセス権を保持した状態で放置されているケースは重大な脆弱性となります。
典型的には、次のような事象が問題となります。
- 退職後も有効なアカウントによるログイン
- 権限削除の遅れによる機密データへのアクセス
- 外部からの不正ログインに悪用されるケース
- APIキーやアクセストークンの失効漏れ
これらが確認された場合、当該アカウントの最終ログイン日時やアクセス履歴、データ操作履歴を精査する必要があります。特に退職前後の期間における大量ダウンロードや外部転送の有無は、被害範囲を判断する重要な手がかりとなります。
クラウド環境ではアカウント管理の不備が直接的な侵害経路となるため、フォレンジック調査では権限設定の履歴や認証情報の使用状況を含めて時系列で再構成することが求められます。
クラウドインシデント発覚後の初動対応
クラウド環境におけるインシデントは、発覚直後の対応によってその後の選択肢が大きく変わります。特に最初の72時間は、証拠の消失や被害拡大を防ぐうえで極めて重要な期間です。
拙速な設定変更やログ確認が、かえって証拠を上書きしてしまう可能性もあります。初動では「復旧」よりも「保全」を優先する姿勢が求められます。
- ログ保存期間の即時確認
- 管理者権限の凍結と証拠保全
- バックアップとスナップショットの確保
- 不用意な再設定を行わない
ログ保存期間の即時確認
クラウドサービスでは、監査ログやAPIログの保存期間が設定依存である場合が多く、一定期間を過ぎると自動的に削除されます。
インシデント発覚直後に確認すべき事項は、以下の通りです。
- 監査ログの保持期間
- API履歴の保存状況
- 外部転送ログの有無
必要な期間のログを退避しなければ、侵入経路や操作履歴を後から追跡できなくなる可能性があります。
管理者権限の凍結と証拠保全
不正利用が疑われるアカウントについては、被害拡大防止のため権限を一時的に制限する必要があります。ただし、ログ削除や設定変更を伴う操作は慎重に判断する必要があります。
- 管理者権限の一時停止
- APIキーの失効
- 認証情報の変更
これらは重要な対応ですが、実施前に証拠保全との整合性を検討することが望まれます。
バックアップとスナップショットの確保
クラウド環境では、スナップショットやバックアップの取得が証拠保全の一手段となります。
- 対象サーバのスナップショット取得
- ストレージのバックアップ保存
- 現在の構成情報の記録
これにより、後から解析可能な状態を確保できます。
不用意な再設定を行わない
公開設定の変更やセキュリティグループの修正などを即座に行いたくなる場面もありますが、証拠が失われる可能性があります。
まずは現状を記録し、ログや設定変更履歴を保存した上で対応することが重要です。
クラウド環境でのフォレンジック調査の進め方
クラウド環境でのフォレンジック調査は、物理機器の解析とは異なり、ログ・API履歴・構成情報の横断分析が中心となります。
重要なのは、「どのアカウントが、いつ、どのリソースにアクセスしたか」を時系列で再構成することです。
APIログ・監査ログの解析
クラウド環境では、管理操作のほとんどがAPI経由で実行されます。そのため、APIログや監査ログは原因特定の中核資料となります。
具体的には、以下の内容を確認します。
- 誰がどのAPIを呼び出したか
- 権限変更やポリシー更新の履歴
- リソース作成・削除の履歴
- 不審なリージョンからのアクセス
特に管理者権限の付与やポリシー変更は、侵害拡大の起点となるケースが多いため、重点的に分析されます。
アクセスキー・IAM履歴の確認
多くのクラウドインシデントは、認証情報の漏洩や権限管理の不備から発生します。
調査では、主に以下の内容を確認します。
- アクセスキーの作成・削除履歴
- MFAの有効化状況
- ロール引き受け履歴
- 不審な認証試行
退職者アカウントの残存や、不要な権限付与が確認された場合、内部管理の問題として整理されます。
データ流出範囲の特定
原因特定と同時に重要なのが、実際にどのデータが外部にアクセスされたのかを明確にすることです。
- ストレージオブジェクトのアクセス履歴
- ダウンロード記録
- 外部共有リンクの生成履歴
- ネットワーク転送量の急増
これらを突き合わせることで、流出範囲を定量的に評価します。被害範囲が曖昧なままでは、対外説明や法的判断に影響を及ぼします。
時系列再構成とレポーティング
最終的には、複数のログを統合し、侵入からデータ取得・転送に至るまでの流れを時系列で再構成します。
- 初回不審ログイン
- 権限昇格
- データアクセス
- 外部転送
- 設定変更や痕跡削除
この再構成が、経営層への報告、監督官庁対応、法的手続きの基礎資料となります。
クラウド環境ではログの構造が複雑であり、複数サービスを横断する分析が必要となるため、高度な専門性が求められます。
クラウドフォレンジックを外部に依頼すべきケース
クラウド環境の調査は、ログ構造や設定理解を前提とする専門領域です。次のような場合は、外部のフォレンジック調査専会社の関与を検討すべき局面といえます。
- ログ改ざんの疑いがある場合
- 法的対応・対外説明を前提とする場合
- 被害範囲が不明確な場合
- 自社に専門人材がいない場合
専門家が証拠保全や調査を実施するため、効果的な調査と適切な対策が期待できます。
>>おすすめのフォレンジック調査会社一覧|選び方・依頼の流れを解説
ログ改ざんの疑いがある場合
ログが不自然に欠落している、履歴が途中で途切れている、設定変更履歴が確認できないなどの状況は、改ざんの可能性を示唆します。
こうしたケースでは、以下の専門的な検証が必要です。
- 削除痕跡の検証
- ログ整合性の確認
- ハッシュ値による真正性担保
誤った操作により、証拠がさらに失われるリスクもあるため、専門家による慎重な対応が求められます。
法的対応・対外説明を前提とする場合
監督官庁への報告、取引先への通知、損害賠償請求などを想定する場合、証拠の取得方法や管理手続きが問われることがあります。
- 取得手順の記録
- 証拠の管理履歴(チェーンオブカストディ)
- 改ざん防止措置
これらが整理されていなければ、説明の信頼性が低下する可能性があります。法的対応を視野に入れる段階では、初動から証拠能力を意識した対応が不可欠です。
被害範囲が不明確な場合
侵害が単発か継続か、内部か外部か、どのデータが対象かが特定できない場合、複数ログの統合分析が必要になります。
自社内のリソースで横断的な分析が困難な場合は、専門家の関与によって調査の精度を高めることができます。
自社に専門人材がいない場合
クラウドフォレンジックは、単なるログ確認ではなく、サービス仕様・API構造・認証設計を理解した上での分析が必要です。
誤った設定変更やログ確認によって、証拠を上書きする可能性もあります。
専門人材が不在の場合、早期に外部の知見を活用することが、結果として企業リスクを抑える選択となります。
編集部おすすめ調査会社:デジタルデータフォレンジック(おすすめ度)
サイバー攻撃や社内不正といった、幅広いインシデントに対してフォレンジック調査を行っている専門会社をご紹介します。
こちらの業者は、相談件数が39,000件を超え、民間の調査会社でありながら官公庁や大手企業との取引実績も多く信頼できるため、幅広い調査に対応していておすすめです。もちろん法人だけでなく、個人のハッキングやサポート詐欺調査などの相談も受け付けています。
まずは無料で相談・見積りまで行ってくれるようなので、不安な方は一度相談してみるとよいでしょう。

| 費用 | ★見積り無料 まずはご相談ください |
|---|---|
| 調査対象 | PC、スマートフォン、サーバ、外付けHDD、USBメモリ、SDカード、タブレット など |
| サービス | ハッキング・不正アクセス調査、マルウェア・ランサムウェア感染調査、サイバー攻撃被害調査、退職者調査、労働問題調査、社内不正調査、情報持出し調査、横領着服調査、パスワード解除、データ改ざん調査、データ復元、デジタル遺品、離婚問題・浮気調査 など |
| 特長 | ✓累積ご相談件数39,451件以上 ✓国際基準をクリアした厳重なセキュリティ体制(ISO認証、プライバシーマーク取得済) ✓警視庁からの捜査協力依頼・感謝状受領の実績多数 |
デジタルデータフォレンジックは、国内トップクラスの調査力を有しており、累計3万9千件以上の豊富な実績があります。
規模が大きな調査会社でありながら、個人端末のハッキング調査、不正アクセス調査などの実績もあるようですし、24時間365日の相談体制、ニーズに合わせたプランのカスタマイズなど、サービスの利用しやすさも嬉しいポイントです。
ハッキング調査以外にも幅広い調査に対応しているだけでなく、ケースごとに専門チームが調査対応を行っているとのことで、高品質な調査が期待できます。さらに、警察への捜査協力も行っているなど、信頼がおける専門業者です
相談・見積りを無料で行っているので、まずは電話かメールで問合せをしてみることをおすすめします。
まとめ
クラウド環境でのインシデントは、放置すると取り返しのつかない事態に発展することもあります。原因がはっきりしない、どう対応していいか分からない…そんなときは、ひとりで悩まず、まずは専門のフォレンジック調査会社に相談してみてください。
早めの対応が、被害の拡大を防ぎ、大切な情報と信頼を守る第一歩になります。
今この瞬間から、「調査できる体制」を整えることが、あなたの組織と情報を守る最初の一歩です。
■警視庁からの捜査協力依頼実績が多数あり
■法人/個人問わず幅広く対応
■ 国際標準規格「ISO27001」取得
■ 14年連続国内売上No.1のデータ復旧サービス
- サービス
ハッキング不正アクセス調査、マルウェア・ランサムウェア感染調査、退職者調査、労働問題調査、社内不正調査、情報持出し調査、横領着服調査、データ改ざん調査など